真っ白なネコのぬいぐるみププが自分の色を見つけるまでのおはなし

緋島礼桜

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2色目~真っ赤な情熱を君に見せたかったんだ

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「やっぱり色といえば赤だよね! 情熱的で派手で実にカッコイイ色だからさ」

 嬉しそうに楽しそうにそう言いながら、身体を左右に揺らすププ。
 そんなププをピリカは不安そうに見つめていました。

「あんまり動きまわらないで。ほうきから落っこちちゃうよ」

 二人はほうきに跨って、朝焼けが美しい真っ赤な空を飛んでいるところでした。
 
「それでリトルレディ。ボクを赤色に変える材料はどこにあるんだい?」
「赤色に変えるためにはマグマの力が必要なの。マグマに魔法をかけて、真っ赤な色の素を作るのよ」
「そうなのか。マグマなんて初めて見るよ」

 そんな話をしていると、ほうきはある空中にてぴたりと止まりました。
 ププが遥か真下を見下ろして見ると、そこには火山の火口。
 その火口からはボコボコと煮えたぎり、まるで生きているかのようにうごめくマグマが見えました。

「ワァオ。とても迫力のあるマグマだね。まさに生命を感じる…なんだかボクの身体も熱くなってくるほどさ」
「あたしも…マグマをこんなに間近で見たの、初めて」

 そう言うとピリカはゆっくりと、ほうきから落っこちないよう気をつけながら、マグマへと近づいていきます。
 それから、ポケットから小石を一個取り出しました。




「―――マグマさん、マグマさん。その力をあたしに貸してくださいな。その真っ赤な色素をあたしにちょうだいな」

 ピリカがそう唱えた直後、火口のマグマがごうごうと音を立てて動き始めました。
 渦のように回転しながら宙へと上っていき、マグマが持っていた小石へと吸い込まれ出したのです。
 そうして、マグマの力を借りた小石はみるみるうちに、マグマのような真っ赤な色へと染まっていきました。

「すばらしいよ、すごいよリトルレディ! こんな魔法が使えるなんて、君はすごい魔女さ!」
「そ、そんなんじゃないわ…このくらい大した魔法じゃないもの…」

 とても感激するププに、ちょっとだけ悪い気はしないピリカ。
 すると、そのときでした。
 魔法が成功して安堵したピリカは、なんと、つるりと手のひらから小石を滑らせてしまったのです。

「あっ!」
「ああっ!!」

 二人は驚き、声を上げました。
 滑り落ちてしまった小石は、火口めがけて落っこちてしまいます。

「ご、ごめん―――」

 そう言ってピリカはププに謝りました。
 ですが、なんとそこにププの姿はもうありません。

「え?」
「だいじょーぶだよ、リトルレディ! ボクが絶対空中でキャッチしてみせるからさーーーっ!!」

 なんとププは落っこちた小石を追いかけて、一緒に落っこちてしまっていたのです。
 このままではププはマグマの中へ真っ逆さまです。

「ププ!!」

 ピリカは無我夢中で、ほうきを走らせてププを追いかけます。
 しかし、その間にも「うわああ」と情けない声を上げながら落ち続けるププ。
 もうだめだ、きっと間に合わない。そんな諦めがピリカに過ります。
 と、そんなときでした。
 ピリカはふと、とある記憶を思い出しました。



   *




『―――あたしはね、ピリカっていうの。あなたはププよ。よろしくね』

『ププはあたしのだいじなたからものなの。だからなにがあってもずっといっしょなのよ』




 ププはピリカにとって、大切な大切なぬいぐるみでした。
 生まれてはじめてもらったプレゼントでした。
 いつも一緒に過ごしていた、一番の宝物のぬいぐるみでした。
 だから、おしゃべりができるようになるならププが良いと、ピリカは思ったのです。
 だから、ピリカはププにおしゃべりができる魔法をかけたのです。
 


   *




「ププーーーッ!!」

 ピリカはほうきに足先を絡ませ、両手を広げながら落ちていきました。
 ププよりも素早い速度で追いかけ落っこちて、そして―――。




「……もう、無茶しないでよっ、ププ…!」

 ピリカはしっかりとその両手でププを抱き止め、抱きしめました。
 ほうきもぴたりと、火口の寸前で止まります。
 ププはマグマの中へ落っこちずに済んだのです。

「助かったよリトルレディ。まあ、絶対に助けてくれるとボクは信じていたけどね」
「なんでこんなことしたのよ…あたしが受け止められなかったらどうなってたか…わかってたの?」

 自信たっぷりにそう言ったププですが、ピリカに怒られてしまい、しゅんと頭を下げて反省します。

「ごめんよ…けれど、君のステキなステキな成功を台無しにしたくはなかったんだ。それに元々はボクが頼んでこうなったわけだしね」

 ププはそう言うと自分の手を差し出し、受け止めていた小石を渡そうとしました。
 しかし。その手には真っ赤な小石は握られていません。
 代わりに、ちょっとだけ焦げ色になった両手があるだけです。

「……どうやら小石はマグマのもとへ帰ってしまったようだね……そうだ。ボクは赤色じゃなくても良いんだ。うん、赤色よりももっともっとステキな色が良いよ」

 落ち込んでしまったププでしたが、またすぐに元気を取り戻し前向きにそう話すププ。
 そんな一生懸命なププを見て、ピリカは思わず苦笑してしまいました。


 
 


    
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