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第十幕 転生歌姫と忍び寄る戦火

第十幕 16 『雪中の戦い』

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 襲撃に備えて陣形を整え、警戒しながら進む。
 街道の両側の斜面は森林になっていて、襲撃者が隠れる場所はいくらでもありそうだ。


「さて…狙いが私達なら、何処で仕掛けてくるか…」

「殺気が高まってるような雰囲気を感じます。おそらく、もう間もなく…」

 私の呟きにケイトリンが答える。
 彼女は私達の護衛のため一緒に馬車の中だ。






 もうすぐ問題の場所に差し掛かろうとしたとき、目を瞑って感覚を研ぎ澄ましていたケイトリンが、カッと目を開いて警告を発する!

「来ますっ!!」

 そして馬車から飛び出して大声で叫ぶ!

「総員警戒!!襲撃来るよっ!!」

 ケイトリンの警告によって全員が防衛体勢になった…と同時に無数の矢が両側から飛来する!!


「母様!!」

「ええ![暴風結界]!!」

 既に詠唱を済ませていた母様が馬車から身を乗り出して、待機状態だった魔法を発動させる!

 ビュォーーッ!!

 猛烈な風の結界が私達一行を護るように吹き荒れ、飛来した矢の尽くを吹き散らした!!


 よし、これで弓矢の攻撃はほぼ無効化出来る。


 暫くは弓矢による攻撃が続く。
 魔法による攻撃が無いところを見ると、どうやら敵方に魔道士は居ないみたいだ。
 一応、対魔法結界の準備もしていたのだけど。

 そうすると…敵は野盗の類か?
 かなり大規模のようだが……
 いや、考えるのは後だ。
 今はとにかく襲撃を凌がなければ!



 そして、暫く続いた矢の攻撃がピタリと止む。
 暴風に阻まれて無駄だということを悟ったのだろう。
 さて、次はどう来る?

 次の攻撃に備えて身構えていると…



 ウォーーーッ!!!!

 両側の森の中から雄叫びを上げながら襲撃者が現れた!

 見た感じは野盗の類っぽいが…かなりの人数だ。
 
 私達は人数こそ向こうよりも多いように見えるが、半分は非戦闘要員で後方に避難してもらっている。
 リィナやミーティアもそっちだ。
 なので、戦闘要員としてはレーヴェラントの護衛隊の人達と合わせても50名弱と言ったところだ。

 対する襲撃者はそれよりも多く見える。
 それに、まだ森の中に伏兵がいるかもしれない。
 正規兵中心で精鋭揃いであるとは言え、決して油断は出来ないだろう。



「貴様ら何者だ!?この方々がどなたかと知っての狼藉か!!」

 ライセン隊長が誰何の声を上げるが、敵はお構いなしにこちらに雪崩込んでくる!

 そして、瞬く間に第一陣が接敵、あっという間に混戦となった!



 ちっ…!
 これでは大きい攻撃魔法が使えない…
 味方も巻き込んでしまう。

 仕方がないので初中級クラスの単体攻撃魔法で地道に支援することにする。
 姉さんもそれは同じだ。


「うおーーーっ!!」

「させるかぁっ!!」

 ザスッ!!

「ぐあぁぁーーっ!!?」

 集団を抜けてきた敵が私に迫ってきたが、それはケイトリンが一刀のもとに斬り伏せた。

 やっぱり敵の狙いは私達……いや、私か!!


「ケイトリン!!」

「分かってます!!みんな!!敵の狙いはカティア様だ!!絶対にお護りするぞ!!」

「「「応!!!」」」


 寒いのなんのと言ってられないから流石に毛布は被ってないけど、それでも動きにくい格好だから派手な立ち回りはし難い。
 それでもある程度は自衛できるけど、これだけの人数に一斉に来られたら防ぎきれるか…

 人数的な不利はあるが、幸いにもこちらの方が練度は高く、父さんやティダ兄もいるので今のところは凌ぐことが出来ている。



「これは、野盗なんかじゃないですね…統制が取れている」

 それはそうだろう。
 野党程度ならこの程度の人数差で膠着状態になるなどありえないだろう。
 だが、それを詮索している余裕もない。
 出来れば何人かは生かして、裏で手を引いている者の情報を聞き出したいところだが…手加減してやられたのでは本末転倒だ。


 私は単発攻撃ではあまり支援にならないと判断し、手を変えることにした。

 心を落ち着け、神経を集中させる。

 そして、戦場に歌声が響く。


 かつてブレゼンタムでの魔軍襲来の時に味方を鼓舞し、その能力を大幅に引き上げた私の固有スキル[絶唱]。






「おお!カティアの[絶唱]か!!よし、押し切るぞ!!!」

「蹴散らすぞ!!」

 効果は直ぐに現れて、父さんとティダが縦横無尽に暴れ回り、それに味方も続く。


 膠着状態が破られ、戦況は一気に私達が有利になる方向へと傾くのだった。
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