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本編
聞いてないよ…
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「ここだよ」
相澤君に手を引かれやって来たのは駅前に出来た新しいタワーマンションだった。見るからに高級な佇まいに足が引ける。相澤君のお家ってお金持ちだったんだな…。まぁ、うちの高校ってセレブ多いしね。
マンションのエントランスに入る前にマナーとしてコートを脱いだ所、相澤君がギョッとした顔で私を見つめる。
「み、美優!すぐコート着てっ!!」
「え…何で?」
「あぁー、美優お嬢様育ちだからマナーが良いのか…。でも今はダメ!!お願いだから部屋に入るまでコート着て!ほら、行くよ!」
訳が解らずコートをバサッと肩から掛けられて、足早にエレベーターに乗り込む。
ついた先は最上階で、部屋はワンフロアに1つしかなかった。うわぁ…めちゃくちゃ高そう…。
相澤君は乱暴にドアを開けて私を部屋に引きずり込む。
「ちょっ…ちょっと待って、ご家族に失礼だからちゃんと挨拶を…」
グイグイ手を引く相澤君に対して、
玄関で靴を脱ぐ前にご挨拶を、と私は腕を引いた。
「え?俺一人暮らしだよ」
「えぇっ!?何で?!」
「何でって…高校から一人暮らしさせてもらってんの。伊村さんもそうでしょ?」
「確かに由妃ちゃんもそうだけど……あれ?由妃ちゃんが一人暮らしだなんて相澤君に言ったっけ?」
「あ?えーっと、なんか噂で聞いた気がする」
「そうなんだ…。って、そうじゃなくて、何で一人暮らしって言ってくれなかったの?!」
「だって聞かれなかったし」
確かに聞かなかったけれど……っ。
うぅー、これは…どうなの?マズイんじゃない?
一人暮らしの男の人の家なんて初めて…というか、男の人なんて大ちゃんの家くらいしか行った事ない。大ちゃん家はご実家で、親戚だから叔父さんと叔母さんとも仲がいいし。
たじろぐ私なんてお構い無しに、相澤君は私からバックを奪って「さぁ、どうぞ」と満面の笑みを向ける。
なんだか騙された気がする…。
ムッと睨みながらも「おじゃまします」と靴を揃えて上がる。
入ってすぐのリビングはL字でガラス張りになっていて、最上階だけあって見晴らしがいい。
大きなソファーとテレビがあり、質の良さそうなインテリアでスッキリと整えられていた。
「すごい、モデルルームみたい…」
「気に入った?この部屋に来るの美優が初めてなんだ」
後ろから耳元で囁かれてビクッとする。
「ひゃぁ!いきなり後ろに立たないで!」
「あはは、ビックリした?ごめんね。あ、コート預かるよ」
「ありがとう…」
コートを脱いで渡すと相澤君はジーッと私を見つめていた。
何…??どこを見て…。あっ!手に持っていた手土産に気付き慌てて差し出す。
「あ、これ…どうぞ。ご実家だと思ってたから数が多いかもしれないけど、ゼリーだから日持ちするし…良かったら食べて」
持参した手土産を渡すと相澤君は柔く微笑む。
「ありがとう。気を遣わせちゃってごめんね。冷やして後で一緒に食べよう。とりあえず紅茶でいいかな?用意するから座ってて」
「あ…手伝おうか?」
「ありがとう、でも大丈夫。今日の為に美味しく紅茶が入れられるように練習したんだ。楽しみに待ってて」
「う…うん」
爽やかな笑顔でキッチンへと向かう相澤君の後ろ姿を見送りながら、私は大きなソファーにポスッと身体を埋める。
な…何アレ?
今日の相澤君、爽やかで紳士過ぎじゃない?
これまでの俺様で変態ちっくな部分が全然感じられない。
ただでさえ顔がドストライクのイケメンにあんな風にされたら照れてしまう。
火照る頬に手を当てて、ウンウン唸っていると相澤君がトレイを持ってやってきた。
「お待たせ。何?どうかした?」
「うんん、何でもない」
「ふふ、そう?…はい、どうぞ」
ソファーの前のテーブルに置かれたのは、ワイルドストロベリー柄の可愛らしいマグカップ。
「可愛い。私このシリーズ好きなんだ」
「ペアのマグカップ、今日の為に用意したんだ。美優がピンクで俺がグリーンね」
‘ペア’という単語にドキッとする。
同じデザインの揃いのマグカップは、恋人用という感じで…わざわざ用意してくれた事に、どう反応していいのか解らない。
「あ、ありがとう…。いただきます」
カップに口をつけると、ほんのり甘酸っぱい香りが鼻を擽る。
「どう…かな?」
「美味しいっ!これ、ストロベリーのフレーバーティーなんだね。良い香り」
「良かった。練習したかいがあったよ」
相澤君はホッとしたように笑いながら、私の隣に腰を下ろす。
一気に近づいた距離にドキドキしてしまい、何か話題を…と頭をフル回転させる。
「え…っと、苺づくしだね、苺好きなの?」
「うん、好き」
間近で目が合い、息を飲む。
相澤君に手を引かれやって来たのは駅前に出来た新しいタワーマンションだった。見るからに高級な佇まいに足が引ける。相澤君のお家ってお金持ちだったんだな…。まぁ、うちの高校ってセレブ多いしね。
マンションのエントランスに入る前にマナーとしてコートを脱いだ所、相澤君がギョッとした顔で私を見つめる。
「み、美優!すぐコート着てっ!!」
「え…何で?」
「あぁー、美優お嬢様育ちだからマナーが良いのか…。でも今はダメ!!お願いだから部屋に入るまでコート着て!ほら、行くよ!」
訳が解らずコートをバサッと肩から掛けられて、足早にエレベーターに乗り込む。
ついた先は最上階で、部屋はワンフロアに1つしかなかった。うわぁ…めちゃくちゃ高そう…。
相澤君は乱暴にドアを開けて私を部屋に引きずり込む。
「ちょっ…ちょっと待って、ご家族に失礼だからちゃんと挨拶を…」
グイグイ手を引く相澤君に対して、
玄関で靴を脱ぐ前にご挨拶を、と私は腕を引いた。
「え?俺一人暮らしだよ」
「えぇっ!?何で?!」
「何でって…高校から一人暮らしさせてもらってんの。伊村さんもそうでしょ?」
「確かに由妃ちゃんもそうだけど……あれ?由妃ちゃんが一人暮らしだなんて相澤君に言ったっけ?」
「あ?えーっと、なんか噂で聞いた気がする」
「そうなんだ…。って、そうじゃなくて、何で一人暮らしって言ってくれなかったの?!」
「だって聞かれなかったし」
確かに聞かなかったけれど……っ。
うぅー、これは…どうなの?マズイんじゃない?
一人暮らしの男の人の家なんて初めて…というか、男の人なんて大ちゃんの家くらいしか行った事ない。大ちゃん家はご実家で、親戚だから叔父さんと叔母さんとも仲がいいし。
たじろぐ私なんてお構い無しに、相澤君は私からバックを奪って「さぁ、どうぞ」と満面の笑みを向ける。
なんだか騙された気がする…。
ムッと睨みながらも「おじゃまします」と靴を揃えて上がる。
入ってすぐのリビングはL字でガラス張りになっていて、最上階だけあって見晴らしがいい。
大きなソファーとテレビがあり、質の良さそうなインテリアでスッキリと整えられていた。
「すごい、モデルルームみたい…」
「気に入った?この部屋に来るの美優が初めてなんだ」
後ろから耳元で囁かれてビクッとする。
「ひゃぁ!いきなり後ろに立たないで!」
「あはは、ビックリした?ごめんね。あ、コート預かるよ」
「ありがとう…」
コートを脱いで渡すと相澤君はジーッと私を見つめていた。
何…??どこを見て…。あっ!手に持っていた手土産に気付き慌てて差し出す。
「あ、これ…どうぞ。ご実家だと思ってたから数が多いかもしれないけど、ゼリーだから日持ちするし…良かったら食べて」
持参した手土産を渡すと相澤君は柔く微笑む。
「ありがとう。気を遣わせちゃってごめんね。冷やして後で一緒に食べよう。とりあえず紅茶でいいかな?用意するから座ってて」
「あ…手伝おうか?」
「ありがとう、でも大丈夫。今日の為に美味しく紅茶が入れられるように練習したんだ。楽しみに待ってて」
「う…うん」
爽やかな笑顔でキッチンへと向かう相澤君の後ろ姿を見送りながら、私は大きなソファーにポスッと身体を埋める。
な…何アレ?
今日の相澤君、爽やかで紳士過ぎじゃない?
これまでの俺様で変態ちっくな部分が全然感じられない。
ただでさえ顔がドストライクのイケメンにあんな風にされたら照れてしまう。
火照る頬に手を当てて、ウンウン唸っていると相澤君がトレイを持ってやってきた。
「お待たせ。何?どうかした?」
「うんん、何でもない」
「ふふ、そう?…はい、どうぞ」
ソファーの前のテーブルに置かれたのは、ワイルドストロベリー柄の可愛らしいマグカップ。
「可愛い。私このシリーズ好きなんだ」
「ペアのマグカップ、今日の為に用意したんだ。美優がピンクで俺がグリーンね」
‘ペア’という単語にドキッとする。
同じデザインの揃いのマグカップは、恋人用という感じで…わざわざ用意してくれた事に、どう反応していいのか解らない。
「あ、ありがとう…。いただきます」
カップに口をつけると、ほんのり甘酸っぱい香りが鼻を擽る。
「どう…かな?」
「美味しいっ!これ、ストロベリーのフレーバーティーなんだね。良い香り」
「良かった。練習したかいがあったよ」
相澤君はホッとしたように笑いながら、私の隣に腰を下ろす。
一気に近づいた距離にドキドキしてしまい、何か話題を…と頭をフル回転させる。
「え…っと、苺づくしだね、苺好きなの?」
「うん、好き」
間近で目が合い、息を飲む。
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