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本編

☆第二王子(中)☆①

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「兄貴はお前には何も言ってないみたいだな。元の世界では違ったかもしれないが、この世界では男でも子供は産めるぞ」

「え?」

「ちゃんとした手順を踏めば男でも子供は産める」

 今男でも子供が産めるとか言ってなかったか?
 嘘だろ??

 無言で固まる俺に構うことなくマリオンは話を続ける。

「婚姻の儀で、お互い魔法契約をするんだよ。一生涯をこの伴侶と共にするっていう誓いを立てて。そうすると精霊が現れて二人に祝福をくれるんだ。男女であれば子宝に恵まれるように。それが男性同士の場合だと、どちらか一方を畑に変えて、女性同士ならどちらか一方を蒔き手に変えることが出来る」

「それって体を作り変えられるっていうこと?」

「男なら基本的な体の構造は変わらないが、後孔の奥に子宮が出来て妊娠可能になり、女の場合は通常の男性に比べれば小さいが、ペニスと陰嚢が出来て相手を孕ませることが出来るようになるんだ」

 マリオンから聞かされた話は、衝撃的過ぎて思考が追い付かない。
 あまりにも俺の今までの価値観や世界観と違い過ぎて、脳が考えることを放棄しているのかもしれない。

「まぁそれには条件があって、精霊に祝福されるだけの強い結び付きや相性が必須で、一時の気の迷いだとかははね除けられるから、必ずって訳じゃあないんだけどな」

「じゃあ、俺が伴侶にならないで済む可能性もゼロじゃないってこと?」

「お前兄貴の嫁になりたくないのかよ?」

 俺が伴侶にならない可能性に期待を持って訊ねると、マリオンはまるで俺が変なことでも言ったみたいな顔をして、ルシアンと結婚したくないのかと聞いてきた。

「そんなの当たり前だろ!? いきなり知らない世界に連れてこられて、元の世界ではいなかったことにされてさ、もう戻れないって言われて、おまけに男と結婚して体を作り変えられて子供を産めって言われて、はい分かりましたってなる訳ないじゃねぇか!」

 マリオンが王族と結婚することが当然の様にそう言ったから腹が立って、俺は文句が止まらなくなった。

「ははっ! 本当お前いいよ! 王族相手に噛み付くところなんて俺の好みだ。まじで俺の嫁にしてやりたくなってきた」

 マリオンは俺の太腿に手を這わせるといやらしい手つきで撫で上げた。
 くすぐったくてゾクリと身が竦む。

「精霊姫さん敏感じゃん?」

 マリオンは揶揄うようにクスリと笑うと俺の首筋に顔を埋め、ねっとりと舌を這わせて肌を滑らせ、鎖骨の辺りにキュッと吸い付いた。
 チリリとした僅かな痛みに驚いてマリオンの方に視線を移せば、さっきまでのふざけた表情とは打って変わって、熱の籠った瞳で俺を見ていた。

 その瞳には覚えがある。
 ルシアンの変態スイッチが入った時と同じ、熱を孕んだ色気たっぷりの瞳だ……。

 このままじゃヤバい……。
 身の危険を感じた俺は、逃げようと身体を動かそうとするけど、拘束魔法でベッドに座る体勢で固定されているせいで動くことが出来ない。

「てめえ、いい加減にしろよ! 俺は誰の嫁にもならない! さっきてめえも言ってたじゃねぇか! 強い結び付きや相性が良くなきゃ精霊に祝福されないって! 俺は認めないから祝福なんてされないだろ!? だから子供を産める体にもならない!」

 必死に捲し立てたら、マリオンは面白そうに口端を吊り上げて声を出して笑った。

「あっはっははははっ! やっぱりお前面白いな! なあ、お前は何に愛された姫だ?」

 そう問われて、顔が青ざめる……。
 俺は、精霊王に愛された・・・・・・・・精霊王の愛し子・・・である。
 不本意ながら俺は精霊姫・・・なのだ……。

「おっ? その顔はやっと分かったって顔だな? そうだよ。お前は既に精霊王の祝福を受けている。その精霊王がこの国の王族にお前を寄越したんだ。相性以前に決定事項な訳! 婚姻の儀では確実に祝福される」

 血の気が引くのが分かる。

「そんなの! そんなの……俺は望んでないし、勝手に精霊姫とかいう訳の分からないものにされて、知らない世界の知らない国のために、よく知りもしない相手と結婚して、魔力の強い子孫を残せって……受け入れられると思うのか?」

「それがお前の運命なんだから受け入れるしかないってことだ」

 あまりに理不尽で涙が込み上げてくる。
 こんな男の前で泣くなんてしたくないけど、悔しくて堪らない。

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