361 / 683
第十一幕 転生歌姫と迷宮の輪舞曲〈ロンド〉
第十一幕 17 『公演再開』
しおりを挟む
今日の夕方からエーデルワイス歌劇団の公演が開始となる。
随分久しぶりになるが、演目も一新されて街はその話題でもちきりだとか。
そしてなんと言っても今回は目玉があるのだ。
私も非常に楽しみにしている。
授業が終わり、今日このあと公演のため劇場に向かうのだが……その前に寄るところがある。
やってきたのは1年7組の教室だ。
「アリシアさん、迎えに来たよ~」
「あ…カティア様!」
「あ、『様』付けはダメ~。学園はみんな平等なんだからね」
私はその辺は建前で終わらせませんとも。
「は、はい…。カティア…さん」
う~ん…まだちょっと硬いなぁ…
私としてはもっと、こう…フレンドリーな感じだと嬉しいんだけど。
まぁ、それはこれからもっと仲良くなれば自然とそうなるだろう。
そう。
今日の公演でアリシアさんは鮮烈デビューを飾るのだ!
正式に入団したと言うわけではないので、いわば特別ゲストみたいな扱いなんだけど。
だが、こうやって既成事実を積み上げていけば、押しに弱いアリシアさんなら……ふふふ。
おっと…少々黒い面が出てしまった。
それに、無理強いは出来ないけど…何だかんだ言っても舞台に立てば楽しんでくれると思うんだよね。
この間の野外実習の時もそうだったし。
彼女は少し恥ずかしがりやな所があるから誰かが後押ししてあげなければならないのだ!
「それじゃあ行きましょうか!」
「は、はい、よろしくお願いします」
公演は夕方からだけど、出演者は衣装合わせとか色々準備があるから、時間的な余裕はそれほどあるわけではない。
ということで、私とアリシアさんはこのまま劇場に直行する。
教室を出て、校門で護衛の二人と合流し徒歩で劇場へと向かう。
道行く人から注目を浴びるのは、もうすっかり慣れてしまった。
アリシアさんは居心地悪そうにしてるけど…明日からはアナタもこちら側の人間だよ~。
そうして暫く歩いて、国立劇場へとやって来た。
すっかりホームグラウンドとなったこの劇場……最近はエーデルワイス専用みたいになっているが、時々ウチ以外のイベントも催されたりもする。
昨日までの休演期間には色々やってたらしい。
一時期は集客に苦労していたこの劇場も、今となっては演芸の聖地とまで呼ばれているらしい。
この劇場で公演すると言うのがステータスになってるのだ。
そうなるまでにエーデルワイスが果たした役割は大きく、とても誇らしいと思う。
「うう…こんな立派な劇場で歌うなんて……ホントに私で大丈夫なのかしら……」
「何言ってるの、自信を持ちなさいって!あなたの歌声は絶対に観客を虜にするんだから!」
「は、はい……自信はありませんが、精一杯頑張ります」
とにかく、彼女には場数を踏んでもらって自信を付けさせないと。
歌に関しては全く心配していないから、あとは彼女自身が舞台を楽しめるようになって欲しい。
あの、煌めく照明の中で観客たちの拍手喝采を浴びる事の素晴らしさを知ればきっと…
「おや、カティア。それに…よく来てくれたね、アリシア」
関係者用の扉から中に入ると、ちょうどミディットばあちゃんが通りがかった。
裏方の仕事は開演の準備で今がピークだと思われるので、ばあちゃんも忙しそうだ。
「は、はい。今日はよろしくお願いします」
「ああ、こちらこそ頼むよ。アンタの歌は今日の目玉と言ってもいい。自信を持つんだよ」
「自信は……ですが、精一杯頑張ります!」
「それでいいさ。しかし、アンタの歌を初めて聞いたときは衝撃だったね。何せ…カティアと同等の歌い手なんて、この世にゃ居ないと思ってたからね、あたしゃ」
「大袈裟だよ、ばあちゃん。この世は広いんだからさ」
「ほんと、その通りだねぇ……この歳になってもそう思うことがあるんだから。…おっと、話し込んでるは場合じゃなかったね。あたしゃこれで失礼するよ。二人とも、頑張るんだよ」
「うん。またね、ばあちゃん」
「失礼します」
そうして、ばあちゃんは慌ただしく通路の向こうへと行ってしまった。
「じゃ、私達も行こう。楽屋はこっちだよ」
私達も出演の準備をするべく楽屋へと向かうのだった。
随分久しぶりになるが、演目も一新されて街はその話題でもちきりだとか。
そしてなんと言っても今回は目玉があるのだ。
私も非常に楽しみにしている。
授業が終わり、今日このあと公演のため劇場に向かうのだが……その前に寄るところがある。
やってきたのは1年7組の教室だ。
「アリシアさん、迎えに来たよ~」
「あ…カティア様!」
「あ、『様』付けはダメ~。学園はみんな平等なんだからね」
私はその辺は建前で終わらせませんとも。
「は、はい…。カティア…さん」
う~ん…まだちょっと硬いなぁ…
私としてはもっと、こう…フレンドリーな感じだと嬉しいんだけど。
まぁ、それはこれからもっと仲良くなれば自然とそうなるだろう。
そう。
今日の公演でアリシアさんは鮮烈デビューを飾るのだ!
正式に入団したと言うわけではないので、いわば特別ゲストみたいな扱いなんだけど。
だが、こうやって既成事実を積み上げていけば、押しに弱いアリシアさんなら……ふふふ。
おっと…少々黒い面が出てしまった。
それに、無理強いは出来ないけど…何だかんだ言っても舞台に立てば楽しんでくれると思うんだよね。
この間の野外実習の時もそうだったし。
彼女は少し恥ずかしがりやな所があるから誰かが後押ししてあげなければならないのだ!
「それじゃあ行きましょうか!」
「は、はい、よろしくお願いします」
公演は夕方からだけど、出演者は衣装合わせとか色々準備があるから、時間的な余裕はそれほどあるわけではない。
ということで、私とアリシアさんはこのまま劇場に直行する。
教室を出て、校門で護衛の二人と合流し徒歩で劇場へと向かう。
道行く人から注目を浴びるのは、もうすっかり慣れてしまった。
アリシアさんは居心地悪そうにしてるけど…明日からはアナタもこちら側の人間だよ~。
そうして暫く歩いて、国立劇場へとやって来た。
すっかりホームグラウンドとなったこの劇場……最近はエーデルワイス専用みたいになっているが、時々ウチ以外のイベントも催されたりもする。
昨日までの休演期間には色々やってたらしい。
一時期は集客に苦労していたこの劇場も、今となっては演芸の聖地とまで呼ばれているらしい。
この劇場で公演すると言うのがステータスになってるのだ。
そうなるまでにエーデルワイスが果たした役割は大きく、とても誇らしいと思う。
「うう…こんな立派な劇場で歌うなんて……ホントに私で大丈夫なのかしら……」
「何言ってるの、自信を持ちなさいって!あなたの歌声は絶対に観客を虜にするんだから!」
「は、はい……自信はありませんが、精一杯頑張ります」
とにかく、彼女には場数を踏んでもらって自信を付けさせないと。
歌に関しては全く心配していないから、あとは彼女自身が舞台を楽しめるようになって欲しい。
あの、煌めく照明の中で観客たちの拍手喝采を浴びる事の素晴らしさを知ればきっと…
「おや、カティア。それに…よく来てくれたね、アリシア」
関係者用の扉から中に入ると、ちょうどミディットばあちゃんが通りがかった。
裏方の仕事は開演の準備で今がピークだと思われるので、ばあちゃんも忙しそうだ。
「は、はい。今日はよろしくお願いします」
「ああ、こちらこそ頼むよ。アンタの歌は今日の目玉と言ってもいい。自信を持つんだよ」
「自信は……ですが、精一杯頑張ります!」
「それでいいさ。しかし、アンタの歌を初めて聞いたときは衝撃だったね。何せ…カティアと同等の歌い手なんて、この世にゃ居ないと思ってたからね、あたしゃ」
「大袈裟だよ、ばあちゃん。この世は広いんだからさ」
「ほんと、その通りだねぇ……この歳になってもそう思うことがあるんだから。…おっと、話し込んでるは場合じゃなかったね。あたしゃこれで失礼するよ。二人とも、頑張るんだよ」
「うん。またね、ばあちゃん」
「失礼します」
そうして、ばあちゃんは慌ただしく通路の向こうへと行ってしまった。
「じゃ、私達も行こう。楽屋はこっちだよ」
私達も出演の準備をするべく楽屋へと向かうのだった。
11
お気に入りに追加
344
あなたにおすすめの小説
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜
O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。
しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。
…無いんだったら私が作る!
そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
私って何者なの
根鳥 泰造
ファンタジー
記憶を無くし、魔物の森で倒れていたミラ。テレパシーで支援するセージと共に、冒険者となり、仲間を増やし、剣や魔法の修行をして、最強チームを作り上げる。
そして、国王に気に入られ、魔王討伐の任を受けるのだが、記憶が蘇って……。
とある異世界で語り継がれる美少女勇者ミラの物語。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる