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第十幕 転生歌姫と忍び寄る戦火

第十幕 21 『王都レーヴェンハイム』

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 メルゲンの街を出発して二日後、私達一行はレーヴェラント王国の王都、レーヴェンハイムの目前まで来ていた。


「い、いよいよ到着するんだね」

「…何だ、緊張してるのか?」

「ちょっとだけ……」

 昨日から何だかソワソワして落ち着かない。
 やっぱり第一印象は良く見られたいと思うとアレコレ考えてしまって…

「カティアは自然体でいるのが一番だと思うけどな」

「私もそう言ったのだけど。まあ、緊張する気持ちは分かるわ」

「母様もそうだった?」

「どうだったかしらねぇ……私とユリウスの場合は周りから外堀を埋められたって言うのもあるしね。あまり考える余裕は無かったわ」

 ああ…父様と母様は純粋な恋愛結婚ではないんだよね…
 そうとは思えないくらい仲は良いのだけど。
 当時は色々複雑な想いもあったんだろうね…


















 王都に近付くにつれて徐々に建物が多くなってくる。
 あいにくと雪がちらついて視界があまり良くないので遠くまでは確認できないが、多分もうすぐ王都に入るのだと思う。

 レーヴェンハイムはアクサレナほどではないけど一国の王都なので当然ながらかなりの大都市であり、人口規模は十万人を超えるということだ。



 それから程なくして、王都の外壁が見えてきた。
 既に街中と言っても良いくらいに建物は密集しているが、厳密に王都と言えば外壁内であるのはアクサレナと同様だ。

 外壁の周りにはお堀が巡らされていて、中々に防御力がありそう。
 外壁の上から…あるいはお堀にかかる橋の上など、あちこちで雪をお堀に捨てている光景が目に入る。

「あの堀は王都防衛の一端を担うだけでなく、ああして除雪した後の雪捨て場にもなるんだ」

「へえ~、やっぱり国が違うと文化も違うね~。そういうのを見るのも旅の醍醐味だよ」

「一座でレーヴェラントに来たことはないのか?」

「え~と…確か私がまだ小さい時に…でも、王都には来たことないと思う。大きな街で公演するようになったのは割と最近の事だから」

「そうか。…レーヴェンハイムの住人にも劇団の公演を見せてあげたいものだな」

「そだね。出張公演もいいかも。みんなずっと旅してきた人たちだからね…たまにはアクサレナの外に出たいかもしれないし……」

 アクサレナではすっかりウチの劇団も定着したけど、今回みたいに公演の期間が開くこともあるので出張公演も可能だろう。
 あまり遠くまでは行けないだろうけど、レーヴェラントなら割と近いので実現する可能性は高いと思う。


「あら、良いじゃないの。あなた達が結婚したら『ご成婚記念公演』とかどう?本人が出演するんだから話題性抜群よね」

「ご、ご成婚記念?……ちょっと恥ずかしいけど、それもいいかも…」

 少しその光景を思い浮かべると、それは魅力的な提案のように思えた。


「でも……はぁ…つくづくグラナ帝国が恨めしい…」

 幸せな未来を夢想するが、頭の痛い問題も多々ある。
 そう思って私は顔をしかめるが、テオは優しく微笑んで言う。

「…未来に希望が持てるなら、苦難は乗り越えられる。そうだろう?」

「…うん!そうだね!」

「お前に出会わなければ俺は今だ燻っていたかもしれない。俺に希望をくれたのはお前だ」

「あ、あぅあぅ……」

「あらあら真っ赤になっちゃって…好きな人にそう言ってもらえるなんて羨ましいわねぇ…」

 か、母様が見てる前でサラリとそんなことを言ってのけるなんて…テオ、恐ろしい人……







「ママ、街の中に入ったの!」

「そうだね、雪が降ってても賑やかなものだねぇ~」

 雪がちらつく寒空であっても、王都の街中はとても活気に満ちていた。

 私達はこのまま王城に向かうが、ティダ兄、姉さん、リィナは門前広場のところで姉さんの実家から迎えが来ていたのでそこで別れた。

 父さんは私達と一緒に王城に向かうのだが、「こんなボロ馬車で王城に入っちまっていいのか?」なんて言ってた。
 だったら馬車は預けてこっちに乗れば良いのに…って言ったんだけど、それは嫌みたい。
 まったく…




 そうして私達は綺麗に除雪されたメイン通りを進んで行く。
 活気に溢れた商業地区…閑静な住宅街…貴族街を抜け、いよいよ王城に到着するのであった。

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