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第三篇 ~漆黒しか映らない復讐の瞳~
跋文
しおりを挟むこうしてヤヲ―――キ・シエという人物、名前は、歴史の何処にも残されることはありませんでした。
どうやって生き延びていったのか。最期を迎えたのか。それを知る人は誰もいないし、知ろうという人もいません。
けれど、彼は後の世の為に、とあることをしていたのです。
歴史に語られることのない彼の行いは、後の世で知ることとなります。
彼のその後とは別に、アドレーヌ王国の歴史はその後、大きく動き出しました。
生誕祭を期に国王は突然病に倒れ、そのまま亡くなってしまった―――と、人々の前では語られました。
それから直ぐに国王の子供が次の王様になることになりました。
けれど、国王の子供はまだ赤ん坊であったため、代わりに彼の叔父が国王の代わりを務めることになりました。
その国王代理は後に、ネフ族だけではなくその他の少数民族たちも反乱を企てていたとして、彼らを『ヨォリ』と呼びました。
ちなみに『ヨォリ』とは、古代クレストリカ美語で『光を否定する闇』という意味で蔑む言葉になります。
国王代理は『ヨォリ』全てを追放すると言い、それによって更なる悲劇や惨劇が続くこととなってしまいました。
その後、王国がどうなったのか。
歴史書に載っている王国についてと歴史書には載っていない事件の真実を、少しだけ教えます。
アドレーヌ暦0688年**
ヤヲを含める反乱組織『ゾォバ』による会食場襲撃事件が起こる。
『ゾォバ』が持ち込んだ兵器の砲撃により会食場は半壊。会食中であった王族、警備中の兵士たちに死傷者を出す。
が、組織のリーダーであったロドも王国の兵器に倒れたことやメンバーの暴走によって自滅する。
現国王の死も含め多大な被害を生み出した大事件となったが、警備の甘さやその他の陰謀も相まって事実は隠ぺいされ、花火の暴発による大事故として公表。国王の死は別の病死であるとされた。
同年、前国王の嫡男であるフォルテ・バル・リンクスが王位を継承。
しかし未だ乳飲み子であったため、成人の儀を迎えるまでは代理として叔父に当たるツヴァイ・レーベン・リンクスが王政を行うこととなった。
アドレーヌ暦0690年――
国王代理が少数民族たち全てをネフ族と同様に完全国外追放をすると宣言(通称、ヨォリ宣言)。
これにより少数民族たちは経歴、老若男女問わずに王国外から追放されることとなる(通称、ヨォリ狩り)。
少数民族たちは当然怒りを露にし、猛抗議。仕舞いには紛争へと発展。この紛争は50年近く続くこととなり、後に『ヨォリ戦争』と呼ばれる。
アドレーヌ暦0691年――
『ヨォリ戦争』の最中、『花色の教団』は種族に囚われた考えは良くないと、紛争に巻き込まれた民の救援・保護に乗り出す。
しかし、王国に与する教団の手は借りたくないと少数民族たちは教団の活動を拒否。逆に襲撃するという惨事が多発する。
このため、『花色の教団』は少数民族への保護活動を事実上休止することとなり、静観の立場を取る。
アドレーヌ暦0706年――
アドレーヌ国第26代国王フォルテ・バル・リンクスが成人の儀を迎える。
これによりフォルテによる王政が始まるが、実際は国王代理がその天寿を全うするまで行っていたという。
アドレーヌ暦0745年―――
少数民族の完全国外追放を宣言。
これにより『ヨォリ戦争』は終結する。
この紛争の犠牲者は王国人口の半数に匹敵するとも云われるが、その真相は定かではない。
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