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第十二幕 転生歌姫と謎のプリンセス

第十二幕 15 『教え子対決』

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「フリード!!よくやった!!」

「これで1年1組は男女とも勝ち進んだぞ!」

「逆転勝利カッコよかったよ!!」

「フハハハッ!!どうよ!これが俺っちの実力だぜ!!……ま、初戦で切り札を見せるつもりはなかったんだけどよ」



 武舞台を降りるフリードに、クラスメイト達が労いの声を掛けていく。
 先程まで祈るような表情で見守っていたステラは、その輪に加わることなく静かに微笑んでいる。

「ほら、ステラも行ってきたら?」

「え?わ、私は別に……」

 ん~……控えめなステラにはハードルが高いか。
 私もちょっと微妙な思いなので、強く勧めることはしない。



 しかし実際のところどうなんだろ?
 これまでの態度を見れば好意を持ってるのは間違いないと思うんだけど……

 どうにもフリードアレのどこに惚れる要素があるのかと、不思議なんだよね……
 もちろん好みは人それぞれなんだけどさ。


 顔は……まぁ悪くない。
 というかイケメンと言っても良いだろう。
 家格も由緒ある伯爵家。
 ステラは王女だから、相手としてはギリギリのラインだけど、本気で付き合うならどうとでもなる。
 そして文武両道の成績優秀者だ。

 ……ここまでは凄くモテ要素満載に聞こえるな。
 軽いノリの女の子になら、寧ろモテるかも?
 でも、うちのクラスには居ないタイプだね。


 しかし、それらのモテ要素を帳消しにするほどのチャラさがねぇ……
 いいヤツなのは確かなんだけど、女子としてはちょっと。
 というか、ステラみたいに真面目な娘には一番嫌われそうな気がするんだけど。
 まぁでも、チャラい言動の割には女癖が悪いとかの噂もないし、付き合ったら意外と一途だったり?

 う~ん……【俺】の記憶も持つ現在女の私だけど、男心も女心もよく分からないなぁ……


 隣で難しそうな顔をしているルシェーラも、きっと同じような気持ちだろう。






 そんな風に思い悩んでいると、当のフリードがこちらにやってきた。

「ステラさん!どうでしたか!?あなたの応援のおかげで勝利することが出来ました!!」

 と、ステラの前で跪き手を取ってそんな事を言う。

「え?あ、その……お、おめでとう。凄く格好良かったわ……」

 なんて、顔を赤らめてステラは答えるのだ。




 その様子を見た私は、とうとう決意する!

(ルシェーラ。私は決めたよ)

(?何をですの?)

(これは本格的に人格矯正きょういくを計画せねば!!)

(……何だか少々危険な響きがしますわね。でも、ステラさんのためなら協力しますわ)


 友人と国家間の友好関係のために!
 フリードの意思?
 大事の前の小事だね!










 なんて冗談(?)はさて置き、武舞台上には次の試合の対戦相手が既にスタンバイしていた。
 もうウチのクラスの試合は終わったから、他の競技を見に行っても良いのだけど……次の試合は見ておきたかった。



『続きまして、1年2組フローラ=ラズレー選手対1年8組アメリア選手の対戦となります!!』

 野外実習で同じ班になったフローラさんの試合だ。
 普段も武術の授業で一緒になるんだけど……彼女はグレイブを選択しているので私が教えてたりする。
 と言っても実は彼女、もともとグレイブは習っていたらしく基礎は出来ていた。
 だから私がしたのはアドバイス程度だ。

 武神の国イスパルは女子であっても……貴族なら尚更、何らかの武器を習ってる人が多い。
 その中でもルシェーラなんかは傑出した力を持つわけだが。


 対戦相手の娘は面識はないけど、彼女もグレイブだ。
 こちらはスレイン先生が教えてるのだと思うけど……
 対抗戦のクラス代表になるくらいだから、彼女も当然心得があるのだろう。


「うむ。カティアと俺のどちらが教え方が上手いか……という戦いだな」

 こらこらこら……そんな事を言わないでくださいよ先生。
 二人ともめっちゃ深刻そうな顔になっちゃったじゃないの……


「二人とも~!先生の言うことは気にしないで!全力を尽くすことだけ考えるんだよ!!」

「その通りだ。これくらいの煽りで緊張するようではまだまだだぞ」

 ……何という理不尽か。


「よし。試合開始だ!」


 試合が始まり、先ずは二人とも基本通り中段の構えを取って間合いを測りながら動く。
 二人とも身長や手足の長さも同じくらいなので、攻撃範囲はほぼ同じだろう。

 そして間合いギリギリまでくると、互いに牽制の攻撃を一撃二撃……と繰り出していく。

 キィンッ!
 キキィンッ!!

 一歩踏み出しては直ぐに下がって……と出入りを繰り返しながら、更に相手の防ぎにくい角度になるように円を描くように動く。
 
 とうやら技量も同じくらいのようだ。
 基本に忠実な戦い方は、まるで鏡写しのように同じ動きであり、武術の試合というよりは演武のようだ。


「なんか綺麗だね……」

「そうだね。基本の動きっていうのは、洗練されると美しいものだからね」

 とは言っても、このままでは済まないだろう。
 今はまだ手探りの段階だ。

 少しずつ相手の隙を伺い、フィイントを織り交ぜ、策を弄して相手を突き崩す。


 しばらく様子見が続いたが……ついに事態が動く。


 何度目かの牽制の刃が交差する……と思ったとき、フローラさんが相手の刃を強めに弾いて一瞬逸れた隙を狙って一気に間合いを詰める!!


「せぃやぁーーーーっっ!!」

 十分な威力とスピードの薙ぎ払いが、アメリアさんの胴を襲う!!

 しかしアメリアさんも弾かれていたグレイブを直ぐに引き寄せながら反転させ、身体を捻りつつ斬り上げのカウンターを繰り出した!!


 バリィーーンッッ!!!


 結界が破壊された音が鳴り響く!!


『おーーっと!!?結界が破れました!!決着が付いたようですが、果たして……!?』

 どっちだ!?
 ほとんど同時……相打ちのように見えたが?



「……そこまで!!僅かな差だったが……勝者フローラ!!」


 よしっ!!

 クラスは違うけど、やっぱり教えていた娘が勝ったのは嬉しいね。
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