上 下
268 / 683
第九幕 転生歌姫の学園生活

第九幕 41 『撃退』

しおりを挟む

「ステラ、援護をお願いね!…いくよ!相棒ポチっ!」

「任せてください!」

「アオンッ!」


 ステラの銀矢が炎狼を牽制してその動きを制限したところに、私とポチが飛び込んでいく。


「せぃやあーっ!!」

 先に炎狼のもとに到達した私が先ず斬り上げの一撃を放つ!
 先程とは違って、仲間のフォローがあるので思い切って攻撃することができる。

 ビュオンッ!

 炎狼はそれを後方に跳んで躱し、私の攻撃は空を切ったが…

「オオンッ!」

 躱した先にはポチが回り込んでおり、その鋭い爪を振るった!

 ザシュッ!!


 その一撃は首筋を掠めてダメージを与えるが、それはまだ致命傷には程遠い。
 既の所で回避行動をとられたね。


 だが、間髪入れずに私が追撃を行う!

 初撃を躱された瞬間に、ポチがフォローしてくれるのを見越して次の攻撃動作に入っていたのだ。

「ハァッ!!」

 ザンッ!!

 初撃の斬り上げから繋がる、一歩踏み込んでの斬りおろしの二撃目が、炎狼の前肢を斬り裂いた!

『ギャウッ!!』


 よし!
 これで機動力を削ぐことが出来ただろう!

 あとはこのまま畳み掛けて……


 ゾクッ…!

 !?
 何っ!?

 首筋に悪寒を感じ、直感に従ってその場から退避する!

 バシュッ!!

 すると、直前まで私の居た場所に突如として灼熱の火球が現れた!


「ま、魔法!?」

 原初魔法か!!

 人間が使う理論的に体系化された詠唱魔法(根本的な発動プロセスが同じ無詠唱魔法も含む)とは異なる、先天的な能力による魔法行使。
 魔物の一部はこの原初魔法を使う事があるが、その使い手はそれほど多くはない。

 ここで切り札を切ってくるとは…


 それにしても、炎系統の魔法か。
 見た目もそれっぽいし、正しく『炎狼』だったと言う訳か。
 やはり、もうルビーウルフとは別種の魔物と言えるだろう。


 このままヤツに魔法を使わせたら、森林に延焼しかねない。
 山火事なんかになったら目も当てられないよ…

 そんな私の思いとは裏腹に、炎狼が生み出した火球はどんどん大きくなって、そこから炎の弾を無差別に撃ち出し始めた!


「ちょっ!?ホントにマズイって!!森の中で炎の魔法なんか使わないでよっ!!」

 そんなことを言っても理解してくれるはずもなく。
 炎弾が乱れ飛ぶ中、炎狼は形勢逆転とばかりに反撃を開始する!

 前肢に傷を負ったため、そのスピードはかなり落ちてはいるものの、魔法を組み合わせた攻撃は侮れない。

 私とポチは、炎をかいくぐりながらも炎狼の攻撃を躱す事に専念せざるを得なかった。

 だけど…こっちにはもう一人いるんだからね!

 何度目かの攻撃を躱したタイミングで、私は密かに準備していた攻撃魔法を放つ!

「[雷槍]!!」

 バリバリバリッ!!

『ギャウンッッ!?』

 [雷矢]では効果が薄かったので、もう一段階上位の雷撃魔法だ。
 流石に上級を詠唱する余裕がなかったのでこの程度の魔法しか使えなかったが、多少は足止めになるはず!

 あとは…


「ステラ!お願いっ!!」


「ええっ!!『閃矢穿牙』!!」

 私の合図に応え、ステラが白銀の光を纏う矢を放つ。
 何本もの銀矢が束ねられたそれは、まるでレーザーのように光の軌跡を残しながら炎狼を貫く!


『ギャウッッッ!!!』

 光の矢は炎狼の巨体を貫いて大きな穴を穿った!

 直前で回避行動を取ったので、やや中心を外したが、大ダメージは必至だ。


「これで止め!!」

「ゥオンッ!!」

 そして、動きが完全に止まったところを狙って、間髪入れずに私の剣とポチの爪が炎狼の首に吸い込まれる!

 ザンッ!!
 ザシュッ!!

 交差する斬撃が炎狼の首を斬り落した!



 そして、首を失った巨体はゆっくりと傾いていき……


 ズズーン……!


 ついには地に倒れ伏すのであった。











「ふぅ……ようやく倒せたね。疲れた~……って、休んでる場合じゃないね」

 こっちは倒せたが、他のルビーウルフたちはどうなったか…

「カティア様、ご無事ですか!?」

 ちょうどタイミングよくケイトリンとオズマがやって来た。

「大丈夫だよ。ステラのおかげで助かったよ」

「カティアの力になれて良かったわ」

 ステラとポチがいなかったら…私一人では食い止めきれず、結界を破られて学生に被害が出ていたかも知れない。
 ちょっと慢心していたのかも…そこは反省しなきゃね。


「二人がこっちに来たってことは、ルビーウルフたちは倒せたの?」

「大体は倒しましたが、リーダーがやられたのを察知した何匹かは逃げられてしまいました」

「そっか…まあ、深追いは出来ないしね。それに、痛い目にあったから暫く人を襲う可能性も低い…かな」

「そう思います」

 獲物として割に合わないと言う事を覚えただろうし、群れの数も相当減ったし、リスクは殆ど無くなったとは思うのだけど。

「あ、それよりも!怪我人は出ていない?」

「多少、前衛を張ってた冒険者に軽傷者がいるくらいですね。学生さんたちは無傷です」

「そう。それなら良かった。あ、負傷者は私が魔法で治療を…」

「それなら既にメリエル様が治療に当たっておられます。それほど負傷者の人数も居ないので、すぐに終わると思いますよ」

 ああ、流石はウィラー…リナ姉さんのシギルを受け継ぐ王家出身だから治癒の魔法は得意なのかもね。


 これで一先ずは安心かな。
 引き続き警戒は必要だけど、あとは予定通り見張りを交代しながら夜を過ごせば良いだろう。



 だけど、寝る前に…

 ポチをモフらねば!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

男女比崩壊世界で逆ハーレムを

クロウ
ファンタジー
いつからか女性が中々生まれなくなり、人口は徐々に減少する。 国は女児が生まれたら報告するようにと各地に知らせを出しているが、自身の配偶者にするためにと出生を報告しない事例も少なくない。 女性の誘拐、売買、監禁は厳しく取り締まられている。 地下に監禁されていた主人公を救ったのはフロムナード王国の最精鋭部隊と呼ばれる黒龍騎士団。 線の細い男、つまり細マッチョが好まれる世界で彼らのような日々身体を鍛えてムキムキな人はモテない。 しかし転生者たる主人公にはその好みには当てはまらないようで・・・・ 更新再開。頑張って更新します。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

処理中です...