【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
上 下
318 / 683
第十幕 転生歌姫と忍び寄る戦火

第十幕 38 『式典』

しおりを挟む

「凄いな……流石は神器と言うところか」

 神殿から王城に戻る馬車の中、隣に座ったテオが私の手元を見ながら言う。
 そこに輝くのは虹色に輝く腕輪ブレスレット
 リヴェティアラ神殿より預かった聖杖リヴェラの形状を変えてこのように身に着けておく事にしたのだ。

 これなら何かあっても即座に武器に変化させて対処出来る。
 左手の薬指には収納倉庫ストレージ機能を持つ婚約指輪、右手には神器の腕輪ブレスレット

 実用面もさることながら、なんと言ってもとてもオシャレである。
 まさに死角無し!
 思わずニヤニヤ眺めてしまうのはしょうがないね。












 さて。
 午後からは私達の婚約に関する調印式が執り行われる予定だ。

 一旦部屋に戻って式典向けのドレスに着替えることになる。

 マリーシャに手伝ってもらいながら身支度を整える。


「あれ?そう言えば…ミーティアはどうしたの?」

 ふと気が付いて聞いてみる。
 私がテオと出かける時には部屋に残ったはずだけど。
 この城の中では、彼女が自由に行ける場所は限られる。


「フェレーネ様のところです。随分と赤ちゃんのことが気になった様子で……フェレーネ様も部屋に籠もって退屈だからといって招いてくれたのです」
 
「ああ、そうなんだ……あまりお身体に負担にならなければ良いけど…」

 まあ、ミーティアなら無理を言わないし、大丈夫かな?









 そうして支度を整えて待っていると、使用人の人が式典会場まで案内するためにやって来た。

 向かった先は城内で様々な儀式を執り行うための聖堂。
 謂わば小さな神殿とも言えるその場所は、王城の最も奥まったところに作られており、そこに至る通路も何処か厳かで、そんなところも神殿と呼ぶに相応しい神聖な雰囲気を醸し出していた。


「カティア」

「テオ、お待たせ」

 聖堂の前では、既にテオが私を待っていてくれた。


 重厚な扉を開いて中に入ると、薄暗い室内には燭台の明かりが灯されて、厳かな空気に身が引き締まる思いがする。

 私はテオが差し出した手を取って、扉から続く道をゆっくりと歩き出す。
 両側の列席者は、国家重鎮や有力貴族だろう。
 最前列には母様や…父さんが肩身狭そうにしていた。
 アルノルト様やアルフォンス様もおられる。

 本来であればお義母さまも出席するはずだったのだろうけど…流石に出産の直後では、そう無理も出来ないだろう。
 彼女自身は強行しようとしたのを、周りが止めたであろうことは想像に難くないが。
 今頃は生まれたばかりの赤ちゃんと、ミーティアと一緒に過ごしている事だろう。


 部屋の最奥…祭壇らしき前には立派な身形の聖職者……って、午前にお会いした大司教イヴァン様だ。

 彼の前まで私達は進み出て、そこで止まる。


 そして、暫く間を取ってから、大司教猊下が式典の開始を告げた。




「大いなる12神……リヴェティアラ様の御子、テオフィルスと、ディザール様…そしてエメリール様の御子であるカティア」

 エメリールの…と言うくだりで少しざわめくような気配が伝わってきた。
 どうやらその事実を知らなかった人もいたらしい。


「此度は二人が婚約を取り交わす事を神前に報告し、許しを得るための儀式を執り行うものである」


 …まあ、リル姉さんとリヴェティアラ様にはさっき話してきたけども。


 そうして始まった式典は…まあ、簡略的な結婚式のようなものだった。

 もちろん、結婚式ともなればもっと盛大に行うのだと思うのだけど、婚約するだけでもこんな大仰な式典を行うのだから、王族って大変だね。
 なんて他人事みたいに思いながら大司教猊下のお話を聞いていた。



 そして、指輪の交換……ではなく、婚姻の誓約書に二人で調印する。
 これで、晴れて私達は正式に婚約者ということになる。
 公的、法的に認められ、このあと大々的に各国、民衆に喧伝される。


 とうとうここまで来たんだ……と、感慨深い思いが込み上げてくる。

 結婚はまだ先になるけど、私は生涯をこの人と共に過ごす……そう考えると幸せな気持ちで満たされるのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

人見知り転生させられて魔法薬作りはじめました…

雪見だいふく
ファンタジー
 私は大学からの帰り道に突然意識を失ってしまったらしい。  目覚めると 「異世界に行って楽しんできて!」と言われ訳も分からないまま強制的に転生させられる。 ちょっと待って下さい。私重度の人見知りですよ?あだ名失神姫だったんですよ??そんな奴には無理です!!     しかし神様は人でなし…もう戻れないそうです…私これからどうなるんでしょう?  頑張って生きていこうと思ったのに…色んなことに巻き込まれるんですが…新手の呪いかなにかですか?   これは3歩進んで4歩下がりたい主人公が騒動に巻き込まれ、時には自ら首を突っ込んでいく3歩進んで2歩下がる物語。 ♪♪   注意!最初は主人公に対して憤りを感じられるかもしれませんが、主人公がそうなってしまっている理由も、投稿で明らかになっていきますので、是非ご覧下さいませ。 ♪♪ 小説初投稿です。 この小説を見つけて下さり、本当にありがとうございます。 至らないところだらけですが、楽しんで頂けると嬉しいです。 完結目指して頑張って参ります

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...