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幕間
幕間7 『ケイトリン』
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私は今、目の前に繰り広げられている光景を感慨深く眺めている。
ステージの上に立つ彼女は圧倒的な存在感で見る者を魅了してやまない。
誰もが彼女の一挙手一投足に目を離せない。
私は代々続く騎士の家系の次女として生まれ、幼い頃より訓練を重ねてきた。
明確な目標に向かって努力し、頑張れば頑張るほどにどんどん力が付く。
挫折らしい挫折もなく、思えばその頃が一番充実していたと思う。
だから騎士になったのは自然な流れだったし、そこに疑問を抱いたことはなかった。
だけど、実際に騎士団に入団してみると、何となく思い描いていた華やかなイメージとは違って、日々の地味な訓練、なんの意味があるのかもよく分からない事務仕事ばかり。
たまに出動があっても喧嘩の仲裁とか…せいぜい近郊に迷い込んだ魔物の駆除くらい。
いや、実際には何回か大きな任務もあって、そこで自分の実力も示せたし、同僚や先輩たちの信頼も得ることが出来たと思うけど…そんな事は早々あるものではない。
戦争なんて起きて欲しいなどとは微塵も思わなかったけど、こう…もう少し日々の刺激が欲しいなぁ、と。
そんな贅沢な悩みを抱えていた。
他の人からすれば、そんなのは悩みなんて言うほどのものでは無いと思うのだけど。
そんなわけで、入団当初の頃こそ真面目に取り組んでいたものの新たな目標も見い出せず…モチベーションが下がるのにそれ程時間はかからなかった。
同期のオズマも結構気が合うと思ったのだが、早々に騎士を辞めてしまった。
まあ、彼の場合はモチベーション云々ではなくて、家族の面倒を見るために時間の融通があまり効かないのがネックだったみたい。
私も騎士を辞めて冒険者にでもなろうかな?なんて思いながらも、決定的な理由があるわけでもなく…結局ズルズルと辞められずにいた。
カティア様に初めて出会ったのはそんな時だった。
リッフェル領の不穏な噂の真実を確かめるために潜入捜査をする事になったのだが、私に白羽の矢が立った。
…いや、そう言うのってフツー暗部の仕事じゃね?
そう思ったけど、リュシアン様たってのお願いだったので引き受けることにした。
リュシアン様は私の実力を高く評価してくださり、私が中々辞められないのは、彼に恩を感じているからでもある。
私は自分で言うほど自分が優秀だなんて思っておらず(いや、ホントに!)、でもそんな私を必要としてくれるのは純粋に嬉しかった。
そして、リッフェルにレジスタンスとして潜入してしばらく経ったある日、王都に向かう旅の途中で立ち寄ったダードレイ一座に接触を図った。
その時カティア様に初めてお会いしたのだが…
まず最初の感想は、何て綺麗な娘なんだろう…と。
そして、ただ綺麗なだけではなく目を惹きつけてやまない不思議な魅力を感じたのだった。
今思えば、その時から既に王家のカリスマの様なものを備えていたのだろう。
そんな、ともすれば気後れしそうなオーラを持った彼女も、話をしてみればそんな事は吹き飛んでしまい、ますます彼女の魅力に惹き込まれることになるのだ。
結局、彼女の出自がイスパルの王家にあると知って妙に納得したものだ。
そして、私にとって初めての感情が芽生えた。
即ち、私はこの方にお仕えするために騎士になったのだ、と。
…気恥ずかしいのでそんな素振りは見せてないんだけど、私はすっかり彼女に魅了されてしまったのだ。
そして、それはその後も一緒に行動するうちに更に大きなものになるのだった。
今、私の目の前には民の歓声に応えて笑顔で手を振るカティア様の姿が。
少し薄暗い劇場の中、照明に照らされて煌めくステージ衣装と、それに劣らぬ星の光の如く輝く長い髪。
ため息が出るほどの美しい姿に見惚れそうになるが、自分の職務を思い出して改めて気を引き締める。
幼馴染のマリーシャからは肉壁になってでもお守りしなさい!なんて言われたが…そんな事は言われるまでもない。
彼女を狙う不穏な者がいる。
疑惑はあっても、まだ確証にまでは至っていない。
だが、誰が黒幕であろうとも決して思い通りになどさせない。
あの方はきっとそんな事は望まないと思うけど、例え命に代えてでも、あの方をお守りするのは私の役割だ。
そんな決意を胸に秘め…少し恥ずかしそうに、でもしっかりと笑顔で手を振って応えるカティア様を視界の端に収めつつ、私は会場に目を光らせるのだった。
ステージの上に立つ彼女は圧倒的な存在感で見る者を魅了してやまない。
誰もが彼女の一挙手一投足に目を離せない。
私は代々続く騎士の家系の次女として生まれ、幼い頃より訓練を重ねてきた。
明確な目標に向かって努力し、頑張れば頑張るほどにどんどん力が付く。
挫折らしい挫折もなく、思えばその頃が一番充実していたと思う。
だから騎士になったのは自然な流れだったし、そこに疑問を抱いたことはなかった。
だけど、実際に騎士団に入団してみると、何となく思い描いていた華やかなイメージとは違って、日々の地味な訓練、なんの意味があるのかもよく分からない事務仕事ばかり。
たまに出動があっても喧嘩の仲裁とか…せいぜい近郊に迷い込んだ魔物の駆除くらい。
いや、実際には何回か大きな任務もあって、そこで自分の実力も示せたし、同僚や先輩たちの信頼も得ることが出来たと思うけど…そんな事は早々あるものではない。
戦争なんて起きて欲しいなどとは微塵も思わなかったけど、こう…もう少し日々の刺激が欲しいなぁ、と。
そんな贅沢な悩みを抱えていた。
他の人からすれば、そんなのは悩みなんて言うほどのものでは無いと思うのだけど。
そんなわけで、入団当初の頃こそ真面目に取り組んでいたものの新たな目標も見い出せず…モチベーションが下がるのにそれ程時間はかからなかった。
同期のオズマも結構気が合うと思ったのだが、早々に騎士を辞めてしまった。
まあ、彼の場合はモチベーション云々ではなくて、家族の面倒を見るために時間の融通があまり効かないのがネックだったみたい。
私も騎士を辞めて冒険者にでもなろうかな?なんて思いながらも、決定的な理由があるわけでもなく…結局ズルズルと辞められずにいた。
カティア様に初めて出会ったのはそんな時だった。
リッフェル領の不穏な噂の真実を確かめるために潜入捜査をする事になったのだが、私に白羽の矢が立った。
…いや、そう言うのってフツー暗部の仕事じゃね?
そう思ったけど、リュシアン様たってのお願いだったので引き受けることにした。
リュシアン様は私の実力を高く評価してくださり、私が中々辞められないのは、彼に恩を感じているからでもある。
私は自分で言うほど自分が優秀だなんて思っておらず(いや、ホントに!)、でもそんな私を必要としてくれるのは純粋に嬉しかった。
そして、リッフェルにレジスタンスとして潜入してしばらく経ったある日、王都に向かう旅の途中で立ち寄ったダードレイ一座に接触を図った。
その時カティア様に初めてお会いしたのだが…
まず最初の感想は、何て綺麗な娘なんだろう…と。
そして、ただ綺麗なだけではなく目を惹きつけてやまない不思議な魅力を感じたのだった。
今思えば、その時から既に王家のカリスマの様なものを備えていたのだろう。
そんな、ともすれば気後れしそうなオーラを持った彼女も、話をしてみればそんな事は吹き飛んでしまい、ますます彼女の魅力に惹き込まれることになるのだ。
結局、彼女の出自がイスパルの王家にあると知って妙に納得したものだ。
そして、私にとって初めての感情が芽生えた。
即ち、私はこの方にお仕えするために騎士になったのだ、と。
…気恥ずかしいのでそんな素振りは見せてないんだけど、私はすっかり彼女に魅了されてしまったのだ。
そして、それはその後も一緒に行動するうちに更に大きなものになるのだった。
今、私の目の前には民の歓声に応えて笑顔で手を振るカティア様の姿が。
少し薄暗い劇場の中、照明に照らされて煌めくステージ衣装と、それに劣らぬ星の光の如く輝く長い髪。
ため息が出るほどの美しい姿に見惚れそうになるが、自分の職務を思い出して改めて気を引き締める。
幼馴染のマリーシャからは肉壁になってでもお守りしなさい!なんて言われたが…そんな事は言われるまでもない。
彼女を狙う不穏な者がいる。
疑惑はあっても、まだ確証にまでは至っていない。
だが、誰が黒幕であろうとも決して思い通りになどさせない。
あの方はきっとそんな事は望まないと思うけど、例え命に代えてでも、あの方をお守りするのは私の役割だ。
そんな決意を胸に秘め…少し恥ずかしそうに、でもしっかりと笑顔で手を振って応えるカティア様を視界の端に収めつつ、私は会場に目を光らせるのだった。
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