上 下
400 / 683
第十一幕 転生歌姫と迷宮の輪舞曲〈ロンド〉

第十一幕 56 『母娘の戦い』

しおりを挟む
 ミーティアと一緒にダンジョン攻略すること暫し。

 途中で遭遇した魔物は数しれずだが、幸いにもそれほど苦戦することもなく進むことができた。
 道の分岐もそれなりにあったが、間違った進路だと直ぐに行き止まりになるので、迷うことも無かった。

 そうして順調とも言えるペースで攻略を進め、ついにボス部屋らしき扉の前に立つ。




「ミーティア、疲れてない?魔力はまだ残ってる?」

「うん、大丈夫だよ!ママ!」

「ミロン、何かアドバイスは無い?」

 ダメ元で一応聞いてみる。

「いえ、特には。ただボスを倒すだけです」

 まあ、それはそうだろうけど。
 多分これまでと同じように、一筋縄ではいかないだろう。
 
「そう……じゃ、行こうか」

「うん!」


 そして扉に手をかけると、キィ……と少し軋む音はするものの、さしたる力も必要なくスムーズに開いていく。

 中に入ると、いたって普通のボス部屋だ。
 作りも広さも上層階にあるのと大差がない。
 ただ、部屋の中央部に大きな魔法陣が描かれているのが異なる点だ。

 そして私達が部屋の中に入ると、背後でバタン!と扉が閉まり、魔法陣が輝きを放ち始める!


「うん、いかにもだね。召喚の魔法陣なのかな?」

「何が出てくるのかな?」

 心なしかワクワクしているような雰囲気だね、ミーティアさんや。
 まあ頼もしい事だねぇ……


 そして、魔法陣は一際大きな光を放ち、その中に何者かの影が現れる。

 影は……2つある?

 2対2ということか。


 そして光が晴れると、その正体が明らかになった。



















『ふふふ……よくここまで来たね。ここは私達母娘が相手するよ!』

『負けないの!』

「……なるほど。そう言う試練なんだね」

「あわわ……ママと私がいる!?」

 目の前に立つのは、私とミーティアに瓜二つの姿をした二人。

 つまりこの試練は、己に打ち克つというのがコンセプトなのだろう。
 本来は一対一なのだろうが、私達はイレギュラーによって母娘のタッグマッチとなるわけだ。


「ミーティア、行ける?」

「うん!大丈夫だよ!!私のニセモノもママのニセモノもボコボコにするの!」

『返り討ちにするの!!』


 ミーティアさん……容赦ないっすね……両方とも。
 もう少し躊躇いとかは無いのだろうか…?


『ちょっと……最近教育方針に問題がないのか心配……』

「同意……」



 と、とにかく!

 戦闘開始だよ!!






 先ず、コピーのミーティアが、最初から全力を発揮するべく少女モードとなる。

『変身!!マジカルエンジェル!プリティーミーティア参上!』

「む!?……わたしも負けないの!へ~んし~ん!!」

 そのノリよ……

 ミーティアも偽物に対抗して少女モードとなる。

「じゃん!!接敵即殲滅!!破壊と混沌の愛天使!ラブリーミーティア見参!!」



『………』

「………」

 もうママ達はツッコみませんよ?
 名乗りが妙に物騒なのにもツッコミませんから!!


 さらに二人共がディザール様のシギルを発動する。

 そして私と『私』も同じく、初っ端からシギルを発動!!

 鮮烈な青い輝きが私達の身体を包む!!



 そして、ほとんど同時に全員が動き出し、私と『私』、二人のミーティアがそれぞれ激突する!!

 先ずは当人同士の戦いだ!







 お互いに薙刀リヴェラを構える。

 口火を切ったのは私の足元を掬う様な薙ぎ払いの一撃。
 それを『私』はタイミングよく跳躍して避けつつ間合いを詰めて来る。

 そしてその勢いのまま、リヴェラを薙刀から瞬時に刀に変化させて袈裟斬りを繰り出してきた!!

 がしっ!!

 私は威力が乗り切る前に相手の柄頭を掌底で弾いて斬撃の軌道を逸らす!

 そして私もリヴェラの形態を短剣に変えて脇腹を狙って突き入れるが、それは身体を捻って回避される。


 攻防はそれで終わらない。


 近接レンジでの激しい応酬がなされるが、どちらも有効打は与えられず膠着状態となる。



 ぶぉっ!!


 ……っと!?


 突然、横合いから炎の槍が飛んできたので慌てて回避する。

 私達が切り結んでいたところに、ミーティアたちの戦いの流れ弾が襲ってきたのだ。
 私だけでなく、『私』も回避を余儀なくされたので、大勢に影響はなかった。


 ちらっ、とミーティア達の戦いを横目で確認すると、とんでもないことになっていた。













「[雷龍]![炎龍]![水龍]!!」

『[風龍]![氷龍]![地龍]!!』

 自律行動型の○龍をお互いに三体ずつ呼び出し、当人同士は龍の攻撃の合間を縫っての双剣乱舞。



 いや……えらいこっちゃだわ……


『…何あの怪獣大決戦は?』

 呆れたように呟く『私』。

「……同感」



 ちょっとアレには手出ししにくいな……なんて思ったものの。

 きっと、この戦いを制するにはミーティアとの連携も必要になってくるだろうと思うのだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

乙女ゲームの悪役令嬢になった妹はこの世界で兄と結ばれたい⁉ ~another world of dreams~

二コ・タケナカ
ファンタジー
ある日、佐野朝日(さのあさひ)が嵐の中を帰宅すると、近くに落ちた雷によって異世界へと転移してしまいます。そこは彼女がプレイしていたゲーム『another world of dreams』通称アナドリと瓜二つのパラレルワールドでした。 彼女はゲームの悪役令嬢の姿に。しかも一緒に転移した兄の佐野明星(さのあきと)とは婚約者という設定です。 二人は協力して日本に帰る方法を探します。妹は兄に対する許されない想いを秘めたまま……

真紅の髪の女体化少年 ―果てしなき牝イキの彼方に―

中七七三
ファンタジー
ラトキア人―― 雌雄同体という特性を持つ種族だ。周期的に雄体、雌体となる性質をもつ。 ただ、ある条件を満たせば性別は固定化される。 ラトキア人の美しい少年は、奴隷となった。 「自分は男だ――」 少年の心は男だった。美しい顔、肢体を持ちながら精神的には雄優位だった。 そして始まるメス調教。その肉に刻まれるメスのアクメ快感。 犯され、蹂躙され、凌辱される。 肉に刻まれるメスアクメの快感。 濃厚な精液による強制種付け―― 孕ませること。 それは、肉体が牝に固定化されるということだった。 それは数奇な運命をたどる、少年の物語の始まりだった。 原案:とびらの様 https://twitter.com/tobiranoizumi/status/842601005783031808 表紙イラスト:とびらの様 本文:中七七三 脚色:中七七三 エロ考証:中七七三 物語の描写・展開につきましては、一切とびらの様には関係ありません。 シノプスのみ拝借しております。 もし、作品内に(無いと思いますが)不適切な表現などありましたら、その責は全て中七七三にあります。

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

排泄時に幼児退行しちゃう系便秘彼氏

mm
ファンタジー
便秘の彼氏(瞬)をもつ私(紗歩)が彼氏の排泄を手伝う話。 排泄表現多数あり R15

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

最強の英雄は幼馴染を守りたい

なつめ猫
ファンタジー
 異世界に魔王を倒す勇者として間違えて召喚されてしまった桂木(かつらぎ)優斗(ゆうと)は、女神から力を渡される事もなく一般人として異世界アストリアに降り立つが、勇者召喚に失敗したリメイラール王国は、世界中からの糾弾に恐れ優斗を勇者として扱う事する。  そして勇者として戦うことを強要された優斗は、戦いの最中、自分と同じように巻き込まれて召喚されてきた幼馴染であり思い人の神楽坂(かぐらざか)都(みやこ)を目の前で、魔王軍四天王に殺されてしまい仇を取る為に、復讐を誓い長い年月をかけて戦う術を手に入れ魔王と黒幕である女神を倒す事に成功するが、その直後、次元の狭間へと呑み込まれてしまい意識を取り戻した先は、自身が異世界に召喚される前の現代日本であった。

処理中です...