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日の当たる廊下の窓からは青々とした木の葉が風に揺れているのが見える。今日はお天気も良いし、庭でお花の観察をしようかな。
最近文字を読めるようになってきたから、庭で見つけた花を図鑑で調べる事にはまっている。過去の転生では、花をゆっくり見たり本を読んだりする事がなかったから、目に写るもの全てが珍しく思えるのよね。それに、何かを学ぶことはとっても楽しい。
「ミュラお嬢様、ごきげんよう。どちらに行かれるのですか?」
廊下の向かい側からハリーが涼しい笑顔でやってくる。手には山のように箱が積まれていた。
「ハリー、ごきげんよう。重そうな荷物ね。私はお庭に行く途中だったのだけれど、お手伝いしましょうか?」
私はワンピースの裾をちょこんと持って、まだおぼつかないカーテシーをした後、ハリーの側へと駆け寄る。
「ふふ、お手伝いは必要ございませんよ。それと、いつもお伝えしておりますが、わたくしの様な者にまで礼をする必要はございません。」
ハリーは美しい笑顔で、この箱意外と軽いんですよと持ち上げてみせる。
「そう?手伝いが必要ならいつでも言ってね。挨拶は私がしたいんだからいいのよ。それにこれもマナーのお勉強でしょう?」
「ありがとうございます。ミュラお嬢様はお庭に行く途中でしたね。サーラには伝えておりますか?」
「うんん、お庭に行くだけだからいいかなって。それにサーラはお部屋の花を活け直すと言っていたから今は部屋に居ないの。」
「ではサーラにはわたくしから伝えておきましょう。ミュラお嬢様、屋敷の門や塀の付近には近付いてはなりませんよ。危ないですからね。」
「大丈夫、わかっているわ。そうだ!ハリー、ちょっとしゃがんでくれる?」
なんでしょう?とハリーが私の目線に合わせて腰を落としてくれる。
私がすかさずハリーの頬にチュッとキスをする。
「なっ!?ミュラお嬢様?!」
ハリーは目を見開き、上ずった声をあげる。
いつも冷静なハリーが珍しい。
「カイ兄様に親しい人への挨拶の仕方を教わったのよ。間違っていたかしら?」
「は?!…い…いえ。…間違っては…おりませんが…。しかし、わたくしはミュラお嬢様にとって親しい人に含まれるのでしょうか…。」
「もちろんよ。ハリーったら変な事言うのね。じゃあ、私はそろそろ行くわね。ハリーもお仕事頑張ってね。」
パタパタと横を通り過ぎた後、速度を緩め淑女らしく歩き出す。
ハリー、なんだかちょっと変だったな。どうしたんだろう?やっぱりお仕事忙しくて疲れてるのかな?
小さい頃はハリーの事が少し怖かった。
ハリーは涼しい顔で何でもスマートにこなしてしまう。隙が無くて完璧で…そんな彼から見たら私なんか出来損ないで…目が合うと怒られそうな気がしてしまった。
でも今は違う。
ハリーはとても優しい。完璧だけど、完璧ではない部分も少し見えてきた。この5年間でハリーのいろんな顔を見てきたからこそ、今はハリーの事が怖くない。
いつも忙しくしているハリーは、ちゃんと休憩しているのかしら?家令ってお休みはあるの…よね?でも休んでいる日なんてあったかしら?
そういえばサーラもあまりお休みしていない気がする。あれ?公爵家の労働環境って大丈夫?
今度パパに聞いてみようかな。
ハリーやサーラが倒れたら大変だもの。
うん、そうしよう。
私は庭へと進む廊下で決意を固めたのでした。
最近文字を読めるようになってきたから、庭で見つけた花を図鑑で調べる事にはまっている。過去の転生では、花をゆっくり見たり本を読んだりする事がなかったから、目に写るもの全てが珍しく思えるのよね。それに、何かを学ぶことはとっても楽しい。
「ミュラお嬢様、ごきげんよう。どちらに行かれるのですか?」
廊下の向かい側からハリーが涼しい笑顔でやってくる。手には山のように箱が積まれていた。
「ハリー、ごきげんよう。重そうな荷物ね。私はお庭に行く途中だったのだけれど、お手伝いしましょうか?」
私はワンピースの裾をちょこんと持って、まだおぼつかないカーテシーをした後、ハリーの側へと駆け寄る。
「ふふ、お手伝いは必要ございませんよ。それと、いつもお伝えしておりますが、わたくしの様な者にまで礼をする必要はございません。」
ハリーは美しい笑顔で、この箱意外と軽いんですよと持ち上げてみせる。
「そう?手伝いが必要ならいつでも言ってね。挨拶は私がしたいんだからいいのよ。それにこれもマナーのお勉強でしょう?」
「ありがとうございます。ミュラお嬢様はお庭に行く途中でしたね。サーラには伝えておりますか?」
「うんん、お庭に行くだけだからいいかなって。それにサーラはお部屋の花を活け直すと言っていたから今は部屋に居ないの。」
「ではサーラにはわたくしから伝えておきましょう。ミュラお嬢様、屋敷の門や塀の付近には近付いてはなりませんよ。危ないですからね。」
「大丈夫、わかっているわ。そうだ!ハリー、ちょっとしゃがんでくれる?」
なんでしょう?とハリーが私の目線に合わせて腰を落としてくれる。
私がすかさずハリーの頬にチュッとキスをする。
「なっ!?ミュラお嬢様?!」
ハリーは目を見開き、上ずった声をあげる。
いつも冷静なハリーが珍しい。
「カイ兄様に親しい人への挨拶の仕方を教わったのよ。間違っていたかしら?」
「は?!…い…いえ。…間違っては…おりませんが…。しかし、わたくしはミュラお嬢様にとって親しい人に含まれるのでしょうか…。」
「もちろんよ。ハリーったら変な事言うのね。じゃあ、私はそろそろ行くわね。ハリーもお仕事頑張ってね。」
パタパタと横を通り過ぎた後、速度を緩め淑女らしく歩き出す。
ハリー、なんだかちょっと変だったな。どうしたんだろう?やっぱりお仕事忙しくて疲れてるのかな?
小さい頃はハリーの事が少し怖かった。
ハリーは涼しい顔で何でもスマートにこなしてしまう。隙が無くて完璧で…そんな彼から見たら私なんか出来損ないで…目が合うと怒られそうな気がしてしまった。
でも今は違う。
ハリーはとても優しい。完璧だけど、完璧ではない部分も少し見えてきた。この5年間でハリーのいろんな顔を見てきたからこそ、今はハリーの事が怖くない。
いつも忙しくしているハリーは、ちゃんと休憩しているのかしら?家令ってお休みはあるの…よね?でも休んでいる日なんてあったかしら?
そういえばサーラもあまりお休みしていない気がする。あれ?公爵家の労働環境って大丈夫?
今度パパに聞いてみようかな。
ハリーやサーラが倒れたら大変だもの。
うん、そうしよう。
私は庭へと進む廊下で決意を固めたのでした。
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