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本編

会いたい

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「美優、風邪ひかないようにゆっくり休むんだぞ。伊織、美優の事よろしく頼むな」

「……」

結局、大ちゃんに手を引かれ私は自宅へと送り届けられた。
ムッと睨むくらい許して欲しい。

「そんなに怒るなって。俺は美優が心配なんだ。わかるだろ?」

「……私の話も聞いて欲しかった…」

大ちゃんは曖昧な笑顔で私の頭を一撫でして、鞄を伊織に渡し帰っていった。

「伊織、鞄貸して」

「ダメ。先に風呂入ってこい」

「ちょっとスマホ確認するだけだから」

「ダメだよ。大智君から話は聞いてる。美優はすぐ体調崩すんだから、お風呂で温まってきて」

伊織は目も合わさず私の鞄を持って部屋に入ってしまう。

あんな状況で蓮を置き去りにしてしまったからすぐに連絡をしたかったのに、帰り道大ちゃんは一度も私に鞄を持たせてくれなかった。スマホ見たいって言っても笑顔で却下されるし。
帰宅してからも鞄が大ちゃんから伊織へとパスされただけで、私の手元には無い。

そういえば以前もこんな事があったな。
私が小学2年生くらいの時、近所の大学生のお兄さんと仲良くなってお家にお菓子を食べに行った事がある。
私はお兄さんと一緒に仲良く話していただけなのに、大ちゃんと伊織と由妃ちゃんが突然やって来て、有無を言わさず大ちゃんに連れ帰られた事があった。

あの時も、大ちゃんは笑顔で『美優の為だよ。美優が心配なんだ。』としか言ってくれなくて、どうしてお兄さんと仲良くしちゃダメなのか教えてくれなかった。
結局その後、お兄さんは引っ越してしまったのか会う機会は無かった。謝りたかったのにな…。


はぁ…しょうがない。お風呂入ろ……。
蓮、ちゃんと家に帰ったかな?


ーーーーーーーーーーーーーー・・・
ーーーーーーーーーーー・・・

お風呂上がり、ようやく鞄を返して貰った私は早速スマホを確認した。

「うそ…すごい数……」

スマホの画面に表示される着信とtalkアプリのメッセージ数がどちらも3桁になっていて、何事かとびっくりする。

恐る恐るtalkを開くと、蓮から大量のメッセージが来ていた。『ごめんなさい』『会いたい』『嫌いにならないで』が繰り返し送られてきている。

ーー・・ブーブーブー!

手の中のスマホが着信を告げて震える。

「わっ、わ……あ、もしもし…」

「美優?よかった…やっと出てくれた…」

「ごめんなさい、今やっとスマホ見て…」

「そっか、嫌われちゃったかと思ってずっと不安だった。よかった…。…美優お願い…会いたい…」

「え…今?」
日が落ちて外はすっかり夜。

「うん…美優の家の近くの公園に居るから、ちょっとだけでいいから…お願い…」

弱々しい蓮の声は少し震えていた。
もしかしたらずっと待っていたの?

「わかった。直ぐに行くから待ってて」




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