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第十二幕 転生歌姫と謎のプリンセス

第十二幕 5 『学生の日常』

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 鉄道建設起工式が終わってから数日、私はいつも通りの学園での日常を過ごしていた。


 私はもうすっかり学生生活にも慣れ、クラスの皆ともかなり親しくなったと思う。
 少なくとも、身分差のせいで遠巻きにされるなんて事は無いし、普通に友人として接してくれてるのではないだろうか。
 そして、私の周囲も……入学してから暫くは王女ということで目立っていたが、今は好奇の視線はかなり減った気がする。
 もちろん今でも注目されることも多いのだけど、大袈裟に騒がれることは無くなった。


 エーデルワイスの公演も一段落して、放課後にクラブ活動にも顔を出せるようになった。
 暫く活動から抜けてしまい、クラリス先輩には大分迷惑をかけてしまった。
 もちろん、私がエーデルワイスの公演や公務で抜けることがあるのは事前に了承を得てはいる。
 だけど、半ば強引にアリシアさんもエーデルワイスの方に引っ張って来ちゃったし……
 今は数カ月後のコンクールに向けて練習を行ってるって事だから、しっかり埋め合わせをしないとね。



 そんなふうに、束の間の日常を過ごしていた。

















「対抗戦?」

「そう。学園の目玉イベントの一つね。……カティア、知らなかったの?」

 休み時間にいつものメンバー(隣のクラスからメリエルちゃんも来てる)とお喋りをしていた時、シフィルからそんな話題が出た。
 何でもこの学園の伝統的なイベントの一つらしいのだが……

「あぁ、そう言えば年間スケジュールで見たような気がするよ。でも、どんなイベントなのか詳細は確認してなかったな……」

「変なところで抜けてるわよね、あなたって。ダードレイさんも言ってたけど」

 …いつ?

「武神杯の時に解説してた。『ちょっと抜けてる』って」

 心を読まないで。

「顔に出てるのよ。……じゃあ、詳しいことは知らないのね」

 コクコク。

「私も、よく分かんない!教えて、シフィル!」

 メリエルちゃんが手を上げて元気よく言う。
 私と彼女以外は分かってる風な顔だね。


「あ、でも……『対抗戦』と言うからには、クラス対抗で競うって事だよね?」

「まぁ、その通りよ。近々ホームルームで話し合うことになると思うけど……」


 そしてシフィルから聞いた話によれば……

 どうやら前世で言うところの運動会みたいなものらしい。
 『みたい』と言うのは、運動競技だけじゃないからだ。
 短距離走、長距離走などの分かりやすい競技がある一方で、チェスとかクイズ大会みたいな頭脳戦もあったり。
 学年毎ではなく全校で競うので、例年は高学年が上位に入ることが殆どだとか。


 そして、最も盛り上がる競技が武術対抗戦と言うのは我が国ならではなんだろうけど……

「私とカティアは武術の対抗戦は出場禁止ってスレイン先生に言われたわ。生徒会からの要望ですって」

 だそうで。

「むぅ……まぁ、しょうがないか」

 私達は武神杯で大々的に力を見せつけちゃったからね……
 他の出場者が尻込みしてしまうって事だろう。


「……お兄様ったら、余計なことを」

「まぁまぁ、ルシェーラちゃん。しょうがないよ。この二人が出たら対戦相手は……死、あるのみだから」

 こらこらレティ、物騒なことを言うんじゃないよ。
 それじゃ私達が危険人物みたいじゃないか…


「でも、そうすると……うちのクラスはルシェーラが代表で決まりかな?」

 ルシェーラだって殆ど私達とレベルは変わらないと思うけどね。
 ただ、まだあまり実力を知られてないから。


「それで良いんじゃない?反対も無いだろうし。でも来年は私達と同じで出場禁止になったりして」

「……そうでしょうか?」

 ダンジョンで一段とレベルアップしたしねぇ……その可能性はあるかも。

「でも、カティアさんもシフィルさんも出場しないのは、何とも残念ですわね……」

「どのみちクラス代表は一人だからしょうがないね。私達はルシェーラの戦いぶりを楽しみにするよ。あとは……男女一人ずつって話だから、男子も決める必要があるんだけど……」

「男子?フリードで良いんじゃない?実力で言うなら順当でしょ」

 チャラくて変態なのはアレだけど、実力はあるからね。
 不本意ながら。


「ま、他の競技も合わせてホームルームで検討だね。取り敢えず自分が何に出場したいか考えておくと良いわ」

「そうだね。う~ん……どれも面白そうで悩むなぁ……」

 こういう学校のイベントってワクワクするよ。

 取り敢えずは2~3は候補を考えておかないとね。

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