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第一章 聖女召喚に巻き込まれてしまった
十八.初めての野宿(後)
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王子にじっくり話を聞きだされた俺は精神的にぐったりしていた。林を抜けるまで馬上でじっとしているように言われて、とても嫌だとは言えなかった。
さっきの妖精については、今夜の野営が整って落ち着いてから話してくれるらしい。蜘蛛の巣に引かかっていたのは十五センチくらいの大きさの子供で、色素の薄い黄色っぽい髪の毛を二つに分けて結んでいる、水色のチュニック風のワンピースを着た女の子だった。身動きが取れないし、蜘蛛がいつ戻って来るか分からなかったから怖くて仕方がなかったみたいだ。俺にも見えていたけど妖精にも蜘蛛の姿が見えていたようで、巣の端に現れた時は絶叫していた。
そんな状況が他の人たちには見えていなくて、俺が行くしかないって体が勝手に動いた。短剣だって防御メインで訓練していたから、まだ攻撃のタイミングとかが掴めなくて、蜘蛛が飛び掛かって来るのを避けて、噛みつかれるのをガードすることでいっぱいいっぱいだった。王子が蜘蛛の認識阻害を無効化してくれなかったら――。王子が魔法でやっつけてくれなかったら――。俺一人しかいなかったら――。馬の背に乗り王子の先導で道を進む間、そんなことをずっと考えて、自分の無力さを実感して落ち込んでしまった。
その後は魔獣が出ることもなく、無事に林を抜けることが出来た。ここからはまた馬を走らせることが出来るからと、馬に乗り込もうとした王子が心配そうに俺に声を掛けてくれた。
「ショウゴ殿――。どうかなさいましたか? わたしが少し言い過ぎてしまったせいで、ご気分でも悪くされましたでしょうか?」
王子は自分が言い過ぎたからではないかと思ったらしく、俺に謝ろうとしてきたから慌てて止めた。だって悪いのは俺で、怒られても当然なことをしたんだから、王子に謝ってもらう必要なんてないんだから。
「レオンハルト様、謝らないで! 俺が側を離れないって言う約束を破ってしまって、危険なことに首を突っ込んでしまったんだから、レオンハルト様が怒るのは当然のことだよ」
「しかしわたしも言い過ぎたかと――」
「俺さ、あんな蜘蛛くらい倒せるって思ったんだ。それなのに実際は防御で精一杯だった……。それが情けなくってさ……。結局レオンハルト様に倒してもらわなければ、蜘蛛はやっつけられなかった。蜘蛛を倒してくれてありがとうございました」
俺は自分の気持ちを王子に話してお礼を言った。
王子は「いえ」とか「当然のことをしたまでです」って言ってくれたけど、護られっぱなしは嫌だからって短剣の訓練を始めたのに、二人に防御に徹するように言われてもしっかり攻撃の仕方も教わるべきだったんだ。
「やっぱりさ、俺も少しは役に立ちたい。防御も勿論大事だし、弱い俺が倒さなくても他の人が倒してくれるんだってことは分かってるんだけどさ、護られているだけじゃ嫌なんだ。そんなの本当にただのお荷物じゃないか」
「そのようなことを思う必要はありませんよ。旅の同行もわたしが勝手にショウゴ殿を巻き込んだのですから、お護りするのは当然のこと――」
「だから! 俺は着いて行くならただ護られるだけのお荷物になりたくないんだ!」
王子が最後まで言う前に俺は大きな声を出した。普段はそれほど大きな声を出さないから驚いたみたいで、後衛の人たちが心配して駆けつけてくれた。
「すみません。何でもないです」
「すまない、何の問題もない。元の配置に戻ってくれ」
後衛の人たちは敬礼をして元の配置に戻ってくれて、そこからは二人とも無言だった。王子が俺の後ろに乗り込もうとしたから、前に乗ってもらって王子の腰を掴ませてもらった。
どれだけ走っただろうか――。日も傾きかけて来た頃に、今日の野営の場所を探すことになった。前衛と後衛の人たちで手分けして、良さそうな場所を探してくれた。ここで一夜を明かせば、明日の昼にはキャベリックに着くらしい。
王子が亜空間収納からテント一式を取り出して、護衛の人たちがテキパキと組み立ててくれた。元の世界の遊牧民のゲルの様なしっかりとした造りの物で驚いた。そこで寝るのは俺と王子だけと聞いて、護衛の人たちはどうするのか訊ねると、寝袋を持ってきているのでという答えが返ってきた。
「俺もみんなと一緒に寝袋が良い」
そう言うと護衛の人たちが慌てて王子と一緒にテントの中で眠って欲しいと言った。王子の結界で周辺には魔獣などが入り込めないようになっているから、寝袋でも何の心配もいらないと言う。さすがに王子を寝袋で外に寝かせる訳にはいかないし、護衛対象である俺もそうだと口々に言われて、悪いとは思いつつも了承するしかなかった。
夕食は昼間討伐してくれた猪型の魔獣の肉に香草と塩をすり込んで焼いた物と、根菜と一緒に肉の繊維が柔らかくなるまで煮込んだコンソメスープをご馳走になった。猪魔獣の肉は臭みさえキチンと処理することが出来れば、極上の味わいなんだとにっこり微笑んで教えてくれた。護衛の人たちは野営にも慣れているようで、火おこしから何からすごく手際が良くて、手伝いを申し出たけど火にかけたスープを時々混ぜるくらいしか出来なかった。
護衛の人たちは交代で見張るらしく、俺と王子にゆっくり眠るように言った。俺は王子みたいに身分がある訳でもないし、ただの一般人なのに、こんな待遇で良いのだろうか――。それに先にテントに入っている王子のところに行くのも何だか気まずい。林を出て言い合ってから俺たちは一切口を利いていない。ご飯を食べている時とか、何度か王子が話し掛けたそうにしていたけれど、俺は気付かないフリをして護衛の人たちの手伝いを申し出たりなんかして避けてしまっていた。護衛の一人に王子のいるテントに押し込まれてしまった。
「おやすみなさい、ショウゴ様。ゆっくり疲れを癒してくださいね」
そう言ってさっと去ってしまった。俺がテントに入ってきたことに気が付いた王子は、テントの中を快適空間にしてくれていたようで、テントの中だと言うのに分厚い寝心地の良さそうなマットレスや、肌触りの良さそうな毛布に、フカフカなクッションが並べられていた。二人で眠っても狭くはないサイズのマットレスは一つしかなくて、やっぱり一緒のベッド(的なもの)で寝るのかと少し残念に思った。これほどの大きさの物も持ち運びできる亜空間収納ってすごいと思う。俺にも使うことが出来たら良かったんだけど、生憎魔力がゼロで魔法を使える要素が全くなくて無理なのだ。
「ショウゴ殿、昼間は申し訳ございませんでした」
王子が謝る必要なんてないのに頭を下げていて、慌てて頭を上げてもらった。
「頭を上げてください。俺が悪かったんだからレオンハルト様が謝らないでください」
「しかし――。わたしがショウゴ殿の意思を無視してただ護られて欲しいと言ったことで、傷つけてしまいました」
「いや、俺が分かってもらえるまで言えば良かったんだ。それに自分の非力さが原因なのに、護ってもらっておいて文句言う俺が悪い」
二人で謝り合って、いつまでもこっちが悪いとか、いや自分がとか言い合っていて決着がつきそうもないし、何だかお互い何で謝り合っているのか分からなくなってきて、馬鹿らしくなってどちらからともなく笑い出した。ひとしきり二人で笑った後、キャベリックから戻ったら防御だけでなく攻撃の訓練をしてもらう約束をした。
それから王子が話してくれた妖精のことは難しくて、生態とかそういうのは覚えられなかったけど、妖精を見ることが出来る人間は極々少数で、妖精の声まで聴くことの出来る人間は今までいなかったということだった。それに俺にだけ認識阻害の魔法のかかった蜘蛛を見ることが出来たのも前例がないんだって。妖精に関してはここで何かを語れるほど王子も詳しくないとかで、お城に戻ってから本で調べることになった。蜘蛛の件は、もしかすると俺には認識阻害といったものが効かないのかもしれないと言うことで、これもお城に戻ってから訓練と合わせて色々試すことになった。
王子が俺に身に着けるように言った碧色の宝石にも実は、魔除けは勿論のこと、状態異常無効の魔法もかかっているので、身に着けているだけで毒耐性もつく優れものだったらしく、その影響かとも思ったみたいなんだけど、離れた場所にあった蜘蛛の巣の蜘蛛に気が付くことが出来るほど広範囲には効果がないそうで、俺の力だということだった。
何ていうか――。今頃この宝石のすごさを知ることになって、そんな大層な物を身に着けていたのかと恐れ多くなってしまった。お守りくらいのつもりでいたら、それだけの魔法を付与してあったらものすごい価値の高い物だったんだ。驚きもするだろう。俺にすらヤバい代物だっていうのが分かる。ゲームとか漫画では旅の終盤に手に入れることのできる国宝級の代物なんじゃないか? こんなすごい物身に付けられませんって言ったら、王子が少し悲しそうな顔で、俺のために王子が魔法を籠めた物だから、俺が身に着ける以外の使い道はないのだと言った。でも、と言いかける俺の言葉を制して王子が語ったことは、愛犬の死のことにも触れていて、悲しい気持ちにさせられた。
王子の話によると、母親である第三妃が国王の寵愛が厚いことと自分の能力のせいで、小さい頃から命を狙われることが多かったという。護衛のおかげで救われたことも何度もあったし、一番初めに覚えるように言われた魔法が『毒耐性強化』で、毒を口にしても大丈夫になるという魔法だった。今は『状態異常無効』で毒自体を無効化することが出来るようになったけど、子供の王子には難易度が高くて、愛犬を死なせてしまうことになってしまったとか――。
自分と一緒にいることによって、標的にされる可能性のある俺に、何かが起こってからでは遅いと考えた王子は、色々な魔法を籠めた物を俺に身に着けさせることで身を護ることを思いついたそうだ。そう言われてしまったら突き返す訳にもいかず、今まで通り肌身離さず身に着けることになった。
王子に浄化の魔法で綺麗にしてもらって、部屋着に着替えてから同じベッドで眠りについた。
さっきの妖精については、今夜の野営が整って落ち着いてから話してくれるらしい。蜘蛛の巣に引かかっていたのは十五センチくらいの大きさの子供で、色素の薄い黄色っぽい髪の毛を二つに分けて結んでいる、水色のチュニック風のワンピースを着た女の子だった。身動きが取れないし、蜘蛛がいつ戻って来るか分からなかったから怖くて仕方がなかったみたいだ。俺にも見えていたけど妖精にも蜘蛛の姿が見えていたようで、巣の端に現れた時は絶叫していた。
そんな状況が他の人たちには見えていなくて、俺が行くしかないって体が勝手に動いた。短剣だって防御メインで訓練していたから、まだ攻撃のタイミングとかが掴めなくて、蜘蛛が飛び掛かって来るのを避けて、噛みつかれるのをガードすることでいっぱいいっぱいだった。王子が蜘蛛の認識阻害を無効化してくれなかったら――。王子が魔法でやっつけてくれなかったら――。俺一人しかいなかったら――。馬の背に乗り王子の先導で道を進む間、そんなことをずっと考えて、自分の無力さを実感して落ち込んでしまった。
その後は魔獣が出ることもなく、無事に林を抜けることが出来た。ここからはまた馬を走らせることが出来るからと、馬に乗り込もうとした王子が心配そうに俺に声を掛けてくれた。
「ショウゴ殿――。どうかなさいましたか? わたしが少し言い過ぎてしまったせいで、ご気分でも悪くされましたでしょうか?」
王子は自分が言い過ぎたからではないかと思ったらしく、俺に謝ろうとしてきたから慌てて止めた。だって悪いのは俺で、怒られても当然なことをしたんだから、王子に謝ってもらう必要なんてないんだから。
「レオンハルト様、謝らないで! 俺が側を離れないって言う約束を破ってしまって、危険なことに首を突っ込んでしまったんだから、レオンハルト様が怒るのは当然のことだよ」
「しかしわたしも言い過ぎたかと――」
「俺さ、あんな蜘蛛くらい倒せるって思ったんだ。それなのに実際は防御で精一杯だった……。それが情けなくってさ……。結局レオンハルト様に倒してもらわなければ、蜘蛛はやっつけられなかった。蜘蛛を倒してくれてありがとうございました」
俺は自分の気持ちを王子に話してお礼を言った。
王子は「いえ」とか「当然のことをしたまでです」って言ってくれたけど、護られっぱなしは嫌だからって短剣の訓練を始めたのに、二人に防御に徹するように言われてもしっかり攻撃の仕方も教わるべきだったんだ。
「やっぱりさ、俺も少しは役に立ちたい。防御も勿論大事だし、弱い俺が倒さなくても他の人が倒してくれるんだってことは分かってるんだけどさ、護られているだけじゃ嫌なんだ。そんなの本当にただのお荷物じゃないか」
「そのようなことを思う必要はありませんよ。旅の同行もわたしが勝手にショウゴ殿を巻き込んだのですから、お護りするのは当然のこと――」
「だから! 俺は着いて行くならただ護られるだけのお荷物になりたくないんだ!」
王子が最後まで言う前に俺は大きな声を出した。普段はそれほど大きな声を出さないから驚いたみたいで、後衛の人たちが心配して駆けつけてくれた。
「すみません。何でもないです」
「すまない、何の問題もない。元の配置に戻ってくれ」
後衛の人たちは敬礼をして元の配置に戻ってくれて、そこからは二人とも無言だった。王子が俺の後ろに乗り込もうとしたから、前に乗ってもらって王子の腰を掴ませてもらった。
どれだけ走っただろうか――。日も傾きかけて来た頃に、今日の野営の場所を探すことになった。前衛と後衛の人たちで手分けして、良さそうな場所を探してくれた。ここで一夜を明かせば、明日の昼にはキャベリックに着くらしい。
王子が亜空間収納からテント一式を取り出して、護衛の人たちがテキパキと組み立ててくれた。元の世界の遊牧民のゲルの様なしっかりとした造りの物で驚いた。そこで寝るのは俺と王子だけと聞いて、護衛の人たちはどうするのか訊ねると、寝袋を持ってきているのでという答えが返ってきた。
「俺もみんなと一緒に寝袋が良い」
そう言うと護衛の人たちが慌てて王子と一緒にテントの中で眠って欲しいと言った。王子の結界で周辺には魔獣などが入り込めないようになっているから、寝袋でも何の心配もいらないと言う。さすがに王子を寝袋で外に寝かせる訳にはいかないし、護衛対象である俺もそうだと口々に言われて、悪いとは思いつつも了承するしかなかった。
夕食は昼間討伐してくれた猪型の魔獣の肉に香草と塩をすり込んで焼いた物と、根菜と一緒に肉の繊維が柔らかくなるまで煮込んだコンソメスープをご馳走になった。猪魔獣の肉は臭みさえキチンと処理することが出来れば、極上の味わいなんだとにっこり微笑んで教えてくれた。護衛の人たちは野営にも慣れているようで、火おこしから何からすごく手際が良くて、手伝いを申し出たけど火にかけたスープを時々混ぜるくらいしか出来なかった。
護衛の人たちは交代で見張るらしく、俺と王子にゆっくり眠るように言った。俺は王子みたいに身分がある訳でもないし、ただの一般人なのに、こんな待遇で良いのだろうか――。それに先にテントに入っている王子のところに行くのも何だか気まずい。林を出て言い合ってから俺たちは一切口を利いていない。ご飯を食べている時とか、何度か王子が話し掛けたそうにしていたけれど、俺は気付かないフリをして護衛の人たちの手伝いを申し出たりなんかして避けてしまっていた。護衛の一人に王子のいるテントに押し込まれてしまった。
「おやすみなさい、ショウゴ様。ゆっくり疲れを癒してくださいね」
そう言ってさっと去ってしまった。俺がテントに入ってきたことに気が付いた王子は、テントの中を快適空間にしてくれていたようで、テントの中だと言うのに分厚い寝心地の良さそうなマットレスや、肌触りの良さそうな毛布に、フカフカなクッションが並べられていた。二人で眠っても狭くはないサイズのマットレスは一つしかなくて、やっぱり一緒のベッド(的なもの)で寝るのかと少し残念に思った。これほどの大きさの物も持ち運びできる亜空間収納ってすごいと思う。俺にも使うことが出来たら良かったんだけど、生憎魔力がゼロで魔法を使える要素が全くなくて無理なのだ。
「ショウゴ殿、昼間は申し訳ございませんでした」
王子が謝る必要なんてないのに頭を下げていて、慌てて頭を上げてもらった。
「頭を上げてください。俺が悪かったんだからレオンハルト様が謝らないでください」
「しかし――。わたしがショウゴ殿の意思を無視してただ護られて欲しいと言ったことで、傷つけてしまいました」
「いや、俺が分かってもらえるまで言えば良かったんだ。それに自分の非力さが原因なのに、護ってもらっておいて文句言う俺が悪い」
二人で謝り合って、いつまでもこっちが悪いとか、いや自分がとか言い合っていて決着がつきそうもないし、何だかお互い何で謝り合っているのか分からなくなってきて、馬鹿らしくなってどちらからともなく笑い出した。ひとしきり二人で笑った後、キャベリックから戻ったら防御だけでなく攻撃の訓練をしてもらう約束をした。
それから王子が話してくれた妖精のことは難しくて、生態とかそういうのは覚えられなかったけど、妖精を見ることが出来る人間は極々少数で、妖精の声まで聴くことの出来る人間は今までいなかったということだった。それに俺にだけ認識阻害の魔法のかかった蜘蛛を見ることが出来たのも前例がないんだって。妖精に関してはここで何かを語れるほど王子も詳しくないとかで、お城に戻ってから本で調べることになった。蜘蛛の件は、もしかすると俺には認識阻害といったものが効かないのかもしれないと言うことで、これもお城に戻ってから訓練と合わせて色々試すことになった。
王子が俺に身に着けるように言った碧色の宝石にも実は、魔除けは勿論のこと、状態異常無効の魔法もかかっているので、身に着けているだけで毒耐性もつく優れものだったらしく、その影響かとも思ったみたいなんだけど、離れた場所にあった蜘蛛の巣の蜘蛛に気が付くことが出来るほど広範囲には効果がないそうで、俺の力だということだった。
何ていうか――。今頃この宝石のすごさを知ることになって、そんな大層な物を身に着けていたのかと恐れ多くなってしまった。お守りくらいのつもりでいたら、それだけの魔法を付与してあったらものすごい価値の高い物だったんだ。驚きもするだろう。俺にすらヤバい代物だっていうのが分かる。ゲームとか漫画では旅の終盤に手に入れることのできる国宝級の代物なんじゃないか? こんなすごい物身に付けられませんって言ったら、王子が少し悲しそうな顔で、俺のために王子が魔法を籠めた物だから、俺が身に着ける以外の使い道はないのだと言った。でも、と言いかける俺の言葉を制して王子が語ったことは、愛犬の死のことにも触れていて、悲しい気持ちにさせられた。
王子の話によると、母親である第三妃が国王の寵愛が厚いことと自分の能力のせいで、小さい頃から命を狙われることが多かったという。護衛のおかげで救われたことも何度もあったし、一番初めに覚えるように言われた魔法が『毒耐性強化』で、毒を口にしても大丈夫になるという魔法だった。今は『状態異常無効』で毒自体を無効化することが出来るようになったけど、子供の王子には難易度が高くて、愛犬を死なせてしまうことになってしまったとか――。
自分と一緒にいることによって、標的にされる可能性のある俺に、何かが起こってからでは遅いと考えた王子は、色々な魔法を籠めた物を俺に身に着けさせることで身を護ることを思いついたそうだ。そう言われてしまったら突き返す訳にもいかず、今まで通り肌身離さず身に着けることになった。
王子に浄化の魔法で綺麗にしてもらって、部屋着に着替えてから同じベッドで眠りについた。
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