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水の竜の王の憧憬
街長ゴルドバ
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#フェンス
宿に入ると、なるほどかなり豪奢な造りになっている。
上流階級の暮らす南西区の宿として相応しい造りだろう。
入口正面に宿泊の受付だろうカウンターがあり、揃いの制服を着た二人の受付嬢がいる。
向かって左側は食堂になっているようで、これまた上流階級が使う高級店のようにテーブルには真っ白な布が敷かれている。テーブルの間隔は広くとられており鉢植えの植物が目隠しとしていくつか置かれている。
何組か食事をしている客がおり、どの客も整った身なりで食事とワインを一緒に嗜んでいるようだ。
右側は、貴重なガラスを天板に用いた脚の短いテーブルと革張りのソファーが置かれており、紅茶や酒などを愉しむ場所になっているようだ。
その一画に腰を降ろす。七人で座っても十分に余裕のある大きなソファーだ。すぐにメイドの様な服装の者が現れ飲み物を窺う。
注文をするとしばらくして飲み物が目の前に置かれる。
儂は普段、発酵茶か焙煎茶を飲んでいるが、南方のアディスアベバ国の特産品だという珈琲というものを注文した。見た目は真っ黒で美味しそうには見えなかったが、香りは素晴らしくひと口飲んでみると芳醇でコクのある深い味わいがした。これはどこかで買えるのか?
「随分と良い宿を取ったのだな。代金はフリオニール持ちか?」
短い滞在だとは思うがこれだけの宿をこの人数で借りるとなれば相当な金額になるだろう。自費は勘弁願いたい。
「いえ、それが・・・フェンス殿やミリアーナ殿はまだしも我らはもっと安い宿で構わないと申したのですが、この街の長から是非にと言われまして。宿代も街長持ちで払って頂いています」
いくら王国からの貴族が来るとはいえ、一介の街長がそれだけの金額を払うものなのだろうか。何か理由があるのか。あまり良い予感はしない。
「あとで挨拶に伺ったほうが良いな。それで竜人族の雑貨店に関して何か話は聞けたのか?」
あくまでも要件はそちらだ。
儂らをこんな高い宿に泊まらせる理由は分からんが、貴族や領主や金や権利などが絡む話は御免蒙る。
「いえ、それはまだ。来訪目的を伝えて確認はして頂いてますが、話はフェンス殿をお待ちしてと思いまして」
「そうか。あまり気乗りはしないがさっさと話を聞いてさっさと用事を済ませてしまおう。」
あまり大人数で押し掛けても迷惑だろうし、街長の屋敷へは儂と、話を聞いたらその足で向かえるようルーテ。それと使者として面識のあるロディとルークの四人で構わないだろう。
ミリアーナは転移で魔力を多く消費したから休みたいと言ってさっさと部屋に入ってしまった。半分本音だろうがもう半分は絶対に面倒臭いからに違いない。
儂も出来ればそうしたいが──
街長の屋敷は、大通りに面した宿から奥に伸びるレンガ造りの道を進んだ先にあるらしい。通りには魔道具の常夜灯がいくつも設置されており、道沿いには様々な高級店や大きな屋敷が並んでいる。
その通りの突き当たりに一際大きな街長の屋敷があった。
各街の長の屋敷を比較したことはないが、明らかに一介の街の長が建てられる屋敷の大きさを逸脱しているだろう。
屋敷を囲む塀には立派な門もついており、衛兵がひとり常駐しているようだ。
「ヴェロスクード様、お待ちしておりました。どうぞお入り下さいませ」
衛兵は恭しく頭を下げると門を開け中へと促す。屋敷の入口にはいつのまにか黒服に身を包んだ執事然とした白髪の男が立っている。
「ヴェロスクード様、お待ちしておりました。どうぞご案内致します」
執事らしき男が扉を開ける。屋敷の中は高価そうな絨毯が敷かれ、通路には何だか分からない調度品が並ぶ。
衛兵といい執事といい、内装に関しても間違いなくうちの屋敷より豪華だ。どちらが貴族か分かったものじゃない。
「旦那様。ヴェロスクード様が参られました」
執事が通路奥の両開きの扉を大きく開くとひとりの男が立っていた。
「ヴェロスクード様。我が屋敷へようこそお出でくださいました。この街の長を務めておりますゴルドバと申します。ささ!どうぞお入り下さい」
ゴルドバと名乗る見るからに贅を尽くしているだろう風貌の男は満面の笑みで儂らを出迎える。
部屋の中央には先程の宿にあったものと似たようなガラスのテーブルと革張りのソファーが置かれており、そこに座るよう促される。
「いやしかし、あの魔王討伐の伝説の盾騎士ヴェロスクード様とこうしてお会いできるとは、光栄至極でごさいます。こうして出会えましたのも何かの縁、何か御入り用のものなどございましたら今後は是非ともこのゴルドバを御用命下さいませ」
「・・・あ、ああ。そうだな」
よく口が回るものだ。
こういった手合いが一番苦手だ。おかしなことを言っているわけではないのだが、どうにも信用出来ない。
「・・・ええと、ゴルドバ殿。それよりここにいる使者から要件は伝えていると思うが、それについては何か情報はありますかな?」
あまり長居はしたくないため、早速本題を切り出す。途端にゴルドバは頬を引きつかせ笑みを凍りつかせる。
「ええ。勿論存じておりますとも。確かにそういった竜人族が北西街におりますな」
ルーテの魔法の師匠、竜人族の『ティアマト』は今も変わらずこの街にいるようだ。
そうと分かれば長居は無用。早速向かうとしよう。
「あの者には私どもも非常に迷惑しておりまして、どういった御用件かは存じませんが、是非ヴェロスクード様からも一言いって頂けませんでしょうか」
「んん?」
何やら面倒な話になってきたな。
ゴルドバの屋敷をあとにし、北西街へと向かう。
先程までの南西街とは異なり、大通りに面した建物以外は古く煤けた建物や割れた窓に板張りをしているような建物が多く、中には取り壊されたままのものもあるが、その中に不自然なほどに新築のものや現在建築中の建物も見受けられる。
道も大半が砂利混じりの未舗装だが一部レンガ舗装の工事が始まっており、全体的に違和感がある。
ゴルドバの話によると──
「実はですね、昨年の春頃から街の再開発を行っていまして、まず建物などの老朽化が進んでいる北西区から工事を始めているのですが・・・ああ、勿論現住民には正当な額の立ち退き費用は払っておりますとも。その上希望者は建て替えが済み次第、優先的に入居を斡旋しております。
それなのに、あの竜人族の女を中心に数人の住民が反対活動なぞを行っておりまして、工場関係者や建築作業員などに嫌がらせ行為や取り壊しの決まった建物に立て籠りなどをしておりまして。工事予定がかなり遅れて非常に迷惑しているのです。」
とのことらしい。
確かに、建物を見ると安全面も考慮して建て替えは必要だろう。立ち退き費用を支払ったり入居の斡旋も行っているというから、何の問題もないようには思える。
何故、反対活動が起きているのだろうか。
「フ、フェンス様。正面に見える建物がティアマトのお店だった建物です」
ルーテが指差した途端、その建物の扉と二人の男が吹き飛ばされたように飛び出してきた。
「ふぇぇっ!!?」
男たちは不格好に転がり気を失ってしまったようだ。
「フン!何度来られても立ち退きはしませんよ。あとで扉の修理費の請求書を送りますからお願いしますね。」
壊れた扉からひとりの女性が出てきて既に気を失っている男たちに話しかけている。
その女性は細身の青いローブ姿に青みがかった珍しい色合いの真っ直ぐな長髪、その頭部には角らしきものが見える。
「ああ・・・テ、ティアマトォッ!!」
その姿を見たルーテが女性に向かって走り出す。青髪の女性もそれに気付くとしかめっ面を驚きの表情に変えた。
「ま、まさか・・・ルーテ?!」
探していた竜人族のティアマト、その人であった──
宿に入ると、なるほどかなり豪奢な造りになっている。
上流階級の暮らす南西区の宿として相応しい造りだろう。
入口正面に宿泊の受付だろうカウンターがあり、揃いの制服を着た二人の受付嬢がいる。
向かって左側は食堂になっているようで、これまた上流階級が使う高級店のようにテーブルには真っ白な布が敷かれている。テーブルの間隔は広くとられており鉢植えの植物が目隠しとしていくつか置かれている。
何組か食事をしている客がおり、どの客も整った身なりで食事とワインを一緒に嗜んでいるようだ。
右側は、貴重なガラスを天板に用いた脚の短いテーブルと革張りのソファーが置かれており、紅茶や酒などを愉しむ場所になっているようだ。
その一画に腰を降ろす。七人で座っても十分に余裕のある大きなソファーだ。すぐにメイドの様な服装の者が現れ飲み物を窺う。
注文をするとしばらくして飲み物が目の前に置かれる。
儂は普段、発酵茶か焙煎茶を飲んでいるが、南方のアディスアベバ国の特産品だという珈琲というものを注文した。見た目は真っ黒で美味しそうには見えなかったが、香りは素晴らしくひと口飲んでみると芳醇でコクのある深い味わいがした。これはどこかで買えるのか?
「随分と良い宿を取ったのだな。代金はフリオニール持ちか?」
短い滞在だとは思うがこれだけの宿をこの人数で借りるとなれば相当な金額になるだろう。自費は勘弁願いたい。
「いえ、それが・・・フェンス殿やミリアーナ殿はまだしも我らはもっと安い宿で構わないと申したのですが、この街の長から是非にと言われまして。宿代も街長持ちで払って頂いています」
いくら王国からの貴族が来るとはいえ、一介の街長がそれだけの金額を払うものなのだろうか。何か理由があるのか。あまり良い予感はしない。
「あとで挨拶に伺ったほうが良いな。それで竜人族の雑貨店に関して何か話は聞けたのか?」
あくまでも要件はそちらだ。
儂らをこんな高い宿に泊まらせる理由は分からんが、貴族や領主や金や権利などが絡む話は御免蒙る。
「いえ、それはまだ。来訪目的を伝えて確認はして頂いてますが、話はフェンス殿をお待ちしてと思いまして」
「そうか。あまり気乗りはしないがさっさと話を聞いてさっさと用事を済ませてしまおう。」
あまり大人数で押し掛けても迷惑だろうし、街長の屋敷へは儂と、話を聞いたらその足で向かえるようルーテ。それと使者として面識のあるロディとルークの四人で構わないだろう。
ミリアーナは転移で魔力を多く消費したから休みたいと言ってさっさと部屋に入ってしまった。半分本音だろうがもう半分は絶対に面倒臭いからに違いない。
儂も出来ればそうしたいが──
街長の屋敷は、大通りに面した宿から奥に伸びるレンガ造りの道を進んだ先にあるらしい。通りには魔道具の常夜灯がいくつも設置されており、道沿いには様々な高級店や大きな屋敷が並んでいる。
その通りの突き当たりに一際大きな街長の屋敷があった。
各街の長の屋敷を比較したことはないが、明らかに一介の街の長が建てられる屋敷の大きさを逸脱しているだろう。
屋敷を囲む塀には立派な門もついており、衛兵がひとり常駐しているようだ。
「ヴェロスクード様、お待ちしておりました。どうぞお入り下さいませ」
衛兵は恭しく頭を下げると門を開け中へと促す。屋敷の入口にはいつのまにか黒服に身を包んだ執事然とした白髪の男が立っている。
「ヴェロスクード様、お待ちしておりました。どうぞご案内致します」
執事らしき男が扉を開ける。屋敷の中は高価そうな絨毯が敷かれ、通路には何だか分からない調度品が並ぶ。
衛兵といい執事といい、内装に関しても間違いなくうちの屋敷より豪華だ。どちらが貴族か分かったものじゃない。
「旦那様。ヴェロスクード様が参られました」
執事が通路奥の両開きの扉を大きく開くとひとりの男が立っていた。
「ヴェロスクード様。我が屋敷へようこそお出でくださいました。この街の長を務めておりますゴルドバと申します。ささ!どうぞお入り下さい」
ゴルドバと名乗る見るからに贅を尽くしているだろう風貌の男は満面の笑みで儂らを出迎える。
部屋の中央には先程の宿にあったものと似たようなガラスのテーブルと革張りのソファーが置かれており、そこに座るよう促される。
「いやしかし、あの魔王討伐の伝説の盾騎士ヴェロスクード様とこうしてお会いできるとは、光栄至極でごさいます。こうして出会えましたのも何かの縁、何か御入り用のものなどございましたら今後は是非ともこのゴルドバを御用命下さいませ」
「・・・あ、ああ。そうだな」
よく口が回るものだ。
こういった手合いが一番苦手だ。おかしなことを言っているわけではないのだが、どうにも信用出来ない。
「・・・ええと、ゴルドバ殿。それよりここにいる使者から要件は伝えていると思うが、それについては何か情報はありますかな?」
あまり長居はしたくないため、早速本題を切り出す。途端にゴルドバは頬を引きつかせ笑みを凍りつかせる。
「ええ。勿論存じておりますとも。確かにそういった竜人族が北西街におりますな」
ルーテの魔法の師匠、竜人族の『ティアマト』は今も変わらずこの街にいるようだ。
そうと分かれば長居は無用。早速向かうとしよう。
「あの者には私どもも非常に迷惑しておりまして、どういった御用件かは存じませんが、是非ヴェロスクード様からも一言いって頂けませんでしょうか」
「んん?」
何やら面倒な話になってきたな。
ゴルドバの屋敷をあとにし、北西街へと向かう。
先程までの南西街とは異なり、大通りに面した建物以外は古く煤けた建物や割れた窓に板張りをしているような建物が多く、中には取り壊されたままのものもあるが、その中に不自然なほどに新築のものや現在建築中の建物も見受けられる。
道も大半が砂利混じりの未舗装だが一部レンガ舗装の工事が始まっており、全体的に違和感がある。
ゴルドバの話によると──
「実はですね、昨年の春頃から街の再開発を行っていまして、まず建物などの老朽化が進んでいる北西区から工事を始めているのですが・・・ああ、勿論現住民には正当な額の立ち退き費用は払っておりますとも。その上希望者は建て替えが済み次第、優先的に入居を斡旋しております。
それなのに、あの竜人族の女を中心に数人の住民が反対活動なぞを行っておりまして、工場関係者や建築作業員などに嫌がらせ行為や取り壊しの決まった建物に立て籠りなどをしておりまして。工事予定がかなり遅れて非常に迷惑しているのです。」
とのことらしい。
確かに、建物を見ると安全面も考慮して建て替えは必要だろう。立ち退き費用を支払ったり入居の斡旋も行っているというから、何の問題もないようには思える。
何故、反対活動が起きているのだろうか。
「フ、フェンス様。正面に見える建物がティアマトのお店だった建物です」
ルーテが指差した途端、その建物の扉と二人の男が吹き飛ばされたように飛び出してきた。
「ふぇぇっ!!?」
男たちは不格好に転がり気を失ってしまったようだ。
「フン!何度来られても立ち退きはしませんよ。あとで扉の修理費の請求書を送りますからお願いしますね。」
壊れた扉からひとりの女性が出てきて既に気を失っている男たちに話しかけている。
その女性は細身の青いローブ姿に青みがかった珍しい色合いの真っ直ぐな長髪、その頭部には角らしきものが見える。
「ああ・・・テ、ティアマトォッ!!」
その姿を見たルーテが女性に向かって走り出す。青髪の女性もそれに気付くとしかめっ面を驚きの表情に変えた。
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