29 / 59
第一章 聖女召喚に巻き込まれてしまった
二十九.ポピー(後)
しおりを挟む
「そんで、今日はどうしたの?」
クリスくんに用意してもらったお菓子を頬張りながら、ポピーが俺に問う。甘い焼き菓子を頬張る姿はどこからどう見ても小さな子供で、五千年以上生きているとはとても思えない。何といっても初めて会った時、蜘蛛の巣に掛かって泣いてたし――。
「もう! しょうちゃん今失礼なこと考えてたでしょ!?」
顔には出していないつもりだったけど、お菓子を食べるポピーがほのぼのしていて、微笑ましい物を見る目で見てしまうのは仕方ないことだ。そんな俺の気持ちがバレてしまったのか?
「……。しょうがないじゃん……。お菓子、美味しいんだもん。美味しそうな匂いしてるんだもん……」
責めてなんていなにのに、お菓子に夢中になっていたことを咎められるとでも思ったのか、ポピーの目に涙が滲みだして――。
「ち、違うよ! お菓子はポピーのために用意した物なんだから、気にせず好きなだけ食べて良いんだよ! ――俺が見てたのは、美味しそうに食べるなって、微笑ましくなったっていうかさ……」
小さな女の子を泣かせたみたいで落ち着かなくて、慌ててフォローするけど、五千歳のレディに微笑ましいとか言うのはもしかして逆効果か?
「ぐすっ……お菓子に夢中になったの……怒ってない?」
「勿論だよ! 食べられるなら、全部食べても良いんだからね?」
何とかポピーを宥めて泣き止ませることは出来たけど、気力をごっそり削られた気がする――。ポピーの話では、妖精は見た目に引きずられている部分もあって、中身もやや幼いらしい。『だいぶの間違いじゃ?』とは思ったけど、これ以上泣かれてややこしくなるのも勘弁だし、そっと心の中で突っ込むに留めた。
「今日、呼びだした件なんだけど――」
気を取り直して、本来の目的である妖精の魔法についてなどのことについて訊ねることにした。
「う~ん……。何が出来るかって聞かれたら、色々?」
「そこを具体的に教えてもらえないかな? なぜか俺も魔王討伐に行かなくちゃいけなくって……」
「魔王討伐?」
ポピーに話していなかったことを思い出して、聖女の召喚に巻き込まれてこの世界にやって来たことや、なぜか王子に好意を持たれて一緒に魔王討伐に行くことになってしまったことを話した。それから、神様からもらったギフトについても――。ポピーを助けるかどうかで、妖精王の加護をもらえるかが分かれたっていうちょっと胸糞悪い話もした。「ふむふむ」と頷きながら聞いていたポピーは、自分が蜘蛛の巣に引っ掛かることが予め決まっていた未来だったと聞いても、特に気にならない様だった。
「怒んないの?」
「え~? 怒る?」
「だって知ってたなら、蜘蛛の巣に気を付けるように教えてくれても良いと思うんだ。そしたら、ポピーだって怖い思いをしなくて済んだんだから」
俺がそう言うと、少し不思議そうな顔をしたけど「ああ~!」と、一人で頷いてから怒っていないと言った。
「しょうちゃんは、あたしが危険な目にあって怖い思いをすることを、神様は分かっていながら試練として利用したって思ってる? だから腹が立った?」
「だってそうじゃないか。俺を試すにしたって、ポピーを危険な目に合わせる必要なんてなかったんだしさ――。ポピーは神様に対しても、俺に対しても怒って良いと思う」
「だから~、怒らないってば! あたしが蜘蛛の巣に引っ掛かってたのは、ちゃんと周りを見ないで飛び回ってた自分のせいだよ? それにもし、しょうちゃんが助けなくても、お父さんが助けてくれたんでしょ? 神様は見捨てた訳じゃないよ。この世界にいる全ての生き物をいちいち助けることは神様でも無理なんだからさ! 確かに、蜘蛛に食べられて死んじゃうかもって思ったら怖かったけど、結果的に助かってるし? 仮に死んじゃったとしても、自分の不注意だし仕方ないかなって思うわ」
何でもないようにポピーが言うから、そんなものなのかなって思うしかない。まだ少し腑に落ちない部分はあるけど――。妖精と人では感性が違うんだな。寿命が長い分(余程のことがない限り不老不死みたいだし?)、気持ちに余裕があるのかもしれないな。
「まあ、魔王をやっつけなきゃなのは、瘴気とかで困るから妖精としても大賛成だし、勿論協力するよ! あたしはしょうちゃんの味方し、妖精の魔法のこと教えてあげる」
俺自身が魔法を使うことは出来ないから、妖精の力を借りて戦うしかない。短剣の鍛錬も引き続き取り組む予定だし。そこに妖精魔法を上手く合わせられるようにしていければ、俺の戦闘力も上がるだろう。
「まずは、妖精の魔法について教えるね――」
ポピーの話によると、妖精はそれぞれ得意とする魔法が違うらしい。ポピーは薄い黄色い髪の色から、雷属性の魔法を得意としているそうだ。妖精王は全体的に水色だから水属性かと思って聞いてみれば、妖精王に関しては水属性に特化しているけれど、全属性を使うことが出来るオールラウンダーだという。
「今は契約している妖精があたしだけだから、雷属性の魔法しか使えないけど、他の属性の妖精仲間と契約することが出来れば、使える魔法の幅も広がるから、妖精を見掛けたら積極的に声を掛けるといいよ!」
妖精王の加護のおかげで、妖精からの好感度が高いそうで、余程ひねくれた性格の妖精でなければ、契約してくれるということだった。
ポピーの提案で、短剣に雷を纏わせて攻撃してはどうかということになって、翌日の短剣の鍛錬の時に試してみることになった。
クリスくんに用意してもらったお菓子を頬張りながら、ポピーが俺に問う。甘い焼き菓子を頬張る姿はどこからどう見ても小さな子供で、五千年以上生きているとはとても思えない。何といっても初めて会った時、蜘蛛の巣に掛かって泣いてたし――。
「もう! しょうちゃん今失礼なこと考えてたでしょ!?」
顔には出していないつもりだったけど、お菓子を食べるポピーがほのぼのしていて、微笑ましい物を見る目で見てしまうのは仕方ないことだ。そんな俺の気持ちがバレてしまったのか?
「……。しょうがないじゃん……。お菓子、美味しいんだもん。美味しそうな匂いしてるんだもん……」
責めてなんていなにのに、お菓子に夢中になっていたことを咎められるとでも思ったのか、ポピーの目に涙が滲みだして――。
「ち、違うよ! お菓子はポピーのために用意した物なんだから、気にせず好きなだけ食べて良いんだよ! ――俺が見てたのは、美味しそうに食べるなって、微笑ましくなったっていうかさ……」
小さな女の子を泣かせたみたいで落ち着かなくて、慌ててフォローするけど、五千歳のレディに微笑ましいとか言うのはもしかして逆効果か?
「ぐすっ……お菓子に夢中になったの……怒ってない?」
「勿論だよ! 食べられるなら、全部食べても良いんだからね?」
何とかポピーを宥めて泣き止ませることは出来たけど、気力をごっそり削られた気がする――。ポピーの話では、妖精は見た目に引きずられている部分もあって、中身もやや幼いらしい。『だいぶの間違いじゃ?』とは思ったけど、これ以上泣かれてややこしくなるのも勘弁だし、そっと心の中で突っ込むに留めた。
「今日、呼びだした件なんだけど――」
気を取り直して、本来の目的である妖精の魔法についてなどのことについて訊ねることにした。
「う~ん……。何が出来るかって聞かれたら、色々?」
「そこを具体的に教えてもらえないかな? なぜか俺も魔王討伐に行かなくちゃいけなくって……」
「魔王討伐?」
ポピーに話していなかったことを思い出して、聖女の召喚に巻き込まれてこの世界にやって来たことや、なぜか王子に好意を持たれて一緒に魔王討伐に行くことになってしまったことを話した。それから、神様からもらったギフトについても――。ポピーを助けるかどうかで、妖精王の加護をもらえるかが分かれたっていうちょっと胸糞悪い話もした。「ふむふむ」と頷きながら聞いていたポピーは、自分が蜘蛛の巣に引っ掛かることが予め決まっていた未来だったと聞いても、特に気にならない様だった。
「怒んないの?」
「え~? 怒る?」
「だって知ってたなら、蜘蛛の巣に気を付けるように教えてくれても良いと思うんだ。そしたら、ポピーだって怖い思いをしなくて済んだんだから」
俺がそう言うと、少し不思議そうな顔をしたけど「ああ~!」と、一人で頷いてから怒っていないと言った。
「しょうちゃんは、あたしが危険な目にあって怖い思いをすることを、神様は分かっていながら試練として利用したって思ってる? だから腹が立った?」
「だってそうじゃないか。俺を試すにしたって、ポピーを危険な目に合わせる必要なんてなかったんだしさ――。ポピーは神様に対しても、俺に対しても怒って良いと思う」
「だから~、怒らないってば! あたしが蜘蛛の巣に引っ掛かってたのは、ちゃんと周りを見ないで飛び回ってた自分のせいだよ? それにもし、しょうちゃんが助けなくても、お父さんが助けてくれたんでしょ? 神様は見捨てた訳じゃないよ。この世界にいる全ての生き物をいちいち助けることは神様でも無理なんだからさ! 確かに、蜘蛛に食べられて死んじゃうかもって思ったら怖かったけど、結果的に助かってるし? 仮に死んじゃったとしても、自分の不注意だし仕方ないかなって思うわ」
何でもないようにポピーが言うから、そんなものなのかなって思うしかない。まだ少し腑に落ちない部分はあるけど――。妖精と人では感性が違うんだな。寿命が長い分(余程のことがない限り不老不死みたいだし?)、気持ちに余裕があるのかもしれないな。
「まあ、魔王をやっつけなきゃなのは、瘴気とかで困るから妖精としても大賛成だし、勿論協力するよ! あたしはしょうちゃんの味方し、妖精の魔法のこと教えてあげる」
俺自身が魔法を使うことは出来ないから、妖精の力を借りて戦うしかない。短剣の鍛錬も引き続き取り組む予定だし。そこに妖精魔法を上手く合わせられるようにしていければ、俺の戦闘力も上がるだろう。
「まずは、妖精の魔法について教えるね――」
ポピーの話によると、妖精はそれぞれ得意とする魔法が違うらしい。ポピーは薄い黄色い髪の色から、雷属性の魔法を得意としているそうだ。妖精王は全体的に水色だから水属性かと思って聞いてみれば、妖精王に関しては水属性に特化しているけれど、全属性を使うことが出来るオールラウンダーだという。
「今は契約している妖精があたしだけだから、雷属性の魔法しか使えないけど、他の属性の妖精仲間と契約することが出来れば、使える魔法の幅も広がるから、妖精を見掛けたら積極的に声を掛けるといいよ!」
妖精王の加護のおかげで、妖精からの好感度が高いそうで、余程ひねくれた性格の妖精でなければ、契約してくれるということだった。
ポピーの提案で、短剣に雷を纏わせて攻撃してはどうかということになって、翌日の短剣の鍛錬の時に試してみることになった。
7
お気に入りに追加
1,986
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる