【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
上 下
200 / 683
第七幕 転生歌姫と王都大祭

第七幕 エピローグ 『祭のあと』

しおりを挟む

「よう、姫さん。それにアンタは…シフィルだったか」

「あ、ラウルさん、こんばんは!」

 シフィルと話をしていると、ラウルさんが声をかけてきた。
 既にお酒を飲んでほろ酔い気分って感じ。
 いいなぁ…


「昨日の敵は今日の友ってか?」

「そうですね。全力でぶつかったあとには友情が芽生えるものなんですよ」

「ははっ!違いねえ!」

「ふふっ、何よそれ。でも、カティアと友達になれたのは良かったわ」


「おう、お前ら。お疲れさん」

 と、更に声をかけてきたのは父さんだ。
 ワインのグラスと、大量の料理が乗った皿を持っている。
 もう、そんなにがっつかないでよ…恥ずかしいじゃない。

「あ、大将!解説お疲れ様っす」

「こんばんは、ダードレイさん」

「父さんも呼ばれてたの?」

「おう。解説やったんで一応関係者扱いってことでな。堅苦しくないパーティだっつーから、美味いもん食いにな」

「そっか。あれ?じゃあ、姉さんも来てたりするの?」

「ああ。ほれ、あそこで王妃サマと話をしてる」

「あ、ホントだ。…イースレイさんとは話しないのかな?」

「何か避けてるみてえだがな…まあ、落ち着いたところで話はするらしいが。ほれ、嫁に代わってティダだんなの方が話をしてるみてえだ」

 と、父さんが指差す方を見ると、確かに二人が話をしているのだが…

「…すっごく深刻そうな顔」

「…ティダもそんなに饒舌な方じゃねえからな。会話成立すんのか、アレ」

 あそこだけ何とも言えない重圧感があるよ。

 姉さんって駆け落ち同然でティダ兄についてきたって聞いてたから、家族の話は聞けなかったんだよね…


「ま、ティダのアニキはしっかりしてるし、大丈夫っしょ!」

「…ああ、そうだな。ところでお前たち、なかなかの試合を見せてくれたじゃねえか」

「いや~、まだまだっすよ。もっと修行して、次こそは姫さんに勝たねぇと」

「それは私も同じですね。結果だけ見れば一回戦敗退でしたし…私は幸いにもカティアとは学園で一緒になるらしいので、再戦の機会は何度かありそうですけど」

「お?なんだ、お前さん…シフィルだったか。学園に入学すんのか?」

「ええ。さっきもカティアとその話をしてたんです」

「そうか。じゃあ、コイツのことよろしく頼むわ。仲良くしてやってくれ」

「…何だかすごく父親らしい事言ってる」

「…失礼なやつだよな、お前」

 普段が普段なもんで。


「俺からも宜しく頼むぞ」

 いつの間にか父様と母様が近くまで来ていた。
 何だろ、対抗心みたいな…

「陛下…もちろん、カティア様とは友人として仲良くさせて頂きたいと思っております」

「ふふ、カティアのお友達になってくれてありがとう。良かったわね、カティア。入学前にお友達が増えて、あなたも心強いでしょう?」

「はい、母様。あとは試験を頑張ります」

 レティ、ルシェーラ、それにステラもいるし。
 入学前にこれだけ友人が出来たのは本当に心強い。
 学園生活が楽しみだ。





 その後も色々な人と交流したり、最後には私が歌を披露して盛り上がったり。
 楽しいひとときはあっという間に過ぎ去って、パーティは終わりとなる。

 そして、それは長かった祭の終わりでもあった。



















 一週間に渡って行われた武神祭が終ってはや数日、祭のあとのあの何とも言えない寂しさも既に感じなくなり、街はすっかり普段の生活に戻っている。
 こうして街中を歩いていると、あの賑やかさが懐かしくもある。


「もうすっかり日常だねぇ…」

「そうだな」

「また来年のお楽しみだね。また一緒に見て回ろうね」

「ああ、もちろんだ」

 今日はカイトとお出かけだ。
 ミーティアは父さんたちに預けて二人きり…ではなく、少し離れて護衛の二人も付いてきてる。
 まあ、それにもすっかり慣れたので、もう気にはならない。


「本当に、楽しかったな……そうだ!来年はカイトも武神杯に出ようよ!」

「…俺もか?」

「ありゃ?余り乗り気じゃないみたいだね。カイトなら上位入賞間違いなしだと思うのに…」

「あれを見せられるとな…俺もシギルを発動しなければ太刀打ちできないだろ」

「そうかなぁ?素の状態同士なら良い勝負だと思うけど…」

「まあ、考えておくよ。……願わくは、来年の今頃は何の憂いもなく祭りを楽しめるといいな」

「うん、そうだね…」

 そんな風に、祭の思い出話と未来の話を語り合いながら街を歩く。




 祭の終わりと共に季節は移ろいゆく。
 肌を刺すかのようだった日差しは次第に柔らかなものになり、街角を抜ける風も少しだけ冷たくなってきている。

 もうすぐ『学園』の試験を受験して…それに合格すれば、秋には私も学園の生徒になる。

 レティやルシェーラ、ステラ、シフィルとの学生生活が今から楽しみである。

 しかし、未だ不穏な連中の正体や目的が判然としない状況でもある。
 このまま平穏に何事もなく…というのは虫の良い話だろう。




 武神杯では諦めない心が、不利な状況をも打破して勝ち進むことができた。

 これからあるかもしれない戦いでも同じことだろう。



 諦めなければきっと道は拓ける。

 不安はあるが…そんな思いと、未来への希望を抱きながら、これからも進んでいこうと思うのだった。





ーー 第七幕 転生歌姫と王都大祭 閉幕 ーー
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

私はただ自由に空を飛びたいだけなのに!

hennmiasako
ファンタジー
異世界の田舎の孤児院でごく普通の平民の孤児の女の子として生きていたルリエラは、5歳のときに木から落ちて頭を打ち前世の記憶を見てしまった。 ルリエラの前世の彼女は日本人で、病弱でベッドから降りて自由に動き回る事すら出来ず、ただ窓の向こうの空ばかりの見ていた。そんな彼女の願いは「自由に空を飛びたい」だった。でも、魔法も超能力も無い世界ではそんな願いは叶わず、彼女は事故で転落死した。 魔法も超能力も無い世界だけど、それに似た「理術」という不思議な能力が存在する世界。専門知識が必要だけど、前世の彼女の記憶を使って、独学で「理術」を使い、空を自由に飛ぶ夢を叶えようと人知れず努力することにしたルリエラ。 ただの個人的な趣味として空を自由に飛びたいだけなのに、なぜかいろいろと問題が発生して、なかなか自由に空を飛べない主人公が空を自由に飛ぶためにいろいろがんばるお話です。

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

TS転移勇者、隣国で冒険者として生きていく~召喚されて早々、ニセ勇者と罵られ王国に処分されそうになった俺。実は最強のチートスキル持ちだった~

夏芽空
ファンタジー
しがないサラリーマンをしていたユウリは、勇者として異世界に召喚された。 そんなユウリに対し、召喚元の国王はこう言ったのだ――『ニセ勇者』と。 召喚された勇者は通常、大いなる力を持つとされている。 だが、ユウリが所持していたスキルは初級魔法である【ファイアボール】、そして、【勇者覚醒】という効果の分からないスキルのみだった。 多大な準備を費やして召喚した勇者が役立たずだったことに大きく憤慨した国王は、ユウリを殺処分しようとする。 それを知ったユウリは逃亡。 しかし、追手に見つかり殺されそうになってしまう。 そのとき、【勇者覚醒】の効果が発動した。 【勇者覚醒】の効果は、全てのステータスを極限レベルまで引き上げるという、とんでもないチートスキルだった。 チートスキルによって追手を処理したユウリは、他国へ潜伏。 その地で、冒険者として生きていくことを決めたのだった。 ※TS要素があります(主人公)

亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。

円城寺正市
ファンタジー
勇者が行方不明になって数年。 魔物が勢力圏を拡大し、滅亡の危機に瀕する国、ソルブルグ王国。 洞窟の中で目覚めた主人公は、自分が亡霊になっていることに気が付いた。 身動きもとれず、記憶も無い。 ある日、身動きできない彼の前に、ゴブリンの群れに追いかけられてエルフの少女が転がり込んできた。 亡霊を見つけたエルフの少女ミーシャは、死体に乗り移る方法を教え、身体を得た彼は、圧倒的な剣技を披露して、ゴブリンの群れを撃退した。 そして、「旅の目的は言えない」というミーシャに同行することになった亡霊は、次々に倒した敵の身体に乗り換えながら、復讐すべき相手へと辿り着く。 ※この作品は「小説家になろう」からの転載です。

TS転生大魔導士は落ちこぼれと呼ばれる

O.T.I
ファンタジー
 王立アレシウス魔法学院。  魔法先進国として名高いフィロマ王国の中でも最高峰の魔導士養成学校として揺るぎ無い地位を確立している学院である。  古の大魔導士アレシウス=ミュラーが設立してから千年もの歴史を刻み、名だたる魔導士たちを幾人も輩出してきた。  フィオナは、そんな由緒正しきアレシウス魔法学院の一年生に所属する15歳の少女。  彼女は皆から『落ちこぼれ』と馬鹿にされていたが、とある秘密を持っていた……

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

処理中です...