上 下
438 / 683
第十二幕 転生歌姫と謎のプリンセス

第十二幕 21 『ラストショット』

しおりを挟む

 両者マッチポイントを迎えた最終局面。
 熱い試合内容に観客たちも大盛り上がりである。

 その一方で選手たちは、激しい攻防の繰り返しによる疲労のため、皆肩で息をしている。
 陣地の中を駆け回りながら幾度となく魔法を放つのだから、そうなるのは当然だろう。


「いや~、初めて観たけど……これはかなりアツいね!」

 レティがかなり興奮した様子で言う。
 この娘、武神杯の時も大興奮で応援していたらしいので、スポーツ観戦が好きなんだろうね。

(前世でもスポーツ観戦好きだったの?)

(うん。サッカーとか野球は良く見てたよ。スタジアムにもたまに行ってた)

 へぇ……何だか意外。
 いや、レティは頭の中が鉄道で一杯だと思ったからスポーツ観戦が結びつかなくて……
 まぁそれは偏見だと思うけど、意外に思ったのは事実だ。

(カティアは?)

(私はサッカーやってたけど、観るのはそんなに…)

(お?サッカーやってたんだ)

(うん。県大会決勝までは行ったことあるんだよ)

(へえ~、凄いじゃない!!)

 ぶいっ!

(でも、その試合中に怪我しちゃってね~。そのまま引退)

(ありゃ、残念だね)







 そして、最後の戦いが始まる。

 これまで幾度となく繰り返された攻防だが、やはり疲れによるものだろうか、時折ボールを外したりするなど、みんな魔法の精度が落ちてきている。
 それでも……一所懸命戦う姿は美しいと思う。


「みんながんばれ~っ!!」

「最後までしっかりねっ!!」

 クラスメイトたちからも大きな声援が飛ぶ。
 その声に後押しされるように、最後の力を振り絞る選手たち。

 どっちのチームも報われてほしいとは思うが、勝者となるのは1チームだけ。
 その決着のときは近づいてる。


 ふと気が付けば……最初のメリエルちゃんのゴールのときと同じように、今度はシフィルが足を止めて集中力を高めている。
 ここに来て何か大技を使うつもりだね…!





 パァンッ!!


 トール君の雷撃魔法によって、ボールはコート中央付近、その上空へと大きく舞い上がった!!

「シフィルさん!頼みます!!」


「ええ!![風神招来]!!!」


 シフィルの身体がボールを追って大空へと舞い上がる!!

 武神杯の私との戦いで見せた彼女の奥の手だ。
 杖の影響のためか、その飛翔スピードは遅くなってるが、ボールの横にピタリと着けて……


「行けっ!![陣風龍・改]!!!」

 シフィルが突き出した右腕から渦巻く緑光が……小型の竜巻が放たれる!!

 あの技は本来シフィル本人が竜巻の中心になって突撃する技だった。
 『改』はその点が改善されたと言うことか。
 しかし、いつの間に編み出したんだろう……


 ……あの時これを使われてたら、私は勝てなかったかもしれないね。



 そして、小型の竜巻はボールを巻き込んで、そのままゴールに向かう!!

 しかし、メリエルちゃんたちもそれを黙って見ている訳ではない。


「[雷矢]!!」

「[石弾]!!」

 二人の魔法が竜巻に襲いかかるが……!


 バシュッ!!


「「弾かれたっ!?」」


 二人の魔法は無情にも弾かれ、そして……!



 バスッ!!



 ゴールネットに突き刺さる!!



 ピピィーーッ!!!



「ゴールッ!!!ゲームセット!!!」



 ついに、激闘の決着が付くのだった!!


















「うう~……負けた……やっぱりシフィル強いよ」

「メリエルも強かったよ。殆ど互角だったもの。私もとっておきをここで出すことになるとは思わなかったわ」

 試合を終えて、メリエルちゃんは悔しがりつつもシフィルを讃える。
 そして、シフィルも。

「いつの間にあんな技編み出したの?」

「カティアに負けてから、どうにかして改良出来ないか試行錯誤してたのよ。まだ完全じゃないんだけど……ふふ、ホントは隠しておきたかったんだけど」

「次の武神杯に向けて?」

「そう。でも、こっちも負けたくはないからね」

 負けず嫌いだねぇ……まぁ、私もだけど。


 ともかく、苦戦しながらも我がクラスは初戦を突破する事が出来たね。

 まだまだ快進撃は続く!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

私って何者なの

根鳥 泰造
ファンタジー
記憶を無くし、魔物の森で倒れていたミラ。テレパシーで支援するセージと共に、冒険者となり、仲間を増やし、剣や魔法の修行をして、最強チームを作り上げる。 そして、国王に気に入られ、魔王討伐の任を受けるのだが、記憶が蘇って……。 とある異世界で語り継がれる美少女勇者ミラの物語。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

処理中です...