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本編
誤解
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「美優…」
「れ……ぁ、相澤君…。どうして…」
電気も消え、誰も居ないと思っていた教室の中から急に声をかけられてびっくりした。
蓮は何故か私の席に座っており、酷く冷たい視線をこちらに向ける。
ガタン
と音を立て、椅子から立ち上がった蓮は無言でこちらに近付いてきた。
明らかに怒っている形相に、その場から動けないでいると、蓮はこちらを見下ろすように目の前に立つ。
「美優、悪い子だね」
「え………?」
「とりあえずソレ脱いで。ブレザーも」
トンと人差し指で胸元を押され、佐藤君が貸してくれたカーディガンの事を言っているのだと気付き、慌ててカーディガンを脱いだ。
絶対何か勘違いしてるけど…今は言う通りにした方がいいよね。
蓮が私を壁際に押しやる様に立った為、佐藤君と少し距離が開いてしまい、カーディガンを手渡す事が出来ない。とりあえず畳んで机に置いてみた。
これでいい?と恐る恐る目線で問いかければ「ブレザーも、早く脱いで」と冷たく言い捨てられる。
何故自分のブレザーまで脱がなければならないのか解らないけど、蓮にとって何か気に入らないポイントがあるのだろう。怒りと悲しみが混ざった顔をする蓮に反論するのも憚られ、蓮の気持ちが落ち着くならばとブレザーを脱いだ。
蓮は、シャツとスカート姿になった私の耳元に顔を寄せ、クンッと匂いを嗅いでみせる。
「俺意外の男の匂いをつけて…俺を嫉妬させたかったの?お仕置きは後でゆっくりしてあげるから、良い子で待ってて」
そう耳元で囁くと、蓮は私を背中に隠すようにして佐藤君へと向き直る。
「ねぇ、どういうつもり?」
蓮の顔は見えないけれど、一段と冷たい声色に心拍数が上がる。
「どういうって何が?」
対する佐藤君は、訳が解らないといった雰囲気だ。
蓮は佐藤君のカーディガンを乱暴に掴み、グイッと差し出した。
「こういう気遣い、迷惑だから。人の彼女にちょっかい出すのやめてくれる?」
「別にそういうつもりじゃ…」
佐藤君の困り果てた声に、私は蓮の後ろから一歩前に歩み出る。
「れ…蓮。佐藤君は私が寒いって言ったからカーディガン貸してくれただけだよ。ちょっかいとか…蓮が思ってる様な意味は無いよ」
しばしの無言の後、蓮はぐっと言葉を飲み込んでくれた様に思う。
「………。美優、帰るよ。鞄は俺が持つから、コート着てきて」
喧嘩にならなかった事にホッと息をついた。佐藤君をチラリと見れば、笑顔で頷いてくれる。
きっと大ちゃんには上手く話してくれるって事だよね。大ちゃんには悪いけど、今日は蓮と一緒に帰ろう。こんな状態でほっとけないし。
私はブレザーを手に持ち、急いで教室の後ろにあるロッカーにコートを取りに行く。
ガタンッ!!!
「お前っ!ふざけんなよ!!」
蓮の罵声に驚いて振り向くと、佐藤君に掴みかかっていて、何が起こったのか訳がわからない。
「ちょっ…蓮っ!何やってるの?!」
佐藤君の胸ぐらを掴み、今にも殴りかかりそうな蓮に慌てて駆け寄る。
「こいつっ…!!」
マズイ、マズイ、マズイ!
私は蓮が振り上げた拳に「ダメっ!」と腕を掴んだ。
「きゃっ!!」
ガタガタ、バタン!!
身長差があり、非力で運動神経がイマイチな私が格好良く喧嘩の仲裁ができる訳も無く…蓮の肘が肩にぶつかり、バランスを崩し盛大に尻もちをついてしまう。
「美優っ!!」
「い…痛ぁ……」
「おいっ!すごい音が聞こえたけど何が……っ!美優?どうした?大丈夫か?!」
なかなか帰ってこない私達を心配したのか、大ちゃんが教室へ来てくれたようで、タイミングが良いのか…いや、悪いのか…最悪な状況での登場となってしまった。
大ちゃんの顔を見た瞬間、この訳の解らない状況に頭がパンクしそうで、ジワリと涙がにじむ。
「だ…大ちゃんっ……」
「れ……ぁ、相澤君…。どうして…」
電気も消え、誰も居ないと思っていた教室の中から急に声をかけられてびっくりした。
蓮は何故か私の席に座っており、酷く冷たい視線をこちらに向ける。
ガタン
と音を立て、椅子から立ち上がった蓮は無言でこちらに近付いてきた。
明らかに怒っている形相に、その場から動けないでいると、蓮はこちらを見下ろすように目の前に立つ。
「美優、悪い子だね」
「え………?」
「とりあえずソレ脱いで。ブレザーも」
トンと人差し指で胸元を押され、佐藤君が貸してくれたカーディガンの事を言っているのだと気付き、慌ててカーディガンを脱いだ。
絶対何か勘違いしてるけど…今は言う通りにした方がいいよね。
蓮が私を壁際に押しやる様に立った為、佐藤君と少し距離が開いてしまい、カーディガンを手渡す事が出来ない。とりあえず畳んで机に置いてみた。
これでいい?と恐る恐る目線で問いかければ「ブレザーも、早く脱いで」と冷たく言い捨てられる。
何故自分のブレザーまで脱がなければならないのか解らないけど、蓮にとって何か気に入らないポイントがあるのだろう。怒りと悲しみが混ざった顔をする蓮に反論するのも憚られ、蓮の気持ちが落ち着くならばとブレザーを脱いだ。
蓮は、シャツとスカート姿になった私の耳元に顔を寄せ、クンッと匂いを嗅いでみせる。
「俺意外の男の匂いをつけて…俺を嫉妬させたかったの?お仕置きは後でゆっくりしてあげるから、良い子で待ってて」
そう耳元で囁くと、蓮は私を背中に隠すようにして佐藤君へと向き直る。
「ねぇ、どういうつもり?」
蓮の顔は見えないけれど、一段と冷たい声色に心拍数が上がる。
「どういうって何が?」
対する佐藤君は、訳が解らないといった雰囲気だ。
蓮は佐藤君のカーディガンを乱暴に掴み、グイッと差し出した。
「こういう気遣い、迷惑だから。人の彼女にちょっかい出すのやめてくれる?」
「別にそういうつもりじゃ…」
佐藤君の困り果てた声に、私は蓮の後ろから一歩前に歩み出る。
「れ…蓮。佐藤君は私が寒いって言ったからカーディガン貸してくれただけだよ。ちょっかいとか…蓮が思ってる様な意味は無いよ」
しばしの無言の後、蓮はぐっと言葉を飲み込んでくれた様に思う。
「………。美優、帰るよ。鞄は俺が持つから、コート着てきて」
喧嘩にならなかった事にホッと息をついた。佐藤君をチラリと見れば、笑顔で頷いてくれる。
きっと大ちゃんには上手く話してくれるって事だよね。大ちゃんには悪いけど、今日は蓮と一緒に帰ろう。こんな状態でほっとけないし。
私はブレザーを手に持ち、急いで教室の後ろにあるロッカーにコートを取りに行く。
ガタンッ!!!
「お前っ!ふざけんなよ!!」
蓮の罵声に驚いて振り向くと、佐藤君に掴みかかっていて、何が起こったのか訳がわからない。
「ちょっ…蓮っ!何やってるの?!」
佐藤君の胸ぐらを掴み、今にも殴りかかりそうな蓮に慌てて駆け寄る。
「こいつっ…!!」
マズイ、マズイ、マズイ!
私は蓮が振り上げた拳に「ダメっ!」と腕を掴んだ。
「きゃっ!!」
ガタガタ、バタン!!
身長差があり、非力で運動神経がイマイチな私が格好良く喧嘩の仲裁ができる訳も無く…蓮の肘が肩にぶつかり、バランスを崩し盛大に尻もちをついてしまう。
「美優っ!!」
「い…痛ぁ……」
「おいっ!すごい音が聞こえたけど何が……っ!美優?どうした?大丈夫か?!」
なかなか帰ってこない私達を心配したのか、大ちゃんが教室へ来てくれたようで、タイミングが良いのか…いや、悪いのか…最悪な状況での登場となってしまった。
大ちゃんの顔を見た瞬間、この訳の解らない状況に頭がパンクしそうで、ジワリと涙がにじむ。
「だ…大ちゃんっ……」
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