【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
上 下
287 / 683
第十幕 転生歌姫と忍び寄る戦火

第十幕 7 『衝撃』

しおりを挟む

『私の名前はリュート。世間では賢者などと言われているが…まあ、そんな大仰な名を貰うほど大層な者ではない。…さて、この部屋に入ることが出来、この言葉を理解できる者。つまり、君、あるいは君たちは…』

 あまりの事態に頭が混乱する。
 ありえない事が起きている。

 突如として部屋に現れた男性。

「!?すけてるのっ!!おばけっ!?」

「ミーティアちゃん、落ち着いて。お化けじゃ無いと思うよ。…何かは分からないけど」

 …リィナ、ナイスフォロー。

 よく見れば男性の体は透けて見え、実体では無いことが分かる。
 つまり、これは立体映像だ。


 しかし、私が驚いているのはそんな事ではない。


「…?一体どこの言葉じゃ?大陸のものでは無いぞ」

「聞いたことがないですね…」

「神代語とも響きが違うわ~」

 分からないのは当然だろう。
 何せ、これは……


『きっと日本からの転移者。あるいは転生者なのだろう』

 そう。
 この世界では、おそらく私とレティしか理解することが出来ない言葉。
 すなわち、日本語。


 だが、その事実すらも私がここまで衝撃を受けている理由ではない。


 私が最も衝撃を受けているのは、その姿。
 そして『リュート』と言う名も。


 リュート…リュウト…りゅうと。
 琉斗。


 その姿。
 その名。

 この男性は……前世の『俺』じゃないか!!

 記憶にある『俺』の姿よりは幾つか歳をとっているようだが、見紛うはずもない…



 私の驚愕をよそに、映像の男性は話を続ける。
 あくまでも唯の記録映像に過ぎず、こちらを認識した上で喋っている訳ではないようだ。


『もう予想は付いてるだろうが私も日本からこの世界に転移した者だ。どうやってこの世界に来たのかはさっぱり分からないが……何故か寝たきりだったはずの身体もすっかり良くなって』

 …寝たきりだったと言う境遇も同じ。
 やはり、この男性は『俺』なのか?
 じゃあ、この私の『俺』の記憶は何なのか?

 分からない…
 もしかしたら、リル姉さんが何か知ってるのか?


『私は西暦20XX年の日本からやってきた。そして、君たちが知っているかどうかは分からないが、この世界は私がやっていたゲームに似ている。いや、正確に言えばゲームの舞台となる世界の過去に似ているということなのだが』

 …間違いない。
 やはりこの男性は『俺』だ。
 万が一違うとしても無関係のはずがない。

 しかし、20XX年…私の中の『俺』の記憶よりも5年先だ。
 …いや、そもそも『俺』はいつ死んだんだ?
 前世で最後に覚えている記憶から、その時に死んだものと思っていたのだが…いつ、どうやって死んだのかを覚えていない。


『もし、この世界がゲームの世界と同じ…あるいは何らかの関係がある世界であるのなら…この先の未来、いま私が生きているこの時代よりも遥か遠い未来で、恐るべき事態が起きる可能性がある』


 恐るべき事態…それは一体?
 ゲームのイベントと何か関係があるのか?

 私が知る限りにおいて、最も脅威となりそうなゲームのイベントと言えば、それはグランドクエスト……つまり、魔族の台頭。
 いま、まさにその状況が起こりつつあるのだが…

 いや、300年前には既に魔王と言う存在が現れている。
 もっと大局的で破滅的な何かを指しているような…そんな気がする。


『私は出来ればそれを阻止したいと思っているが、残念ながら正確に予見することができない。本当にそれが起きるのかさえも、だ。今この時代で誰かにこの話をしても、悪戯に混乱させてしまうだけだろう』


 本人さえ確証が持てない事柄なら、そうなるだろう。


『だから、せめて同じような境遇でこの世界に来たかもしれない君たちならば…同じ危機感を共有してくれるかも知れない。そう思ってこの部屋とこの記録を残すことにした。さらに詳しい話は書物に纏めてある。この記録映像が終わったら書棚を確認してほしい。日本語で記述しているから直ぐに分かるはずだ』


 転移・転生してくるのが日本人だけとは限らないと思うけど…
 この男性が『俺』と同じ人物なんだとしたら、しょうがないか。
 詳しい記録として残せるほど英語とかが得意なわけではないからね…


『君、あるいは君たちがどう言う境遇なのかは分からないが、願わくば、どうかこの世界でも幸せに生きて欲しいと思う。そして、可能ならこの世界の未来を護って欲しい。私も、残された生で可能な限りのことをしよう』


 それを最後の言葉に、映像は消えてしまった。















「消えた…」

「何がなんだかさっぱりじゃったな…」

「ん~…何だったのかしらね~」

「言葉が分からなければ何も分からないわよね。…?カティア、どうしたの?怖い顔をして……あなた、まさか…今の言葉が分かったの!?」


 私は未だ衝撃から抜け出せず、母様のその問いに直ぐに答えることが出来なかった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...