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第十三幕 転生歌姫と生命神の祈り
第十三幕 プロローグ 『留学生』
しおりを挟む王都争乱の日から数日が経過した。
その間一度も目を覚まさなかったシェラさんが、遂に意識を取り戻した。
朝起きて、学園に登校するため身支度を整えてる時にミーティアが気が付いたのだ。
「ママ!!シェラお姉ちゃん起きたよ!!」
「えっ!?本当!?」
それを聞いた私は急いでシェラさんが寝ているベッドの側に行く。
すると、ベッドの上でシェラさんが上半身を起こしていた。
私が寝室に入ってきたのに気付いて視線をこちらに向けてくるが、まだ少しぼんやりとした様子。
「シェラさん!!良かった……目が覚めたんですね!」
「カティアさん……?ここ、は……?」
シェラさんは、自分の置かれている状況を確認しようと周囲を見渡す。
「ここは、アクサレナ城の私の部屋ですよ」
「……そう、でしたね。私は……ヴィーを追って……」
少しずつ思い出すように呟く。
そうしていると、だんだんと意識もはっきりしてきたみたい。
「カティア様、そろそろお時間かと……」
シェラさんの様子を見ていた私に、マリーシャが遠慮がちに声をかけてくる。
確かにもう登校の時間だけど……
「ママ、お姉ちゃんは私が見てるから、学校に行ってきていいよ!」
「でも……」
「カティア様、まだシェラ様はお目覚めになったばかりなので、今しばらくご静養が必要かと思います。しっかりとお世話させていただきますので、どうかご安心ください」
「私もお姉ちゃんのお世話するの!」
……まぁ、確かに。
起きたばかりでアレコレ話を聞くわけにもいかないし、先ずはしっかり体調を整えてもらわないとね。
「分かったよ、二人ともお願いね。シェラさん、無理はしないでゆっくり休んでくださいね」
「……ありがとうございます。ご迷惑をおかけします」
「迷惑だなんて!これまで色々助けてもらったのはこっちなんですから。それくらいはさせてください」
ちょっと複雑そうな表情でシェラさんは言うけど……
これまでのお礼もあるし、しっかりおもてなししなければ!
「じゃあ、行ってきます!……あ、エフィメラさんのところに連絡するように伝えておいてもらえる?」
「はい、かしこまりました。行ってらっしゃいませ」
「ママ、いってらっしゃ~い!」
「そうですか、シェラさんが目を覚まされましたか」
「うん。まだ本調子じゃないかもしれないけど……取り敢えずは良かったよ」
学園にやって来て、授業が始まる前にルシェーラ達にシェラさんが目覚めた事を報告した。
「では……いよいよグラナの皇女さまとの会談が……?」
「そうだね。シェラさんの体調次第だけど……これから調整することになると思う」
既に水面下ではやりとりしてるけど、正式な会談ともなれば色々と準備が必要になる。
そんなふうに、およそ学生らしくない……割と政治の中枢の話をしていると、他のグループから気になる会話が聞こえてきた。
「ねぇねぇ、知ってる?うちのクラスに留学生が来るんだって!」
「あ、さっき先生達が話してるのを聞いたよ!」
「へぇ~、楽しみだな」
「もち、女のコだよなっ!?」
あ、最後のはフリードだ。
相変わらずチャラいな、コイツめ。
ステラが悲しそうな表情してるのでピンポイントで殺気を飛ばしておく。
「……!?な、なんか急に寒気が……」
キョロキョロと周りを見回すフリード。
……ふん。
それくらい敏感にステラの気持ちも察しなさいよ。
「留学生……だって?」
「制度があるのは知ってましたが、珍しいですわね」
私は制度があるのも知らなかった。
聞いた話によれば制度自体形骸化していて、実際に留学してくる者は殆どいないらしい。
学園からアスティカントの学院に、専門分野を学ぶために短期留学する人は結構いるらしいけど。
「どこから、どんな人が来るんだろうね~?」
レティがワクワクしたように言うが、私も何だか楽しみになって来た。
前世でも転校生と聞くと無性にワクワクしたものだ。
やがて始業時間となり、スレイン先生が教室に入ってくる。
件の転校生…じゃなかった、留学生は教室の外で待機している様子。
うん、格式美だね~。
「よし、それではホームルームを始める……前にだ。突然だが、このクラスに留学生が来ることになった。……どうやらお前たちも噂してたようだな」
皆そわそわして教室の入り口の方を気にしているのを察して、苦笑を浮かべる先生。
「よし、入ってきていいぞ」
「はい。失礼します」
え?
この声は……
「あっ!?」
そして、入ってきた女生徒を見て、私は思わず驚きの声を上げる。
彼女はスレイン先生の隣に並んで、こちらを向いて微笑みを浮かべる。
美貌の少女の登場に、男子どもが色めき立つ。
「では、自己紹介たのむわ」
「はい。……みなさん、はじめまして。私はウィラー王国より留学して参りました、エフィ=アルマリアと申します。これからよろしくお願いいたします」
にこやかに挨拶するその人は……エフィメラさんであった。
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