そして、アドレーヌは眠る。

緋島礼桜

文字の大きさ
上 下
250 / 325
第四篇 ~蘇芳に染まらない情熱の空~

序文

しおりを挟む








~ 第四篇   序文 ~







 
 『ヨォリの争乱』が激化していたその歴史の裏で、『エナ』はアドレーヌ王国の欠かせない資源として扱われていきました。
『エナ』によって、王国はとても変わっていきました。
『エナ』というものの液体化や結晶化が出来ることを知ると、人々はそのための機械を作りました。
『エナ』というものを人工的に作れることを知ると、人々はそのための機械を作りました。
『エナ』というものが人々の暮らしを豊かに出来ることを知ると、人々はそのための機械を作りました。

 そうして人々は、『エナエネルギー』を使って乗り物や灯りといった様々なものを開発していきました。
 以前までは実験の材料として使われていた兵器たちも活用され、人々のための生活資材として進化していきました。
『エナ』で動く機械たちは、『エナ製品』と呼ばれるようになりました。
『エナ製品』はその後約100年の間に、国民たちの身近な必需品となりました。

 けれど、そんな『エナ』に疑問を持つ人たちが現れました。
 その人たちは自らを『トオゼキ』名乗り、『エナ』をこのまま使用し続けるのは危険だと言いました。
 既に『エナ』が大切なの資源となっていたアドレーヌ王国は、『トオゼキ』は『ヨォリ』の仲間であると断言しました。
 それによりアドレーヌ王国と『トオゼキ』は対立し、いつしかそれは紛争にまで発展してしまいました。
 これが『第二次ヨォリの争乱』の始まりでした。

 けれど、長く続くと思われた『第二次ヨォリの争乱』は8年で終局を迎えました。
 そこには一人のアマゾナイト兵の存在がありました。
 そのアマゾナイトの活躍によって、最後は互いに和解し『トオゼキ』たちは自ら望んで国外へと出て行きました。
 人々はそのアマゾナイトを称え、『英雄』と呼ぶようになりました。









アドレーヌ暦0791年――
 『トオゼキ』と名乗る組織による『エナ』開発停止の抗議運動が始まる。
 アドレーヌ王国は彼らと数回の会談を設けるものの、双方の意見は平行線のままとなる。
 アドレーヌ王国第29代国王ジョンソン・デイ・リンクスは、『トオゼキ』をヨォリによる反乱組織と断定。紛争へと移行させた。
 後にこれを『第二次ヨォリの争乱』と呼ぶ。


アドレーヌ暦0794年――
 アドレーヌ王国第29代国王ジョンソン・デイ・リンクス死去。
 嫡子のカーティ・エト・リンクスが第30代国王の王位を継承。
 一方で『第二次ヨォリの争乱』はエナ兵器が投入され、悪化の一途を辿る。


アドレーヌ暦0799年――
 百年続くと思われていた『第二次ヨォリの争乱』が、一人のアマゾナイト兵の活躍により『トオゼキ』と和解。彼らは身の安全が保障される代わりに国外へと撤退することとなり、『第二次ヨォリの争乱』が終結する。
 この後、紛争終結の立役者であるアマゾナイトの兵、ルーノ将軍を称える者が急増。
 ルーノ将軍は英雄として歴史に名を残すこととなる。


アドレーヌ暦0810年――
 アドレーヌ王国第30代国王カーティ・エト・リンクスが病死。
 後継には嫡子のレイヤード・アト・リンクスがいたが同時期に病死。
 これにより甥に当たるマスナート・クー・リンクスが第31代国王の王位を継承することとなる。
 同年、英雄ルーノ将軍はアマゾナイトを退役し帰郷した。







 この時代、人々は最も『エナ』を愛し、『エナ製品』は人々の必需品となっていました。
 『エナ製品』を身体の一部と呼ぶ者さえいました。
 けれど、彼らはまだこれが間違いだったと気づいてはいませんでした。



 英雄が歴史から去って11年後。物語がまた動き出します。
 青年ヤヲキ・シエの物語から132年後、
 アドレーヌ暦0821年――

 これは己と仲間を信じ続けた一人の少女の物語です。





 *





 ~ 第四篇  蘇芳に染まらない情熱の空  ~






しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

処理中です...