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第一章 聖女召喚に巻き込まれてしまった
十六.いざ出発!
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朝目が覚めると王子は既にベッドにはおらず、着替えを済ませてソファーでお茶を飲んでいた。
「すみません。寝坊しちゃいましたか?」
焦って思わず敬語で訊ねると、王子は爽やかな笑顔で、まだ時間に余裕があるから焦らなくて大丈夫だと言ってくれた。
それでも今日俺は王子と二人でキャベリックまでエリックさんを迎えに行くのだから、少しでも早く出発が出来るように急いで身支度を済ませた。
「ショウゴ殿の荷物はこれで全部ですか?」
昨日クリスくんと一緒に着替えを詰めた袋を王子は亜空間収納にしまってくれた。
「それでは参りましょうか」
お城の門のところまで田辺さんとディラン様が見送りに来てくれた。
「北川! 気を付けて行って来てね。そんで帰ったら王子様との旅の話聞かせてね♪ ウフフ……ずっと馬で密着に、野営まであるんだもん少しは進展するよね?」
後半は小声だったけれど、例に漏れず俺にはバッチリ聞こえていたし、安定の田辺さんに呆れを通り越して感心してしまった。
「田辺さんの期待には応えられないだろうけど、レオンハルト様になるべく迷惑をかけないように頑張るよ」
「ええ~! そこは王子様に頼りまくって仲を深めるところでしょ!?」
このまま田辺さんのペースに合わせていたら、HPがどんどん削られてしまう――。
「安心してください。このレオンハルトがショウゴ殿に安心と安全、そして快適な旅をお約束いたします。ショウゴ殿は大船に乗ったつもりでいてください」
王子がどこかのツアー旅行の会社のキャッチフレーズのようなことを言っていて、田辺さんが噴き出した。
「ブフッ――。北川良かったね! 王子様に任せておけば何にも心配いらないってww」
「ショウゴは馬での移動は初めてだと思うが、殿下に任せておけば何の心配も必要ないから楽しんで来いよ。何せ国一番の魔術師がずっとそばにいるんだ。これ以上に安心んなものなどないだろう」
ディラン様がガハハと笑いながら俺の背中を軽く叩いた。荷物は全部王子が亜空間収納にしまってくれたからとっても身軽で、本当にこれから旅に出るのかと心配になるくらいだ。俺たちは身一つで馬に跨ることになるんだけど、道中魔獣が出ることもあるからと、俺は二振りのダガーを装備できるホルダーを身に着けている。訓練の時以外は危ないからと王子が亜空間収納にしまっていたので、装備するのは初めてでドキドキする。モリスさんが言っていたように、ホルダーに軽量化の魔法がかけられているので装備していても重さを感じることがなく、肩が凝らないのは助かった。慣れない乗馬での移動に不安がないと言えば嘘になるから、できるだけ身軽でいたいのだ。
「念のためダガーを装備していただいておりますが、討伐はわたしと護衛の者にお任せください。ショウゴ殿はあくまで自身の身の安全を優先してください。しかし安心してくださいね、ショウゴ殿は必ずわたしがお護りいたしますから」
自信たっぷりに王子がそう言うと、本当に大丈夫な気がするから不思議だ。
「いってらっしゃーい! 旅の安全と二人の進展を祈ってるね!」
「殿下、ショウゴ、気を抜くんじゃねえぞ? まあ新しい仲間ってやつによろしくな」
二人に見送られて俺は馬に乗せてもらった。王子は俺の後ろから手綱を握っていて、遠慮せずに背中を預けるように言ってくれた。元の世界でも馬に乗ったことなんてなかったけど、こんなにも高いんだと少し緊張してしまっていたから、背中を預けられることでホッとさせられた。俺たちを乗せて走ってくれている馬とは離れたところの見えない位置に護衛の人たちがいるらしく、人通りもないため、この道を走り抜けているのが自分たちだけの様な気持ちになる。
「あの、レオンハルト様――」
「はい。何でしょうか?」
相変わらず間髪入れずに返事をしてくれる王子は、巧みに馬を操っていて揺れも少なく、思っていたよりも怖い思いをせずに済んでいる。そして気になっていたことを訊ねる。
「あの――。初めに聞いた話では魔王討伐のメンバーは三人だったと思うんだけど――」
そうなのだ。最初の神託で勇者と魔術師である王子が討伐のメンバーに選ばれて、二度目の神託で聖女である田辺さんを召喚することになって、なぜか俺も行くことになって、後は出発時期とかの神託が下るまでそれぞれ修行をするように言われて、これで揃ったのだと思っていたのだけど――。
「その件ですか。わたしもショウゴ殿含めた四人で決まりだと思っていたのですが、神託ではこれで全員だとは言われていなかったのですよね。今回キャベリックに迎えに行くエリックが最後のメンバーなのか、それともまだいるのかはわたしには分かりかねますので、無事エリックを城まで連れ帰りましたら、聖女様にお伺いしましょう」
確かにいくら強いって言っても三人プラスおまけの一般人の俺では、人数が少なくて心許ない気もしたんだよ。国一番どころか世界最強っぽい魔術師の王子や、勇者のディラン様には失礼かもだけど――。田辺さんだって日々修行や勉強頑張っているみたいだし、三人でも大丈夫なのかもしれないけど、もう少しいても良いんじゃないかなって密かに思っていたから、新しい仲間の情報は嬉しかったりする。話しやすい人だと良いなあ。田辺さんはあんなんだし、王子もこんなんだし、ディラン様はよっぽどじゃなきゃ止めてくれないから、俺で遊ばなくて優しい人だったら言うことなしなんだけどな。
俺に気を使ってこまめに休憩を挟んでくれる王子は、休憩の度に亜空間収納から果実水や、軽食を出してくれて、あまりにも至れり尽くせりだし、何でも出て来るから某未来の子守りロボットを思い出してしまって、少しだけ面白いと思った。
馬に乗るって腰の筋肉を使うのかな――。休憩しつつ腰を擦っていると、王子がそれに気づいて治療の魔法をかけてくれた。
「聖女様のように治療に特化していないので効き目は弱いのですが、少しは楽になりましたでしょうか?」
王子はそう言うけど、かなり楽になったよ。ちょっと動いたらピキってなっていたのがなくなったし、しいて言うなら少し筋肉痛かもってくらいの痛みはあるけど、全然違う。本当に魔法ってすごいし有難いよ。
「レオンハルト様、すごく楽になりました! ありがとうございます!」
素直にお礼を言うと、驚いた表情をしたあと横を向いてしまった。耳が赤くなっていたので照れたのかもしれない。
「いえ、ショウゴ殿のお役に立てて光栄です」
休憩を挟みつつ馬を走らせていると、町が見えてきた。今日はこの町の宿屋に泊まるけど、明日は野宿になるそうだからお風呂とかしっかり使わせてもらおうと思う。お風呂に入れなくても浄化の魔法で綺麗にしてくれるって言っているけど、俺は入れる時にはしっかりと入りたいんだ。
宿屋で肉料理を食べてから、入浴を済ませた俺たちは、明日に備えて早めに眠りについた。
「すみません。寝坊しちゃいましたか?」
焦って思わず敬語で訊ねると、王子は爽やかな笑顔で、まだ時間に余裕があるから焦らなくて大丈夫だと言ってくれた。
それでも今日俺は王子と二人でキャベリックまでエリックさんを迎えに行くのだから、少しでも早く出発が出来るように急いで身支度を済ませた。
「ショウゴ殿の荷物はこれで全部ですか?」
昨日クリスくんと一緒に着替えを詰めた袋を王子は亜空間収納にしまってくれた。
「それでは参りましょうか」
お城の門のところまで田辺さんとディラン様が見送りに来てくれた。
「北川! 気を付けて行って来てね。そんで帰ったら王子様との旅の話聞かせてね♪ ウフフ……ずっと馬で密着に、野営まであるんだもん少しは進展するよね?」
後半は小声だったけれど、例に漏れず俺にはバッチリ聞こえていたし、安定の田辺さんに呆れを通り越して感心してしまった。
「田辺さんの期待には応えられないだろうけど、レオンハルト様になるべく迷惑をかけないように頑張るよ」
「ええ~! そこは王子様に頼りまくって仲を深めるところでしょ!?」
このまま田辺さんのペースに合わせていたら、HPがどんどん削られてしまう――。
「安心してください。このレオンハルトがショウゴ殿に安心と安全、そして快適な旅をお約束いたします。ショウゴ殿は大船に乗ったつもりでいてください」
王子がどこかのツアー旅行の会社のキャッチフレーズのようなことを言っていて、田辺さんが噴き出した。
「ブフッ――。北川良かったね! 王子様に任せておけば何にも心配いらないってww」
「ショウゴは馬での移動は初めてだと思うが、殿下に任せておけば何の心配も必要ないから楽しんで来いよ。何せ国一番の魔術師がずっとそばにいるんだ。これ以上に安心んなものなどないだろう」
ディラン様がガハハと笑いながら俺の背中を軽く叩いた。荷物は全部王子が亜空間収納にしまってくれたからとっても身軽で、本当にこれから旅に出るのかと心配になるくらいだ。俺たちは身一つで馬に跨ることになるんだけど、道中魔獣が出ることもあるからと、俺は二振りのダガーを装備できるホルダーを身に着けている。訓練の時以外は危ないからと王子が亜空間収納にしまっていたので、装備するのは初めてでドキドキする。モリスさんが言っていたように、ホルダーに軽量化の魔法がかけられているので装備していても重さを感じることがなく、肩が凝らないのは助かった。慣れない乗馬での移動に不安がないと言えば嘘になるから、できるだけ身軽でいたいのだ。
「念のためダガーを装備していただいておりますが、討伐はわたしと護衛の者にお任せください。ショウゴ殿はあくまで自身の身の安全を優先してください。しかし安心してくださいね、ショウゴ殿は必ずわたしがお護りいたしますから」
自信たっぷりに王子がそう言うと、本当に大丈夫な気がするから不思議だ。
「いってらっしゃーい! 旅の安全と二人の進展を祈ってるね!」
「殿下、ショウゴ、気を抜くんじゃねえぞ? まあ新しい仲間ってやつによろしくな」
二人に見送られて俺は馬に乗せてもらった。王子は俺の後ろから手綱を握っていて、遠慮せずに背中を預けるように言ってくれた。元の世界でも馬に乗ったことなんてなかったけど、こんなにも高いんだと少し緊張してしまっていたから、背中を預けられることでホッとさせられた。俺たちを乗せて走ってくれている馬とは離れたところの見えない位置に護衛の人たちがいるらしく、人通りもないため、この道を走り抜けているのが自分たちだけの様な気持ちになる。
「あの、レオンハルト様――」
「はい。何でしょうか?」
相変わらず間髪入れずに返事をしてくれる王子は、巧みに馬を操っていて揺れも少なく、思っていたよりも怖い思いをせずに済んでいる。そして気になっていたことを訊ねる。
「あの――。初めに聞いた話では魔王討伐のメンバーは三人だったと思うんだけど――」
そうなのだ。最初の神託で勇者と魔術師である王子が討伐のメンバーに選ばれて、二度目の神託で聖女である田辺さんを召喚することになって、なぜか俺も行くことになって、後は出発時期とかの神託が下るまでそれぞれ修行をするように言われて、これで揃ったのだと思っていたのだけど――。
「その件ですか。わたしもショウゴ殿含めた四人で決まりだと思っていたのですが、神託ではこれで全員だとは言われていなかったのですよね。今回キャベリックに迎えに行くエリックが最後のメンバーなのか、それともまだいるのかはわたしには分かりかねますので、無事エリックを城まで連れ帰りましたら、聖女様にお伺いしましょう」
確かにいくら強いって言っても三人プラスおまけの一般人の俺では、人数が少なくて心許ない気もしたんだよ。国一番どころか世界最強っぽい魔術師の王子や、勇者のディラン様には失礼かもだけど――。田辺さんだって日々修行や勉強頑張っているみたいだし、三人でも大丈夫なのかもしれないけど、もう少しいても良いんじゃないかなって密かに思っていたから、新しい仲間の情報は嬉しかったりする。話しやすい人だと良いなあ。田辺さんはあんなんだし、王子もこんなんだし、ディラン様はよっぽどじゃなきゃ止めてくれないから、俺で遊ばなくて優しい人だったら言うことなしなんだけどな。
俺に気を使ってこまめに休憩を挟んでくれる王子は、休憩の度に亜空間収納から果実水や、軽食を出してくれて、あまりにも至れり尽くせりだし、何でも出て来るから某未来の子守りロボットを思い出してしまって、少しだけ面白いと思った。
馬に乗るって腰の筋肉を使うのかな――。休憩しつつ腰を擦っていると、王子がそれに気づいて治療の魔法をかけてくれた。
「聖女様のように治療に特化していないので効き目は弱いのですが、少しは楽になりましたでしょうか?」
王子はそう言うけど、かなり楽になったよ。ちょっと動いたらピキってなっていたのがなくなったし、しいて言うなら少し筋肉痛かもってくらいの痛みはあるけど、全然違う。本当に魔法ってすごいし有難いよ。
「レオンハルト様、すごく楽になりました! ありがとうございます!」
素直にお礼を言うと、驚いた表情をしたあと横を向いてしまった。耳が赤くなっていたので照れたのかもしれない。
「いえ、ショウゴ殿のお役に立てて光栄です」
休憩を挟みつつ馬を走らせていると、町が見えてきた。今日はこの町の宿屋に泊まるけど、明日は野宿になるそうだからお風呂とかしっかり使わせてもらおうと思う。お風呂に入れなくても浄化の魔法で綺麗にしてくれるって言っているけど、俺は入れる時にはしっかりと入りたいんだ。
宿屋で肉料理を食べてから、入浴を済ませた俺たちは、明日に備えて早めに眠りについた。
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