盾の騎士は魔法に憧れる

めぐ

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再び手にした決意

検証と事件?

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 ミリアーナが帰ったあと、儂とユリアは庭に出る。

 さっそく付与魔法の効果の程を確認するためだ。とりあえずまずは基本の呪文と術式の確認からだ。庭のテーブルに紙を広げる。

「まずこれが基本の呪文と術式だな。これのここの部分を変えると別の効果になる」
「うん。それは大丈夫。効果としてはどんなものがあるの?」

 別の紙を広げ、様々な効果の種類を書き記す。

「まず、状態異常には──

 『麻痺』、痺れて動けなくなる。
 『睡眠』、これはそのまま強制的な眠りを与える。
 『毒』、徐々に身体を蝕む魔法の毒だな。
 『静音』、声や音を出せなくなり、魔法詠唱の妨害などに使える。
 『脱力』、力が入らないようにし、攻撃や防御の性能を下げる。
 この、5つがある」

「ふむふむ」

「能力向上は──

 『パワー』力。『ガード』防御力。『アクセル』速度。『マナ』魔力。
 『レジスト』魔法耐性。

  この、5つの『ブースト』だな。」

「ふ、ふむふむ」

「この汎用術式の利点は、一部分を変えれば、多種多様な効果を行えるといったところだが、欠点はしっかりと覚えないと、間違えて味方に『毒』を付与したり、敵の『力』を上げてしまったりするといった点だな」

「な、なるほど・・・」
「便利ではあるが、そういった間違いもないとは言えない。戦闘時に間違えると一気に不利になる恐れがある。慣れるまでは汎用術式で練習するのが良いと思うが、実戦で使うまでにはそれぞれの呪文と術式を覚えておくといいだろう」
「え?え?」

「複数の効果を与えることも出来るが、これは汎用術式では行わないように。状態異常にも、能力向上にも使える術式なため、術式の混乱が起きてしまい、不発や最悪暴発もありえる」

「・・・・・・」

「ん?ユリア、聞いてるか?」
「うう~~っ!そんなに一度にたくさん言われても、覚えられないよっ!!」

 しまった。つい興が乗ってあれこれ話し過ぎてしまった。

「あ、ああ。すまんすまん。とりあえず汎用術式を使って簡単なところから実践してみようか?」




 庭の真ん中に、ハリルを座らせる。

 少し離れたところに、ハリルに手をかざし構えるユリア。

「ではまず、この前もやった速度向上の『アクセルブースト』を使ってみようか」
「う、うんっ!ア、『アクセルブーストっ!!』

 ユリアが魔法を唱えると、ハリルの身体が緑色の膜に包まれたように光る。速度向上魔法をかけたときの反応だ。

「よし!ハリル、ちょっと走れ」
「ワンッ!!」

 一鳴きして、庭をグルグルと走り始める。
 う~~ん。前に草原で、ハリルに同じ魔法をかけたときとあまり違いがないような。

 ユリアも感じているようで、表情は冴えない。

「よ、よしっ!次は状態異常魔法を試してみようか?」

 今度は、儂が庭の真ん中に立つ。

「では、静音の『サイレンス』を儂にかけてみてくれ。儂の魔法耐性とユリアの魔力差を考えると、通常なら確率は低めだが、加護の効果で確率が上がっていれば成功するだろう」

「・・・じゃあ、いくよ?
   『サイレンスっ!!』

 沈黙が流れる。

 どうだろう?効果はあっただろうか?
 魔力が流れる感じはあったが、どうにも効いた感じはしない。

 声が出るか確かめたいが、出し辛い・・・。

「・・・おじいちゃん?どう・・・効果あった??」

 う~~ん。どうしようか?
 声が出るか出ないかを確かめるのが、こんなにも難しいとは。

 どうしたものかと悩んでいると、急に背中に凄い勢いのものがぶつかる。

「ぐはっ!!?」

 何だ?!何がぶつかった!?

 振り返り見ると、ハリル。どうやら走るのが早くなって興奮し、屋敷の裏まで走っていってしまったハリルが、庭に立っている儂を見て遊んでくれると思ったのか、思いきりぶつかって来たようだ。

 あ──

 声を出してしまった。

 ユリアを見ると、あぁ。俯いてしまっている。

「ユ、ユリア?まだ試していない魔法もあるし、何か条件とかがあるかもしれないし。もう少しやってみよう!なっ?」
「・・・うん」

 その後、魔法を変え、やり方を変え、色々と試してみたが、どれも効果は変わらなかった──





 翌日──

 今日はヒルダ先生の魔法の授業の日だ。

 昨日、二人で色々と試してみたが成果は無く・・・。明日、ヒルダが来たら相談してみよう。ということになった。

 儂はいつものように朝食を食べた後、庭で報告書を読みながら、食後のお茶を飲む。ユリアも朝食を食べているがどことなくいつもの元気がない。

 まぁ、仕方ないか。

 ヒルダと話して、少しでも良い流れになればいいが。

 しかし、肝心のヒルダだが、今日は少し遅れているようだ。いつもの時間は過ぎていると思うが、まだ現れない。
 そうこう思っていると、門の方が騒がしくなる。メイドのカーラが誰かと話しているようだ。

 ヒルダが来たかな?と思い、視線を向けると、そこに尋常ではない雰囲気のヒルダが飛び込んでくる。

「ヒ、ヒルダ?!そんなに慌ててどうした・・・?少し遅れたくらいで、儂は怒らんぞ?」

「はあっ、はあっ、はあっ──」

 ヒルダは、乱れる息を無理矢理整える。

「っ!フ、フェンスさんっ!!
 ル・・・はあっ・・・ルシオスがっ!!」

 涙にまみれた顔でルシオスの名を叫ぶ。

 ルシオスがどうしたんだ──?!



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