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第44話 魔導機雷の開発
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そんな金策のことを考えていた俺は思考を切り替えた。
まず単純に、強者側の強みを無効化できる武器を作れるかを考えてみた。
強大な実力者に正面から戦うのは無謀。
現実は死んだらそれでおしまい。
この世界では復活の呪文か何かがあるかどうかも分からない。
あったとしてもRPGで見られるように高度な実力者でないと扱えぬ。
おまけに誰かが死んだ俺を都合よく蘇生してくれる補償はどこにもない。
ならば戦いに手段は選ばない。
強大な力を持つ勇者様はそれだけの力を持つがゆえに正面から大魔王と戦うという贅沢を許されている存在なのだ。
一応魔法とかの力を持てたとはいえ基本一般人である俺にはそれらとは違う発想がいる。
俺はまず前から構想していたことの中から実現できそうなことに思慮をめぐらす。
そして、魔導書に書かれたやり方を応用して対魔法使い用の爆薬を開発することにした。
気になった魔法や技に関するページを写本し、今までの戦闘とベルリオーネさんに機会あるごとに習ったやり方で独学した技術を応用する。
先日の戦いでオークの一味と戦った時、奴らは一斗缶にして約15個分の爆薬を所持していた。
俺は奴らの所持していたマブクロを探った際にそれは出てきた。
そのオークどもがいた場所の近くに鉱山があり、その爆破用と推察されるそれらはこの世界でもかなり貴重であるとベルリオーネさんが言っていた。
元から俺が捕獲して持っていたのを使ってもいいがそれは防水パッキンが施されていたのに対し、一斗缶の方はやや穴が開いている物があったので湿気らないうちに使い切る目的でまずこちらから使う。
俺はせっかく手に入ったそれをとっておきの武器にできないか考えた。
ただの爆弾に加工するのはチンケな使い方だ。
オークが所持していた爆薬は鉱山での発破で使う古典的な黒色火薬であり、対人、対モンスター用の攻撃用としてはそれなりの威力がある。
俺はその爆薬に特殊な改変術式よる魔法をかけて細工を施すことにした。
まず万が一の時のために先に防御魔法を全展開して体全体を覆った。
魔法を爆薬にかけている時に爆発したら色々まずい。
周囲に火薬に引火するような要因や、危険な魔力反応が火薬から発していないことを確認し、手元のボウルに黒い火薬を入れる。
ベルリオーネさん曰く、時々魔族の中にブービートラップ代わりにいじっただけで爆発するよう魔力で細工した爆薬を撤退の際に置いていく知恵者がいるとのことで、念のために確かめる。
そのあと俺はベルリオーネさんからから習った通りに魔法陣を自分の目の前に出した。
青白い光がまぶしいが我慢する。
魔法陣を出しながら横の机の上に広げたノートを開いて、相手から魔力を吸収する魔法と、魔力の量でより攻撃力が増す補助魔法をそれぞれ唱えて魔法陣内から展開し、それからそれぞれの魔法の術式をPC画面のような形で魔法陣内に表示させた。
そして、魔導書にあった魔法をカスタムチューンするやり方にのっとり、それぞれの術式を改変する。
術式の改変はできたが、果たして俺の望む効果を持ったかは爆薬にかけて試験してみないと分からない。
そのうえでオークどもから捕獲した黒色火薬にそれら術式を改変した魔法をかける。
火薬が輝きだした。
俺はとっさに身構えた。
輝きが集束していくと、何事もなく地下室全体に静寂が戻った。
雷撃魔法を応用した明かりだけがLEDライトのように室内を無音で照らす。
爆発しなかったことから一応、爆薬に魔法をかけてチューンを施すことには成功したようだ。
さらに“シャドウの衣”を取り出し、それをはさみで切って小型の金属缶を包んだ。
“シャドウの衣”とはその名の通り影属性のモンスターがたまに所持している布で、所有者の意志で目に見えない状態にしたり、包んだ物を空中に長期間浮遊させておくことが可能な特殊生地である。
次いでギルドの厨房裏手でタダでもらってきた小型のホールトマトの缶をマブクロから取り出した。
無論、中身は洗浄し乾燥させてある。
その中に先ほど魔法処理を施したばかりの爆薬を詰める。
次いで、同じくオークが持っていた雷管にも魔法処理を施した。
雷管には魔力を持つ者が近くを通ると爆発する処理を施した。
これは本来、一定の区画にあらかじめ唱えてかけておくとそこに侵入者が入ってきたときに術者に知らせてくれる魔法の術式を改変しておいた。
俺の目の前に、一応完成した妙な物体が一つ、机の上に置かれている。
透明じゃないときは薄い銀杏のような黄色をしている“シャドウの衣”に包まれたそれはホールトマトの金属缶であり、中身は特殊な魔法処理を施した爆薬。
“シャドウの衣”は所有者が魔力を送れば透明になって魔力を送った者以外には視認ができなくなり、かつ、本来魔法攻撃全般を吸収して防いでくれる防具にも使われることから攻撃魔法で処理しずらいのもよい。
自分より強大な魔力などを持つ者への対抗策はある種の奇手を使う必要があると前から思っていた。
ならば強大な魔力やら力が逆に仇になるようにできないか?
その発想で俺が発案したのは“魔導機雷”。
魔力を持った者にのみ反応し、さらに相手の魔力の総量に応じて火薬の爆発力を高められるという物だ。
敵に気づかれぬよう周囲の空間に目に見えないこいつを設置し、そこに強大な敵を誘い込んでドカン。
そんな使い方ができればと思い作った。
だが、実際に使用してみると想定通りにはいかない。
森の中に試作した“魔導機雷”を複数仕掛け、通りすがりのマジックスライムや小型デーモンといった魔力持ちのモンスターを待ち伏せした。
が、最初はすべて反応せずに不発に終わった。
計5個作って仕掛けたが、すべてモンスターが近くを通ってにもかかわらず何の反応もなかった。
俺は反応感度をもっと敏感に術式を調整し直したところ、今度は5個とも爆発した。
しかし、攻撃半径が現時点では30メートルと狭く、至近距離まで敵を近寄らせないといけないのが難点なうえ、モンスターへ与えるダメージは弱かった。
最終的にすべて俺の愛刀で千切りにして事なきを得たが、想定とはかけ離れた威力・性能しかないことから今回は失敗に終わった。
ゆえにモンスターどもをなます切りにしても満足感は全くない。
俺が欲しいのは一撃で仕留められる必殺のトラップなのだ!
まず単純に、強者側の強みを無効化できる武器を作れるかを考えてみた。
強大な実力者に正面から戦うのは無謀。
現実は死んだらそれでおしまい。
この世界では復活の呪文か何かがあるかどうかも分からない。
あったとしてもRPGで見られるように高度な実力者でないと扱えぬ。
おまけに誰かが死んだ俺を都合よく蘇生してくれる補償はどこにもない。
ならば戦いに手段は選ばない。
強大な力を持つ勇者様はそれだけの力を持つがゆえに正面から大魔王と戦うという贅沢を許されている存在なのだ。
一応魔法とかの力を持てたとはいえ基本一般人である俺にはそれらとは違う発想がいる。
俺はまず前から構想していたことの中から実現できそうなことに思慮をめぐらす。
そして、魔導書に書かれたやり方を応用して対魔法使い用の爆薬を開発することにした。
気になった魔法や技に関するページを写本し、今までの戦闘とベルリオーネさんに機会あるごとに習ったやり方で独学した技術を応用する。
先日の戦いでオークの一味と戦った時、奴らは一斗缶にして約15個分の爆薬を所持していた。
俺は奴らの所持していたマブクロを探った際にそれは出てきた。
そのオークどもがいた場所の近くに鉱山があり、その爆破用と推察されるそれらはこの世界でもかなり貴重であるとベルリオーネさんが言っていた。
元から俺が捕獲して持っていたのを使ってもいいがそれは防水パッキンが施されていたのに対し、一斗缶の方はやや穴が開いている物があったので湿気らないうちに使い切る目的でまずこちらから使う。
俺はせっかく手に入ったそれをとっておきの武器にできないか考えた。
ただの爆弾に加工するのはチンケな使い方だ。
オークが所持していた爆薬は鉱山での発破で使う古典的な黒色火薬であり、対人、対モンスター用の攻撃用としてはそれなりの威力がある。
俺はその爆薬に特殊な改変術式よる魔法をかけて細工を施すことにした。
まず万が一の時のために先に防御魔法を全展開して体全体を覆った。
魔法を爆薬にかけている時に爆発したら色々まずい。
周囲に火薬に引火するような要因や、危険な魔力反応が火薬から発していないことを確認し、手元のボウルに黒い火薬を入れる。
ベルリオーネさん曰く、時々魔族の中にブービートラップ代わりにいじっただけで爆発するよう魔力で細工した爆薬を撤退の際に置いていく知恵者がいるとのことで、念のために確かめる。
そのあと俺はベルリオーネさんからから習った通りに魔法陣を自分の目の前に出した。
青白い光がまぶしいが我慢する。
魔法陣を出しながら横の机の上に広げたノートを開いて、相手から魔力を吸収する魔法と、魔力の量でより攻撃力が増す補助魔法をそれぞれ唱えて魔法陣内から展開し、それからそれぞれの魔法の術式をPC画面のような形で魔法陣内に表示させた。
そして、魔導書にあった魔法をカスタムチューンするやり方にのっとり、それぞれの術式を改変する。
術式の改変はできたが、果たして俺の望む効果を持ったかは爆薬にかけて試験してみないと分からない。
そのうえでオークどもから捕獲した黒色火薬にそれら術式を改変した魔法をかける。
火薬が輝きだした。
俺はとっさに身構えた。
輝きが集束していくと、何事もなく地下室全体に静寂が戻った。
雷撃魔法を応用した明かりだけがLEDライトのように室内を無音で照らす。
爆発しなかったことから一応、爆薬に魔法をかけてチューンを施すことには成功したようだ。
さらに“シャドウの衣”を取り出し、それをはさみで切って小型の金属缶を包んだ。
“シャドウの衣”とはその名の通り影属性のモンスターがたまに所持している布で、所有者の意志で目に見えない状態にしたり、包んだ物を空中に長期間浮遊させておくことが可能な特殊生地である。
次いでギルドの厨房裏手でタダでもらってきた小型のホールトマトの缶をマブクロから取り出した。
無論、中身は洗浄し乾燥させてある。
その中に先ほど魔法処理を施したばかりの爆薬を詰める。
次いで、同じくオークが持っていた雷管にも魔法処理を施した。
雷管には魔力を持つ者が近くを通ると爆発する処理を施した。
これは本来、一定の区画にあらかじめ唱えてかけておくとそこに侵入者が入ってきたときに術者に知らせてくれる魔法の術式を改変しておいた。
俺の目の前に、一応完成した妙な物体が一つ、机の上に置かれている。
透明じゃないときは薄い銀杏のような黄色をしている“シャドウの衣”に包まれたそれはホールトマトの金属缶であり、中身は特殊な魔法処理を施した爆薬。
“シャドウの衣”は所有者が魔力を送れば透明になって魔力を送った者以外には視認ができなくなり、かつ、本来魔法攻撃全般を吸収して防いでくれる防具にも使われることから攻撃魔法で処理しずらいのもよい。
自分より強大な魔力などを持つ者への対抗策はある種の奇手を使う必要があると前から思っていた。
ならば強大な魔力やら力が逆に仇になるようにできないか?
その発想で俺が発案したのは“魔導機雷”。
魔力を持った者にのみ反応し、さらに相手の魔力の総量に応じて火薬の爆発力を高められるという物だ。
敵に気づかれぬよう周囲の空間に目に見えないこいつを設置し、そこに強大な敵を誘い込んでドカン。
そんな使い方ができればと思い作った。
だが、実際に使用してみると想定通りにはいかない。
森の中に試作した“魔導機雷”を複数仕掛け、通りすがりのマジックスライムや小型デーモンといった魔力持ちのモンスターを待ち伏せした。
が、最初はすべて反応せずに不発に終わった。
計5個作って仕掛けたが、すべてモンスターが近くを通ってにもかかわらず何の反応もなかった。
俺は反応感度をもっと敏感に術式を調整し直したところ、今度は5個とも爆発した。
しかし、攻撃半径が現時点では30メートルと狭く、至近距離まで敵を近寄らせないといけないのが難点なうえ、モンスターへ与えるダメージは弱かった。
最終的にすべて俺の愛刀で千切りにして事なきを得たが、想定とはかけ離れた威力・性能しかないことから今回は失敗に終わった。
ゆえにモンスターどもをなます切りにしても満足感は全くない。
俺が欲しいのは一撃で仕留められる必殺のトラップなのだ!
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