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幕間
幕間18 『迷宮探索』
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ダンジョン。
それは生きた構造物であり、一種の魔物と言われている。
魔核に相当するダンジョン・コアなるものが存在し、それを破壊、若しくは外部に持ち出すとダンジョンは死を迎える。
ダンジョンの発生は遺跡であったり洞窟であったり…既存の構造物を母体として生まれることもあれば、何もない平原に突如口を開けることもある。
そして、ダンジョンは成長する。
その段階に応じて、『発生期』『成長期』『安定期』『衰退期』『終末期』に分類される。
「アクサレナ迷宮は神代の頃から既に知られていて、アクサレナ丘陵地下に張り巡らされていた地下洞窟を基に発生したものと推測…今は『安定期』にあると言われているわ」
「ふ~ん…地下洞窟というよりは遺跡みたいに人工的な構造物に見えるけど…」
「それは『成長期』に変容した結果みたいね」
「確か地下はおよそ50~100層、面積は王都よりも遥かに広大と言われてるんだよね」
「研究者による推測ではね。世界最大規模とも言われてるけど、その全容は誰も把握できていない…当然ダンジョン・コアの場所も判明していない」
「あとは…数百年前までは内部から魔物が溢れ出す『暴走』が度々起きていたけど、安定期に入ったとされてからはそのようなこともなく…以降は貴重な資源の宝庫となっている…と言うことでしたね」
「実際、ダンジョン産の資源はアクサレナの重要な交易品ですわ」
「そう。私達みたいな冒険者とか、ダンジョン専門の迷宮探索者が生産者…経済活動の一翼を担ってるってわけね」
「なるほど…」
「勉強になるね!」
彼女たち学園生にとっては、正に社会見学といったところであろうか。
実際に今回の冒険者活動に当たっては学園にも活動計画を提出し、活動報告も出すことになっており、その内容に応じて成績にも加味されたりもする。
「さて。順調に3階層まで来たけど…ある意味ここからがダンジョンの本番と言えるわね」
「いよいよってわけね。正直2階層までは物足りなかったし……あ、メリエルはちゃんといる?」
「大丈夫よ」
「いるよ~」
どうやら今回はまだ迷子になっていないようだ。
もちろん、ステラがずっと手を繋いでいるのだが。
「でも、今日はもうあまり時間がないわ。ある程度様子を見て回ったら引き上げないと」
「そうね…このダンジョンは5階層ごとに転移装置があるんだけど、今日のところはそこまで行くのは厳しいかな?」
「じゃあ、あと一時間くらい探索したら今日は引き上げましょうか?」
「「「了解!」」」
そうして、第三階層の探索を始めて暫し…
レイラが魔物の気配を察知して注意を促す。
「しっ!……そこの角の向こうから魔物の気配を複数感じるわ」
「では、待ち伏せしましょうか」
「ええ。…今度は何かな?今まではコウモリやらゴキブリやら…まるで手応えがなかったものね」
(…カティアさんがいたら大騒ぎでしたわね)
そうして、戦闘態勢を整えて待ち伏せしていると、角からぬっ、と現れたのは…
「オークか!」
「いち、にぃ…5匹か。ま、多少は手応えがあるかしらね…」
成人男性ほどの身長の豚面の獣人。
割とポピュラーな魔物だが、人間からは特に忌み嫌われている。
その理由は…
「げ…」
「キモい」
「やだ…」
「…まあ、こっちは女子だけだからね」
人間の女性を襲って繁殖相手としてしまうからだ。
当然、こちらが女性だけなのを見ると発情状態となり…鼻息は荒く、目は血走ったものになる。
「うわ~……気持ち悪いからさっさと片付けましょ」
「近寄らないで!!せいっ!!やっ!!」
嫌悪感をあらわにしたステラが即座に弓矢を番えて、素早く連射する!!
「プギャッ!!」
3連射された矢は見事に全て命中。
一匹は右目に、一匹は右肩、もう一匹は腹に矢を受けて怯む。
「「プギィーーッ!!!」」
仲間を傷つけられた残る二匹は激昂し、手にした棍棒を振り上げて猛然と襲いかかってきた!
「甘いですわ!!」
ブオンッ!!
前衛のルシェーラが、カウンターで槍戦斧を大きく振るって、オーク二匹を纏めて薙ぎ払う!!
ザスッ!!ザンッ!!
「「ギャーーっ!!」」
腹を大きく切り裂かれた二匹は鮮血を撒き散らし、膝から地面に崩れ落ちる。
「シッ!!ハッ!セィッ!!」
さらに、シフィルが矢を受けて怯んでいた三匹に肉薄し、刺突短剣で素早く突きを放つ!!
「グギャッ!!?」
「ピギっ!!?」
「ブギっ!!」
何れも急所に突き刺さる。
またたく間に5匹のオークに大ダメージを与えるが、ランクの割には生命力が強いため、まだ致命傷には至っていないようだ。
だが…
「みんな下がって!!…行くよっ!![地走雷]!!」
メリエルの雷撃魔法が発動!!
彼女が魔力を込めた右手を地面に叩きつけるように振り下ろすと、そこから幾筋もの雷撃が地を這うようにオークに襲いかかる!!
バチバチバチッッッ!!!
瞬く間に5匹全てを捉えた電撃は全身を駆け巡り、悲鳴すら上げさせずにその命を刈り取ってしまった。
「いや~、私の出番は全く無かったわね。あなた達の戦闘能力は、とても登録したてとは思えないわ…」
「実戦経験はまだまだですわ」
「そうそう。もっと経験を積まないとね」
「えへへ~…ここで修行して、カティアに認めてもらうんだ!」
「私も…少しは力を付けないと」
レイラの高評価を聞いても、まだまだだと彼女たちは口を揃えて言う。
それは、彼女たちの友人であるカティアのレベルを知るからこそ、だろう。
「向上心があるのね。良い事だと思うわ。でも、今日のところはここまでかしらね」
「そうですわね、そろそろ引き上げ……」
「…ちょっと待って」
と、ルシェーラが引き上げの判断をしようとしたとき、レイラが何かに気がついたかのように遮った。
「…どうしました?」
「…何か聞こえる。これは……何処かで戦闘してるのかしら?」
「それは…私達の他にも探索してる人は居るでしょうし…」
「…そうね。ただ、結構切迫してるような雰囲気なのよ。苦戦してるのかも」
そのレイラの言葉に、ルシェーラたちは思わず顔を見合わせる。
「どうする?」
「行ってみましょう!!もしかしたら助けを必要としているのかも知れませんわ!!」
「流石ルシェーラ、そうこなくっちゃね!!」
「…仕方ないわね」
彼女たちの決断は早かった。
そして、そこからの行動も。
レイラは戦闘の気配が感じられる方向へと皆を先導して走り出すのだった。
それは生きた構造物であり、一種の魔物と言われている。
魔核に相当するダンジョン・コアなるものが存在し、それを破壊、若しくは外部に持ち出すとダンジョンは死を迎える。
ダンジョンの発生は遺跡であったり洞窟であったり…既存の構造物を母体として生まれることもあれば、何もない平原に突如口を開けることもある。
そして、ダンジョンは成長する。
その段階に応じて、『発生期』『成長期』『安定期』『衰退期』『終末期』に分類される。
「アクサレナ迷宮は神代の頃から既に知られていて、アクサレナ丘陵地下に張り巡らされていた地下洞窟を基に発生したものと推測…今は『安定期』にあると言われているわ」
「ふ~ん…地下洞窟というよりは遺跡みたいに人工的な構造物に見えるけど…」
「それは『成長期』に変容した結果みたいね」
「確か地下はおよそ50~100層、面積は王都よりも遥かに広大と言われてるんだよね」
「研究者による推測ではね。世界最大規模とも言われてるけど、その全容は誰も把握できていない…当然ダンジョン・コアの場所も判明していない」
「あとは…数百年前までは内部から魔物が溢れ出す『暴走』が度々起きていたけど、安定期に入ったとされてからはそのようなこともなく…以降は貴重な資源の宝庫となっている…と言うことでしたね」
「実際、ダンジョン産の資源はアクサレナの重要な交易品ですわ」
「そう。私達みたいな冒険者とか、ダンジョン専門の迷宮探索者が生産者…経済活動の一翼を担ってるってわけね」
「なるほど…」
「勉強になるね!」
彼女たち学園生にとっては、正に社会見学といったところであろうか。
実際に今回の冒険者活動に当たっては学園にも活動計画を提出し、活動報告も出すことになっており、その内容に応じて成績にも加味されたりもする。
「さて。順調に3階層まで来たけど…ある意味ここからがダンジョンの本番と言えるわね」
「いよいよってわけね。正直2階層までは物足りなかったし……あ、メリエルはちゃんといる?」
「大丈夫よ」
「いるよ~」
どうやら今回はまだ迷子になっていないようだ。
もちろん、ステラがずっと手を繋いでいるのだが。
「でも、今日はもうあまり時間がないわ。ある程度様子を見て回ったら引き上げないと」
「そうね…このダンジョンは5階層ごとに転移装置があるんだけど、今日のところはそこまで行くのは厳しいかな?」
「じゃあ、あと一時間くらい探索したら今日は引き上げましょうか?」
「「「了解!」」」
そうして、第三階層の探索を始めて暫し…
レイラが魔物の気配を察知して注意を促す。
「しっ!……そこの角の向こうから魔物の気配を複数感じるわ」
「では、待ち伏せしましょうか」
「ええ。…今度は何かな?今まではコウモリやらゴキブリやら…まるで手応えがなかったものね」
(…カティアさんがいたら大騒ぎでしたわね)
そうして、戦闘態勢を整えて待ち伏せしていると、角からぬっ、と現れたのは…
「オークか!」
「いち、にぃ…5匹か。ま、多少は手応えがあるかしらね…」
成人男性ほどの身長の豚面の獣人。
割とポピュラーな魔物だが、人間からは特に忌み嫌われている。
その理由は…
「げ…」
「キモい」
「やだ…」
「…まあ、こっちは女子だけだからね」
人間の女性を襲って繁殖相手としてしまうからだ。
当然、こちらが女性だけなのを見ると発情状態となり…鼻息は荒く、目は血走ったものになる。
「うわ~……気持ち悪いからさっさと片付けましょ」
「近寄らないで!!せいっ!!やっ!!」
嫌悪感をあらわにしたステラが即座に弓矢を番えて、素早く連射する!!
「プギャッ!!」
3連射された矢は見事に全て命中。
一匹は右目に、一匹は右肩、もう一匹は腹に矢を受けて怯む。
「「プギィーーッ!!!」」
仲間を傷つけられた残る二匹は激昂し、手にした棍棒を振り上げて猛然と襲いかかってきた!
「甘いですわ!!」
ブオンッ!!
前衛のルシェーラが、カウンターで槍戦斧を大きく振るって、オーク二匹を纏めて薙ぎ払う!!
ザスッ!!ザンッ!!
「「ギャーーっ!!」」
腹を大きく切り裂かれた二匹は鮮血を撒き散らし、膝から地面に崩れ落ちる。
「シッ!!ハッ!セィッ!!」
さらに、シフィルが矢を受けて怯んでいた三匹に肉薄し、刺突短剣で素早く突きを放つ!!
「グギャッ!!?」
「ピギっ!!?」
「ブギっ!!」
何れも急所に突き刺さる。
またたく間に5匹のオークに大ダメージを与えるが、ランクの割には生命力が強いため、まだ致命傷には至っていないようだ。
だが…
「みんな下がって!!…行くよっ!![地走雷]!!」
メリエルの雷撃魔法が発動!!
彼女が魔力を込めた右手を地面に叩きつけるように振り下ろすと、そこから幾筋もの雷撃が地を這うようにオークに襲いかかる!!
バチバチバチッッッ!!!
瞬く間に5匹全てを捉えた電撃は全身を駆け巡り、悲鳴すら上げさせずにその命を刈り取ってしまった。
「いや~、私の出番は全く無かったわね。あなた達の戦闘能力は、とても登録したてとは思えないわ…」
「実戦経験はまだまだですわ」
「そうそう。もっと経験を積まないとね」
「えへへ~…ここで修行して、カティアに認めてもらうんだ!」
「私も…少しは力を付けないと」
レイラの高評価を聞いても、まだまだだと彼女たちは口を揃えて言う。
それは、彼女たちの友人であるカティアのレベルを知るからこそ、だろう。
「向上心があるのね。良い事だと思うわ。でも、今日のところはここまでかしらね」
「そうですわね、そろそろ引き上げ……」
「…ちょっと待って」
と、ルシェーラが引き上げの判断をしようとしたとき、レイラが何かに気がついたかのように遮った。
「…どうしました?」
「…何か聞こえる。これは……何処かで戦闘してるのかしら?」
「それは…私達の他にも探索してる人は居るでしょうし…」
「…そうね。ただ、結構切迫してるような雰囲気なのよ。苦戦してるのかも」
そのレイラの言葉に、ルシェーラたちは思わず顔を見合わせる。
「どうする?」
「行ってみましょう!!もしかしたら助けを必要としているのかも知れませんわ!!」
「流石ルシェーラ、そうこなくっちゃね!!」
「…仕方ないわね」
彼女たちの決断は早かった。
そして、そこからの行動も。
レイラは戦闘の気配が感じられる方向へと皆を先導して走り出すのだった。
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