上 下
59 / 59
第三章 魔王城

【閑話】同級生の戯れ

しおりを挟む
  腰の痛みでいつもより早い時間に目が覚めた俺は、水でも飲もうと簡易キッチンに向かった。その途中でリビングで寛ぐ田辺さんに気が付いて挨拶をした。

「田辺さんおはよう」

「北川おはよう。早起きだね」

「そう言う田辺さんの方が早起きだよね?」

「あははっ。神殿では毎日早朝にお祈りしてたから、何か起きちゃうんだよね」

「早起きが習慣って、健康によさそうだね」

「そうかもねぇ。それよりも、ねえねえ北川、彼ピと順調そうじゃ~ん♪」

「彼ピって……。揶揄うのはやめてよ」

「え~っ!? 目の前に生BLが転がってるのに、放置しろって言うの?」

「その生BLっていうのもちょっとやめて欲しいかな……。この世界では一応同性同士の恋愛も認められてるみたいだし……」

「まあねぇ。おかげさまで街なんかに寄ったら、色々楽しいシチュエーションとか、美味しいカップルとか見れるし、ほんとこの世界魔王さえいなければ楽しいのになぁ」

「確かに、魔王討伐とかなかったらファンタジーでちょっと楽しいかも。まあ、俺は旅に出なかったら妖精王の加護も受けることがなかっただろうから、魔法も使えないただのモブで終了だっただろうけどね」

「まだ自分のことモブとか言ってんの? たまたまうちは聖女だったけど、北川だってこうやって一緒に旅することになったし、王子様に見初められて婚約までしちゃって? れっきとしたヒロインだと思うんだけどぉ?」

「ちょっと、俺は男なんだから、ヒロインとかやめてよ……」

「うふふっ。北川は男の子だけど、実際はめっちゃ美人だったし、全然ヒロインの素質有りよ! 今はモブがヒロインになる話も流行ってるしねww」

「マジ勘弁してよ。ってか、朝から随分ご機嫌だね?」 

「そりゃあ、起き抜けにこんな色っぽいオーラ出してる北川見ちゃったらねぇ?」

「はっ!?」

「気付いてないのぉ? 昨夜はお楽しみでしたねって感じだよ~ww」

「――」

「まあ揶揄うのはこの辺にして、腰痛いんでしょ? 治療してあげるから、ここに横になって!」

「――」

「そんな顔しないのっ! 揶揄うのは終わりって言ったでしょ? わたしの治癒の凄さ知ってるでしょ? 任せなさいって」

「でも、時間経っちゃってるけど大丈夫なの?」

「腰痛くらいなら多少時間が経ってても平気だよ! あんまり時間が経って欲しくないのは大怪我だね。衛生面も心配だし、繋がるとこ繋がりにくくなるからさ」

「そっか。治癒にも色々あるって言ってたもんね。じゃあ、お手数ですが宜しくお願いします」

「何で敬語っww」

「いや、一応頼む側だし?」

「ふふっ。北川って結構面白いね。クラスでもそんな感じで行けば良かったのに」

「……ちょっと同級生が苦手で」

「まあ、北川には北川の理由があるだろうし、うちも学校では腐女子ってこと隠してたから、人のこと言えないか! そしたら、今から治癒掛けるね」

「よろしく」

「ちょっと温かく感じるでしょ? 地球での遠赤外線治療をイメージしてるの」

「確かに温かい」

「もう少しで終わるからリラックスしといてね」

「そんなに短時間で終わるんだね」

「まあね。怪我とか命に関わるものの治療とかって一刻を争うし、漫画とかの魔法みたいに一瞬って訳にはいかないから、なるべく早くイメージして治すように訓練したんだ」

「田辺さんはすごいね」

「でしょ? もっと褒めてくれても良いんだよ?」

「ほんと田辺さんはすごいと思うよ。しっかり努力して治癒を自分のものにしたんだから」

「――そんな真面目な顔で褒められたら、逆に恥ずかしいんだけど」

「でも本心だから、ちゃんと伝えたくて。あんまりこうやって二人で話すことって普段ないしさ。ずっと伝えたかったんだ」

「マジでどうしちゃったの北川!? もしかしてうちに惚れた?」

「いや、それはないんだけど」

「即答かいっww」

「冗談でもそういうこと言うのはレオに悪いからさ……」

「はいはい。ご馳走様でした~。ほら治療終わったけどどう? まだ痛い?」

「ちょっと立ってみるね。うわっ、すごい! 本当に痛くない! 田辺さんありがとう」

「いいよいいよ~。また事後で腰痛いとかあったら遠慮なく言ってね~♪ あの王子様お堅く見えてムッツリそうだし? ラノベなんかの王子に有りがちな絶倫なのかもだしぃww」

「せっかくの感謝の気持ちがその一言で台無しだよ……」

「あははっ。真面目な話ばっかりじゃ息が詰まっちゃうし。たまには良いじゃん」

「まあ、腰治してくれてありがとう。今日の移動もこれで問題なく出来そうだよ」

「腰痛いままで、敵と遭遇したら大変だし、治って良かったよ。それじゃ、元気になったことだし、朝ごはん宜しく! うちはメイクしてくるわ」

 田辺さんはそう笑って立ち上がると、俺に朝食の支度を押し付けて部屋に戻って行った。
しおりを挟む
感想 8

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(8件)

あお
2021.10.15 あお

ウィンが可愛い過ぎます〜(//∇//)
可愛いな〜とは思ってたケド…今回のお話を読んで、ウィンの余りの可愛いさに1人で悶えてしまいました\(//∇//)\

可愛いが過ぎる!!
ウィンたん、か・わ・い・い〜(*≧∀≦*)

ネオン
2021.10.15 ネオン

みこ様

『みこたんあいやと。ウィンたん、かわいいうれちい』
『ウィンたん、みこたんだいちゅき』

感想ありがとうございます(*^^*)
ウィンをかわいいと言っていただけて感無量です( *´艸`)
私もこっそり癒し系だなって思っているので、嬉しいです(笑)
今後とも宜しくお願いします(*^^*)

解除
ちびちょ
2021.10.01 ちびちょ

ワンコな王子にタジタジな押しに弱いショウゴ君可愛いです///

1点だけ「位置」が全部「くらい置」になっているようのでお手数ですが修正お願いしますm(_ _)m

ネオン
2021.10.01 ネオン

ちびちょ様

感想ありがとうございます(*^^*)
ショウゴが可愛いと言ってもらえて嬉しいです☆
『位置』が『くらい値』になっている(; Д)゚ ゚
パソコンで、『位』を『くらい』に自動置き換えしたことがあるので、その時かも……(;´Д⊂)
教えてくださってありがとうございます♪
修正いたしました! 
思っていたよりも多くて驚いております(;^_^A
ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします♪

解除
あお
2021.09.27 あお

萌えます!!
王子の溺愛&執着ぶりにキュンキュンして、巻き込まれモブだと思ってるショウゴの素っ気ない態度にもまたキュンキュンw
ノンケならそうなるよね〜(うんうん)

毎回、キュン死寸前で読ませて頂いております(//∇//)
今後の展開が楽しみです。
更新楽しみにしております。
頑張って下さい〜(*´꒳`*)

ネオン
2021.09.27 ネオン

みこ様

嬉しい感想ありがとうございます(*^^*)
ちょっと王子が残念な感じですが、温かく見守っていただけたら嬉しいです☆
ノンケが流されていくの好きなんです(笑)
キュンとしていただけたのは物凄くモチベーション上がりました(o・ω・o)ウレシー
今後とも宜しくお願いします♪

解除

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

公爵家の五男坊はあきらめない

三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。 生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。 冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。 負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。 「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」 都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。 知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。 生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。 あきらめたら待つのは死のみ。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。