聖女はそっちなんだから俺に構うな!

ネオン

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第一章 聖女召喚に巻き込まれてしまった 

二十九.ポピー(後)

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「そんで、今日はどうしたの?」

 クリスくんに用意してもらったお菓子を頬張りながら、ポピーが俺に問う。甘い焼き菓子を頬張る姿はどこからどう見ても小さな子供で、五千年以上生きているとはとても思えない。何といっても初めて会った時、蜘蛛の巣に掛かって泣いてたし――。

「もう! しょうちゃん今失礼なこと考えてたでしょ!?」

 顔には出していないつもりだったけど、お菓子を食べるポピーがほのぼのしていて、微笑ましい物を見る目で見てしまうのは仕方ないことだ。そんな俺の気持ちがバレてしまったのか?
 
「……。しょうがないじゃん……。お菓子、美味しいんだもん。美味しそうな匂いしてるんだもん……」

 責めてなんていなにのに、お菓子に夢中になっていたことを咎められるとでも思ったのか、ポピーの目に涙が滲みだして――。

「ち、違うよ! お菓子はポピーのために用意した物なんだから、気にせず好きなだけ食べて良いんだよ! ――俺が見てたのは、美味しそうに食べるなって、微笑ましくなったっていうかさ……」

 小さな女の子を泣かせたみたいで落ち着かなくて、慌ててフォローするけど、五千歳のレディに微笑ましいとか言うのはもしかして逆効果か?

「ぐすっ……お菓子に夢中になったの……怒ってない?」

「勿論だよ! 食べられるなら、全部食べても良いんだからね?」

 何とかポピーを宥めて泣き止ませることは出来たけど、気力をごっそり削られた気がする――。ポピーの話では、妖精は見た目に引きずられている部分もあって、中身もやや・・幼いらしい。『だいぶの間違いじゃ?』とは思ったけど、これ以上泣かれてややこしくなるのも勘弁だし、そっと心の中で突っ込むに留めた。

「今日、呼びだした件なんだけど――」

 気を取り直して、本来の目的である妖精の魔法についてなどのことについて訊ねることにした。

「う~ん……。何が出来るかって聞かれたら、色々?」

「そこを具体的に教えてもらえないかな? なぜか俺も魔王討伐に行かなくちゃいけなくって……」

「魔王討伐?」

 ポピーに話していなかったことを思い出して、聖女の召喚に巻き込まれてこの世界にやって来たことや、なぜか王子に好意を持たれて一緒に魔王討伐に行くことになってしまったことを話した。それから、神様からもらったギフトについても――。ポピーを助けるかどうかで、妖精王の加護をもらえるかが分かれたっていうちょっと胸糞悪い話もした。「ふむふむ」と頷きながら聞いていたポピーは、自分が蜘蛛の巣に引っ掛かることが予め決まっていた未来だったと聞いても、特に気にならない様だった。

「怒んないの?」

「え~? 怒る?」

「だって知ってたなら、蜘蛛の巣に気を付けるように教えてくれても良いと思うんだ。そしたら、ポピーだって怖い思いをしなくて済んだんだから」

 俺がそう言うと、少し不思議そうな顔をしたけど「ああ~!」と、一人で頷いてから怒っていないと言った。

「しょうちゃんは、あたしが危険な目にあって怖い思いをすることを、神様は分かっていながら試練として利用したって思ってる? だから腹が立った?」

「だってそうじゃないか。俺を試すにしたって、ポピーを危険な目に合わせる必要なんてなかったんだしさ――。ポピーは神様に対しても、俺に対しても怒って良いと思う」

「だから~、怒らないってば! あたしが蜘蛛の巣に引っ掛かってたのは、ちゃんと周りを見ないで飛び回ってた自分のせいだよ? それにもし、しょうちゃんが助けなくても、お父さんが助けてくれたんでしょ? 神様は見捨てた訳じゃないよ。この世界にいる全ての生き物をいちいち助けることは神様でも無理なんだからさ! 確かに、蜘蛛に食べられて死んじゃうかもって思ったら怖かったけど、結果的に助かってるし? 仮に死んじゃったとしても、自分の不注意だし仕方ないかなって思うわ」

 何でもないようにポピーが言うから、そんなものなのかなって思うしかない。まだ少し腑に落ちない部分はあるけど――。妖精と人では感性が違うんだな。寿命が長い分(余程のことがない限り不老不死みたいだし?)、気持ちに余裕があるのかもしれないな。

「まあ、魔王をやっつけなきゃなのは、瘴気とかで困るから妖精としても大賛成だし、勿論協力するよ! あたしはしょうちゃんの味方し、妖精の魔法のこと教えてあげる」

 俺自身が魔法を使うことは出来ないから、妖精の力を借りて戦うしかない。短剣の鍛錬も引き続き取り組む予定だし。そこに妖精魔法を上手く合わせられるようにしていければ、俺の戦闘力も上がるだろう。
「まずは、妖精の魔法について教えるね――」

 ポピーの話によると、妖精はそれぞれ得意とする魔法が違うらしい。ポピーは薄い黄色い髪の色から、雷属性の魔法を得意としているそうだ。妖精王は全体的に水色だから水属性かと思って聞いてみれば、妖精王に関しては水属性に特化しているけれど、全属性を使うことが出来るオールラウンダーだという。

「今は契約している妖精があたしだけだから、雷属性の魔法しか使えないけど、他の属性の妖精仲間と契約することが出来れば、使える魔法の幅も広がるから、妖精を見掛けたら積極的に声を掛けるといいよ!」

 妖精王の加護のおかげで、妖精からの好感度が高いそうで、余程ひねくれた性格の妖精でなければ、契約してくれるということだった。

 ポピーの提案で、短剣に雷を纏わせて攻撃してはどうかということになって、翌日の短剣の鍛錬の時に試してみることになった。


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