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第十幕 転生歌姫と忍び寄る戦火
第十幕 49 『精鋭』
しおりを挟む「戦況は?」
「はっ!敵方の損耗はおよそ6割以上には達したかと。対して、こちらの死傷者は1割前後かと」
ハンネス様のもとに最新の状況が伝えられる。
「これで数の上ではほぼ互角ということか。このまま押し切れるならそれでも良いのだが…」
「今のところこちらが圧倒しているとは思いますが、流石にこれだけの長期戦なので疲労が見え始めております」
「そうなると魔物の方が有利になってくるか……そうすると、やはり当初の予定通り精鋭部隊による大将格の撃破、短期決戦が必要だな」
私の支援によって能力が著しく底上げされていても、体力まで無尽蔵になるわけではない。
今はこちらが圧倒していても、ようやく数的に互角になったところなので、完全に撃退するまでにはまだまだ時間がかかる。
そうなれば、本来の地力で優る魔物側が徐々に優勢になってくるかもしれない。
だから、群れのボスを叩いて一気に決着をつけてしまおう、というわけだ。
そして、最終決戦に望む精鋭に選ばれたのは、元々想定されていたメンバーを軸に若干の調整が行われた。
「やれやれ…またアレの相手をすることになるとはなぁ…」
「軍団の規模から言っても、更に厄介なやつの可能性があるな」
「大将の[鬼神降臨]でも倒しきれなかったって、相当ヤバいっすよね…」
ブレゼア平原の戦いでボスと戦った経験のある父さんとティダ兄、そしてラウルさん(参戦してるのを知らなかったので驚いた)がそんな話をしている。
「ミーティアは大丈夫なのか?」
「疲れて眠ってるだけね~。無理もないわ~、あれだけの戦いをしたんだもの~」
ミーティアはあのあと元の姿に戻って、深い眠りに入ってしまった。
やはり相当な負担だったのだろう。
今は姉さんが見ていてくれている。
最終的に選ばれたメンバーは…私、テオ、父さん、ティダ兄、イースレイさん、ラウルさん、そして……
「俺も行くぞ」
「イスファハン王子…よろしいのですか?」
「ああ。イスパル、レーヴェラントが王族自ら先陣を切るんだ。カカロニアも遅れを取るわけにはいかんからな」
テオが複雑そうな表情で聞くのに対して、そう答えるイスファハン王子。
結構アツい人だよね~。
「これまでの戦いでもカカロニア軍の勇猛さは十分に轟いたと思うがな。まあ、三国の王族が協力して事に当たるというのは、兵たちの士気も上がって良いかもしれん」
ハンネス様は了承したようだ。
「私も行くよ」
「母さん!?」
お義母さまもそんな事を言い出した。
「さっきの『奇術師』とやらとの戦いで身体は解れてるからね。体調も全く問題なし!…むしろ中途半端に戦ったから、もう少し動かないと逆に調子がくるっちゃいそうだよ。そして何よりも…息子と義娘だけ危険な目に合わせるわけにはいかないね」
「はぁ…全く、言い出したら聞かぬ奴よ……分かった、好きにするが良い。だが、お前が行くからには…しっかり全員無事に護り切るのだぞ。『守護者』よ」
「もちろんだよ」
気になってテオの方を見る。
あ、突入ギリギリまで[絶唱]を使うため、私はまだ歌ってますよ~。
「ああ、母さんの二つ名だな。鉄壁の防御で、護衛依頼の完遂率が100%であるところから付けられたらしい」
へえ~…テオの鉄壁ぶりはお母さん譲りなんだね。
「よし、これで突入メンバーが決まったな。竜騎士隊とともに一気に魔軍のボスを急襲、これを撃破する。頼んだぞ!!」
「「「はっ!!」」」
「……全軍に通達!これより魔軍撃破の最終作戦に入る![絶唱]の支援が終了となるため各員注意の上、防衛戦に当たるように!」
精鋭メンバーが竜騎士に分乗し一斉に飛び立つ。
[絶唱]を止めた私も、テオと共に彼の愛竜であるロコちゃんに跨って決戦の地へ向かうのであった。
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