盾の騎士は魔法に憧れる

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再び手にした決意

ユリアの戦い1

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#ユリア


 いつもより、早く目が覚めた。

 でも、はたして寝ていたと言えるのかな・・・。

 いつもは自分でも呆れるくらいに寝付きが早く、気付いたら朝を迎えているのがいつものあたし。

 ルシオスにはいつも「悩みが無さそうで羨ましい」と、言われている。

 ホント、失礼な奴!あたしにだって悩んでる事はあるわよ。

 昨夜寝れなかったのはきっとその内のひとつのせい──


 少しベッドの上でゆっくりしてから呆っとする頭を無理矢理働かせて動き出す。毎朝メイドのジュディさんが汲んで用意してくれている冷たい井戸水で顔を洗い寝グセを整える。

 食堂に行くと、窓から見える庭の真ん中でおじいちゃんがいつものようにお茶を飲んでいるのが目に入る。

「あら。ユリアお嬢様、おはようございます。本日は少しお早いお目覚めでいらっしゃいますね? もう、朝食になさいますか?」

「カーラさん、おはよう。うん、お願いします」

 カーラさんの作るご飯は美味しい。あたし達が飽きないようにと毎日熱心に新しいメニューを考えてくれている。
 心でも読めるのかと思うくらいに、あれ食べたいな~と思っているとお願いしなくても作ってくれていたりする。

 あたしには絶対真似出来ない。

 席に着いてしばらく待っていると食事が運ばれてくる。
 今日は焼きたてのパンと色んな野菜の入ったトマトのスープ。それと新作だろうか?ふんわりとしたオムレツの中に緑の…、ホウレン草かな?それとベーコンの入ったキッシュと言う名のお料理。なんでも、西方にあるロレーヌ王国の伝統料理のひとつらしい。

 一口。うん、美味しい。

 もくもくと食事をしながら、庭にいるおじいちゃんに無意識に目が向いてしまう。どうしても一昨日からのことを考えてしまう──






 一昨日は、あたしの15歳の誕生日だった。
 前の日までは、どんなにその日を待ちわびたか。

 父さまは朝から神殿のお仕事だったから、おじいちゃんと一緒に大神殿で行う加護の儀式に行くことになっていた。

 極めて平静を装っていたけどホントは心臓が飛び出そうなほどドキドキしていた。
 あたしはどの神様の加護を頂けるんだろうか?
 そう想いながらも、ひとつ決めていたものはあった。

 儀式をしてくれるのは司祭のオックルトさん。少し変わったヒゲを付けている。儀式がどういうものか、どうしたら良いのかを説明してくれる。

 実は、その話しはこっそりヒルダ先生に聞いていてもう知っている。これも欲しい神様の加護を頂くための作戦のひとつだ。

 目を閉じて、考えていた文章を思い出しながら念じる。

 神様!どうかあたしの願い通りの加護を下さいますように!


 目を閉じていても眩しいくらいの光が起こる。
 オックルトさんの声の向こうから、優しい誰かの声が聴こえる気がする。

 しばらくすると段々と光が治まり元の明るさに戻る。
 不思議と誰も喋らないので、あたしも釣られて口をつぐむ。

 最初に声を出したのはおじいちゃん。

「・・・オックルト司祭?どうかされましたか?ユリアはどの神の加護を授かったのですか?」

 ドキドキ。

「い、いや。なんと、言いますか・・・。こ、これは・・・」

 ん?オックルトさん、どうしたの?

 目を開けオックルトさんを見ると、何故だかオロオロとしている。
 もしや、想い通りになったのだろうか?

「・・・神からの啓示は、ふ、付与の神の加護と出ています・・・」

 はぁ??

 ふ、付与の神──??

 何それ?そんな神様聞いたこともない?!

「オ、オックルト司祭・・・。な、何かの間違いでは?」
「・・・私も、そう思いたいのですが、間違いなく『付与の神の加護』と、出ております・・・」

「・・・・・・」

 おじいちゃんもかなり動揺しているみたい。

 あたしは、何だか何も考えられない。

 ふと、おじいちゃんと目が合う。

 どうしたら良いのかわからないけど。

 あたしはとりあえず、ニコッと笑っておいた。





 大神殿を出たあとおじいちゃんは魔法ギルドに行こうと言い出した。あたしの加護のことをミリアーナさんに聞いてみよう、とのことらしい。

「・・・付与の神?そんな神はいない。バカなの?」

 ミリアーナさんには真っ向否定されてしまった。

 おじいちゃんとミリアーナさんは昔からこんな感じらしい。
 ミリアーナさんがおじいちゃんに突っかかって、おじいちゃんがそれに言い 返して、よく同じパーティをやれてたなぁと思う。

 でも、あたしは知ってる。

 ホントは二人ともお互いを信頼し、きっと尊敬もしてる。
 ヒルダ先生とルシオスに会いによくここには来ている。ミリアーナさんは基本無口だからそんなに話したことはないけど、おじいちゃんのことをバカだとか、無駄とか言ったりしてるけど、あたし達が色んなことを話してると、おじいちゃんなら知ってるだろうから聞いたらとか、魔法のことでも、それはおじいちゃんのほうが詳しいとか、言っている。

 一緒に旅をしていた昔のことは、よくわからないけど。
 きっとミリアーナさんは、魔法に関してそれだけの知識を得るのがどれだけ大変で時間がかかるかを誰よりも知っているから、おじいちゃんを尊敬し、そして嫉妬もしたんじゃないかな?

 あたしもそうだから。

 そんなこと考えているうちに話しは終わったみたい。
 ギルドを出るとき、ヒルダ先生がおじいちゃんに謝っていたけど先生はミリアーナさんの気持ちに気づいてないのかな?

「ん?ああ、気にしなくていい。いつものことだ。あいつが儂に突っかかってくるのは昔からだ。理由はさっぱりわからんが・・・」

 おじいちゃんもまったく気づいてないみたい。やれやれ・・・。

「あたしは何となくわかるけどなぁ~」

 このままの関係が面白いから、ナイショにしとくけどね。





 おじいちゃんはこの後、療養所に行くみたい。
 おじいちゃんの魔法の先生で冒険者としての先輩でもある、ヨルニールさんに会いに行くんだろう。

 あたしは、どうしてもおじいちゃんと比べてフワフワというか、軽い?感じがするからちょっと苦手。
 ここで別れて先に帰ることにした。

 昨日は興奮してたのかな?ちゃんと寝れなかったから、少し眠いのもある。

 帰ってお昼ご飯食べたら、少しお昼寝しよう。





 一人の帰り道。

 話し相手がいないと、色んなこと考えてしまう。

 付与の神の加護って・・・、何なんだろ?
 そもそもそんな神様いないってミリアーナさんも言ってたし、司祭のオックルトさんも知らなかったし。

 おじいちゃんも動揺してたみたい。
 知っていそうな人に聞きに廻ってくれてるし。

 でも、おじいちゃんはあたしにどの神様の加護を期待していたんだろう・・・。
 あたしは魔力が多いみたいだから、魔法系の神様かな?

 そういえば、父さまも母さまもおばあさまも、魔法系の神様の加護を授かっている。武具系の神様なのは、おじいちゃんだけだ。

 あたしは、実はコレ!というのを決めていた。
 その加護を頂けるよう、色んな人に話を聞いて色々作戦を考えたりもした。

『盾の神様の加護』を頂けるように──




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