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第三篇 ~漆黒しか映らない復讐の瞳~
序文
しおりを挟むそれから、アドレーヌ王国には300年近い年月が経ちました。
長い時の間、王国は大きく変わっていきました。
一番変わったのは『エナ』によるものでした。
『エナ』は人や物など、宿る物によって属性が違うことがわかりました。
そして、『エナ』の宿る木や花、石や砂などを使って、色んな道具を作りました。
風属性の『エナ』が宿る結晶石を使って乗物を作り、火属性の『エナ』が宿る木々を使って灯りを作りました。
人たちは『エナ』を使うことで新たな文明を発展させていったのです。
でも、その一方で人々から疎まれる存在も生まれてしまいました。
それが『ネフ族』です。
『ネフ族』は自分たちを伝と呼び、エナを晶と呼んでいました。
そして自分たちを伝と呼んで欲しい、晶がとても危ないものなのだと訴え続けるだけの少数民族でした。
そんな彼らはエミレスが生きていた時代に、とても大きな過ちを起こしてしまったのです。
その大きな過ちによって有名になってしまった『ネフ族』は、徐々に迫害を受けていったのです。
人たちは、『ネフ族』の湖底のような蒼い髪、鮮血のような紅い眼を化け物のようだと嫌いました。
人たちは、彼らは王国を陥れようとしている悪い一族だと言って恐れるようになりました。
そうして『ネフ族』は次々と王国の外へと追い出されていきました。
アドレーヌ暦0621年――
第22代国王メイビン・ヤノ・リンクスが『ネフ族』への完全国外追放を宣言(通称メイビン宣言)。
これにより『ネフ族』に対する迫害の長く醜い歴史が始まる。
その一方で『花色の教団』は『ネフ族』の保護運動を行うが、『ネフ族』自体から拒否されている。
それは『花色の教団』が『エナ』を推進していたため、と云われている。
メイビン宣言より更に67年後。
『ネフ族』のほとんどが国外へと追放され、わずかに残っていた『ネフ族』も王国から必死に逃げ隠れ暮らしていました。
そして、この『ネフ族』の青年もまた、迫害の魔の手から逃げていました。
エミレス・ノト・リンクスの物語より381年後、
アドレーヌ暦0688年――
これは己に宿った憎しみに翻弄された一人の男の物語です。
*
~ 第三篇 漆黒しか映らない復讐の瞳 ~
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