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46.~エレクトラside~⭐

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エレクトラ・フォン・シラー(4歳)
シラー侯爵家 長女

1年前のあの日、私はいつもの様に部屋で占術を行っていた。タロットカードに魔力を込めながら占うのだ。

「運命の輪の正位置…」

それは初めて出たカードだった。
『運命の輪(ホイール・オブ・フォーチュン)』
火・地・風・水を司る神が運命を下しており、逃れられない運命、逃してはならない幸運を表している。それは人生の分岐点となるような運命の出逢いを予感させた。

「…っ!?なに、この魔力の香り…!?」

急に甘い花の蜜のような魔力の香りが鼻を擽る。お父様や兄のように魔力の感知がまだ上手くできない私が、こんなにもハッキリと感じとれるなんて…。あまりに強力な魔力に慌ててお父様の部屋に駆け込めば、そこには既に兄が居た。同じく魔力を感じお父様に報告に来たようだった。

お父様は魔力の出所までは教えてくれず「自分で探し当てるのが運命ってことだろう?」と私の手に握りしめたままのタロットカードを見て、笑いながら頭を撫でてくれた。

この魔力の持ち主が私の運命の人?


その日から私の運命の人探しが始まった。
兄も同じくこの魔力の持ち主を探しているようで、私は兄の行動も注視した。
そこで浮かび上がってきたのが、ロレイル公爵家の末っ子ミュラだった。

そう、女の子…。ミュラは女の子なのだ。
え?運命の人は女の子?どういう事?
確かにシラー侯爵家の長女として、容姿ではなく魔力で配偶者を決めなさいと暗に言われていたけれども…。容姿とかじゃなく性別が…。え?

可愛い女の子は嫌いじゃない。
でも、ミュラが運命の人だったとして、子供は作れるのだろうか…。
変な意味じゃなくて、その…子孫繁栄の為に当然の疑問だと思う。

「お母様、ちょっといいかしら。」
私はお母様にこっそり聞きに行った。お母様も魔力が強く、占術と呪術それに魔法薬を専門にしている。

「いいわよ。なぁに?」 

「このカードなんだけど…。」

「あら、ホイール・オブ・フォーチュンね。」

「う、うん。あのね、運命の人が女の子だったら…どうする?」

「うーん?どうもしないわ。運命だもの。」

「受け入れるってこと?」

「何か問題でもあるの?」

「お…女の子だよ?その、跡継ぎとかが…。」

「あぁ!あーっはっは、なるほど!」

「笑い事じゃ…」

「問題ないわ。魔法薬があるのよ。」

「女の子同士でも子供ができる薬?」

「うーん、半分正解。正確には薬を飲むと一時的に男性器ができるのよ。あ、この話はまだ早いか。あはは。」

「……(男性器…)」

「とにかく、なーんにも問題ないわ。だから安心して。勿論、そのカードに従う必要もないわ。カードはただのお告げ。エレクトラ、あなたが自分の目で見て運命を掴みなさい。」

「はい、お母様…。」


自分の目で見て判断する。
私はロレイル公爵家三男のラナンへミュラに会わせて欲しいと手紙を書いた。
が、返ってきた手紙を要約すると「無理、お前に見せたらミュラが汚れる。」と…。あの悪魔めっ!!ムカツク!

結局、ミュラの誕生パーティーまで会う機会は無く私はヤキモキする日が続いた。


結果を言えば、ミュラは私の運命の人だ。
性別など関係ない。
ミュラの魔力は甘い香りがして、とても美味しそう。食べちゃいたい。舐め回したい。
唇を奪いたい衝動をぐっとこらえ、おでこにキスをすれば可愛い声がして、胸がキュンとする。


魔法薬かぁ…調べておかなくちゃ。

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