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第三章 こどもだけだって
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次の日も、その次の日も、裕太は河原に姿を現さなかった。
「予定をかえて、やっぱり遠くまで行くことにしたのかなって思ったけど、やっぱりおかしいよ。三日経っても帰ってこないなんて……」
オレがそわそわと落ち着かずに歩き回っていると、唯人も考えこむように黙った。
晴樹も、うーんって唸る。
「どこかで野宿して遠くを目指すつもりだったら、行く前にそう言うもんなあ」
実莉衣も頷く。
「うん。みんなに心配かけるようなこと、裕太くんはしないと思う。スバルに、近場を探してみるって言ってたんだし」
「だとしたら、何か、あったのかな」
穂乃果が不安そうに自分の手をぎゅっと握りしめれば、実莉衣も不安そうに声を小さくした。
「何か、って……」
「自転車で転んで動けない、とか? 土手から落ちちゃった、とか?」
「晴樹、不安にさせるようなこと言わないでよ」
「オレもそれが心配で、唯人と二人で裕太の担当区域を探しに行ったんだけど、見つからなかったんだよ」
オレが言えば、女子二人の顔が暗くなる。
だけど、ふっと実莉衣が何か思いついたように顔を上げた。
「まさか……」
愕然としたように呟いた実莉衣に、唯人が「どうした?」と声をかける。
「いや、うん。裕太くんに限ってそんなことないと思うけど、出口を見つけて一人で帰っちゃった、とか。バルビットくんを呼んでリタイアした、とか……」
その言葉には、晴樹も唯人も目を見開いた。
「まさか! 裕太がそんなことするわけないよお!」
「裕太はこれまで俺たちの中の誰よりもみんなのことを考えて動いてくれたんだぜ? なにより、気になることはとことん調べる裕太がリタイアなんてするわけないし、出口を見つけたら喜んで報告に帰ってくるはずだ」
うん。オレもそう思う。
でも、実莉衣がそう疑ってしまう気持ちもわからなくはないんだ。
だけど、本人がいないんだから、確かめようがないことでオレたちの空気が悪くなっても仕方ない。
「まあ、大丈夫だよ。もし晴樹が言うように転んだりして動けなくなったなら、バルビットくんを呼んでリタイアするだろうし。だから裕太のことは心配いらないよ、きっと。出口が見つかって帰ったんなら、裕太の担当区域をオレたちも探せばいいってことだろ? つまりオレたちはヒントをゲットしたってことになる」
な? ってオレが笑顔をつくってみんなの顔を見回せば、唯人と晴樹はあいまいにうなずいてくれた。
「そうだよね。帰ってこない理由は、わからないけど、そう考えれば、裕太くんはきっと、無事だよね」
穂乃果もそう言ってくれて、オレは残る実莉衣の顔をこわごわうかがった。
「うん……。あたしも、裕太くんのこと疑いたいわけじゃないしね。とにかく無事だって信じられれば、いいか」
小さくそう笑ったけど、あ、無理してるな、って思った。
空気を悪くしちゃいけない。明るい実莉衣だから、きっとそう思って、心の中の言葉を飲み込んじゃったんだ。
穂乃果も心配そうに実莉衣を見ていたけど、その本人に「さ、じゃあ今日はみんなで裕太くんの担当区域を探してみよ!」と明るく切り替えたように言われれば、オレも穂乃果も頷くしかなかった。
□
一週間経っても、裕太も出口も見つからなかった。
いつからか、オレたちはテントで泊まるのをやめた。
ご飯を作ったり風呂に入るのは河原だけど、夜寝る時はそれぞれの家に帰った。
みんな、少しだけ一人の時間がほしくなったんだ。
実莉衣と穂乃果が嫌いになったわけでもなく離れたくなった理由が、オレたちにもよくわかった。
だけど実莉衣は帰る家がないから、穂乃果の家だ。
それでも、一度離れたことで、お互いに反省点も寂しさもわかったみたいで、今は二人でもうまくやれてるようだった。
だから、前とは違って時々ベランダから吹っ切れたみたいな楽しい話し声が聞こえることがある。
オレはまたうっかり女子トークを聞いてしまわないように、そんなときは穂乃果の家からは一番離れているお父さんの部屋のベッドで寝ることにしていた。
その日もオレたちはみんなで裕太の担当区域で裕太と出口を探していた。
だけど、正直言ってやみくもに探しても見つからないような気がした。
何かヒントがあるんじゃないか。
そう思って、出口がありそうな場所を考えてみた。
一番先に思いついたのは学校。だけどスタートがそこだったし、発電機を探しに職員室に入ったりもしたから違うかな。ドアはいっぱいあるけど、しらみつぶしに開けてみなきゃわかんない出口なんて、バルビットくんならつまらないって言いそうだ。
次は、駅。ほら、駅ってさ、電車に乗って遠くまで行くから、『この町の出口』って感じするじゃん?
だけど駅は裕太も実莉衣と穂乃果も行ってるけど怪しいものはなかったらしい。
オレも改めて行ってあらゆるドアを触ってみたけど、カギがかかってたり、開いても何も起こらなかった。
そうなんだよな。謎解きゲーム的にいうと、カギが必要ってパターンもあるんだよな。
まずはそのカギを見つけなきゃいけない、っていうさ。防災倉庫みたいに。
でも駅や学校の開かないドアって、それ、勝手に開けちゃいけないやつじゃん?
いくら自由にカギを探せるっていっても、オレたち的に『わるいこと』はしたくないんだよね。
ゲームを作る側だって、社会のルールをやぶらなきゃいけない出口なんて用意しないと思うんだよな。だって、いつも子どもにえらそうに説教してる大人が作った世界なんだから。
まあ、つまり。
正直に言えば、オレたちはちょっと行きづまっていた。
「原点……。原点、ねえ」
あの日裕太は、原点にもどると言っていた。
それで出口を見つけたとしたら、それがヒントになるはず。
うーん。
わからない……。
あきらめて河原に戻ると、晴樹がうずくまっているのが見えた。
「晴樹くん! しっかりして!」
穂乃果と実莉衣が青ざめた顔で必死に声をかけている。
「どうしたんだ?!」
オレの後ろから唯人もかけつけて、みんなで晴樹の周りを囲む。
晴樹は痛そうにお腹を抱えて、額にはあぶら汗が浮いていた。
「おい、晴樹! 一体何があったんだよ!」
オレの声にも、一瞬顔をあげただけで何も答えられないみたいだ。
「どうしよう……、晴樹くん、死んじゃったらどうしよう!」
実莉衣もおろおろしていて、ちゃんと話せる感じじゃない。
かわりに穂乃果が「あのね」と教えてくれえた。
「晴樹くんが、先にもどってきてて、何か食べてたの。それで、私たち、何食べてるのって、声かけたら、それが、杏仁豆腐で……」
「アンニンドウフ? なんでそんなものを……」
驚いて聞き返せば、どうやらこれまでも晴樹はこっそりいろいろなものをお店で買ってきては食べていたらしい。
電気が使えなくなってしばらくは、駄菓子のミニプリンを食べていたなんてことも、オレは知らなかった。
たしかにあれなら冷蔵庫に入っていなくても食べられる。
コンビニのプリンやデザートが食べられなくなって、それを食べてたんだろう。
だけど小学校近くのおばあちゃんがやってる駄菓子屋のミニプリンも、もう全部食べ尽くしてしまったらしい。
「だから、アンニンドウフに手を出したってことか?」
「プリンはダメかもしれないけど、アンニンドウフならなんかイケる気がした、って言って」
慌てて落ちてたアンニンドウフの空容器を拾ってみれば、いやいや、ちゃんと冷蔵庫に入れろって書いてあるじゃん!
「いやあ、これはダメだろ。腐ってたんじゃないのか?」
「うん、私たちも、そう思って、晴樹くんに、大丈夫かって、聞いたら、急にお腹を痛がり出して……」
ん……? 待てよ?
もしかして――
「なあ、それまでは晴樹は元気だったのか?」
「うん……。あっ」
穂乃果も気づいたみたいだ。あのチョコ入りのカレーと同じだ、って。
ここは仮想の世界だ。だけど脳と体はつながってる。
きっと、晴樹は実莉衣と穂乃果に言われて、『ヤバイもの食べちゃった!』って思ったんだ。
だから体が反応して、腐ったものを食べたみたいにお腹が痛くなったんだ。
「晴樹! さっきのアンニンドウフ、腐ってなんかないよ。大丈夫だ、晴樹の気のせいだよ」
「何言ってんのよ?! こんなに痛がってるのに、大丈夫なわけないじゃない!」
「いや、ここは仮想世界だ。『腐ってる』って思うから体が反応してるだけなんだよ、きっと」
「あ……、そうか」
実莉衣も気が付いたらしい。
「晴樹くん、腐ってないって! 大丈夫だって!」
慌ててそう声をかけたけど、晴樹はあぶら汗をかいてうーうー言っている。
「オレ……素直だから……。自分を騙すとか、そういうの、ムリなんだよなあ」
オレははっとした。
「バルビットくんが、ケガをしたら痛いし、体にそういう信号が送られるって言ってたよな?」
「そういえば言ってたよね」
実莉衣の顔はだんだんと思い出してきたように、青ざめていった。
「もしかして、お腹痛いって思ったせいで、現実の体も痛がってるかもしれないってこと? やだ、晴樹くん、死なないで! こわいよ!」
「病院に行かなきゃ――……」
言葉の途中で穂乃果の声が消えた。
そうだ。
この世界にも病院はある。
だけど。
医者はいない。
「予定をかえて、やっぱり遠くまで行くことにしたのかなって思ったけど、やっぱりおかしいよ。三日経っても帰ってこないなんて……」
オレがそわそわと落ち着かずに歩き回っていると、唯人も考えこむように黙った。
晴樹も、うーんって唸る。
「どこかで野宿して遠くを目指すつもりだったら、行く前にそう言うもんなあ」
実莉衣も頷く。
「うん。みんなに心配かけるようなこと、裕太くんはしないと思う。スバルに、近場を探してみるって言ってたんだし」
「だとしたら、何か、あったのかな」
穂乃果が不安そうに自分の手をぎゅっと握りしめれば、実莉衣も不安そうに声を小さくした。
「何か、って……」
「自転車で転んで動けない、とか? 土手から落ちちゃった、とか?」
「晴樹、不安にさせるようなこと言わないでよ」
「オレもそれが心配で、唯人と二人で裕太の担当区域を探しに行ったんだけど、見つからなかったんだよ」
オレが言えば、女子二人の顔が暗くなる。
だけど、ふっと実莉衣が何か思いついたように顔を上げた。
「まさか……」
愕然としたように呟いた実莉衣に、唯人が「どうした?」と声をかける。
「いや、うん。裕太くんに限ってそんなことないと思うけど、出口を見つけて一人で帰っちゃった、とか。バルビットくんを呼んでリタイアした、とか……」
その言葉には、晴樹も唯人も目を見開いた。
「まさか! 裕太がそんなことするわけないよお!」
「裕太はこれまで俺たちの中の誰よりもみんなのことを考えて動いてくれたんだぜ? なにより、気になることはとことん調べる裕太がリタイアなんてするわけないし、出口を見つけたら喜んで報告に帰ってくるはずだ」
うん。オレもそう思う。
でも、実莉衣がそう疑ってしまう気持ちもわからなくはないんだ。
だけど、本人がいないんだから、確かめようがないことでオレたちの空気が悪くなっても仕方ない。
「まあ、大丈夫だよ。もし晴樹が言うように転んだりして動けなくなったなら、バルビットくんを呼んでリタイアするだろうし。だから裕太のことは心配いらないよ、きっと。出口が見つかって帰ったんなら、裕太の担当区域をオレたちも探せばいいってことだろ? つまりオレたちはヒントをゲットしたってことになる」
な? ってオレが笑顔をつくってみんなの顔を見回せば、唯人と晴樹はあいまいにうなずいてくれた。
「そうだよね。帰ってこない理由は、わからないけど、そう考えれば、裕太くんはきっと、無事だよね」
穂乃果もそう言ってくれて、オレは残る実莉衣の顔をこわごわうかがった。
「うん……。あたしも、裕太くんのこと疑いたいわけじゃないしね。とにかく無事だって信じられれば、いいか」
小さくそう笑ったけど、あ、無理してるな、って思った。
空気を悪くしちゃいけない。明るい実莉衣だから、きっとそう思って、心の中の言葉を飲み込んじゃったんだ。
穂乃果も心配そうに実莉衣を見ていたけど、その本人に「さ、じゃあ今日はみんなで裕太くんの担当区域を探してみよ!」と明るく切り替えたように言われれば、オレも穂乃果も頷くしかなかった。
□
一週間経っても、裕太も出口も見つからなかった。
いつからか、オレたちはテントで泊まるのをやめた。
ご飯を作ったり風呂に入るのは河原だけど、夜寝る時はそれぞれの家に帰った。
みんな、少しだけ一人の時間がほしくなったんだ。
実莉衣と穂乃果が嫌いになったわけでもなく離れたくなった理由が、オレたちにもよくわかった。
だけど実莉衣は帰る家がないから、穂乃果の家だ。
それでも、一度離れたことで、お互いに反省点も寂しさもわかったみたいで、今は二人でもうまくやれてるようだった。
だから、前とは違って時々ベランダから吹っ切れたみたいな楽しい話し声が聞こえることがある。
オレはまたうっかり女子トークを聞いてしまわないように、そんなときは穂乃果の家からは一番離れているお父さんの部屋のベッドで寝ることにしていた。
その日もオレたちはみんなで裕太の担当区域で裕太と出口を探していた。
だけど、正直言ってやみくもに探しても見つからないような気がした。
何かヒントがあるんじゃないか。
そう思って、出口がありそうな場所を考えてみた。
一番先に思いついたのは学校。だけどスタートがそこだったし、発電機を探しに職員室に入ったりもしたから違うかな。ドアはいっぱいあるけど、しらみつぶしに開けてみなきゃわかんない出口なんて、バルビットくんならつまらないって言いそうだ。
次は、駅。ほら、駅ってさ、電車に乗って遠くまで行くから、『この町の出口』って感じするじゃん?
だけど駅は裕太も実莉衣と穂乃果も行ってるけど怪しいものはなかったらしい。
オレも改めて行ってあらゆるドアを触ってみたけど、カギがかかってたり、開いても何も起こらなかった。
そうなんだよな。謎解きゲーム的にいうと、カギが必要ってパターンもあるんだよな。
まずはそのカギを見つけなきゃいけない、っていうさ。防災倉庫みたいに。
でも駅や学校の開かないドアって、それ、勝手に開けちゃいけないやつじゃん?
いくら自由にカギを探せるっていっても、オレたち的に『わるいこと』はしたくないんだよね。
ゲームを作る側だって、社会のルールをやぶらなきゃいけない出口なんて用意しないと思うんだよな。だって、いつも子どもにえらそうに説教してる大人が作った世界なんだから。
まあ、つまり。
正直に言えば、オレたちはちょっと行きづまっていた。
「原点……。原点、ねえ」
あの日裕太は、原点にもどると言っていた。
それで出口を見つけたとしたら、それがヒントになるはず。
うーん。
わからない……。
あきらめて河原に戻ると、晴樹がうずくまっているのが見えた。
「晴樹くん! しっかりして!」
穂乃果と実莉衣が青ざめた顔で必死に声をかけている。
「どうしたんだ?!」
オレの後ろから唯人もかけつけて、みんなで晴樹の周りを囲む。
晴樹は痛そうにお腹を抱えて、額にはあぶら汗が浮いていた。
「おい、晴樹! 一体何があったんだよ!」
オレの声にも、一瞬顔をあげただけで何も答えられないみたいだ。
「どうしよう……、晴樹くん、死んじゃったらどうしよう!」
実莉衣もおろおろしていて、ちゃんと話せる感じじゃない。
かわりに穂乃果が「あのね」と教えてくれえた。
「晴樹くんが、先にもどってきてて、何か食べてたの。それで、私たち、何食べてるのって、声かけたら、それが、杏仁豆腐で……」
「アンニンドウフ? なんでそんなものを……」
驚いて聞き返せば、どうやらこれまでも晴樹はこっそりいろいろなものをお店で買ってきては食べていたらしい。
電気が使えなくなってしばらくは、駄菓子のミニプリンを食べていたなんてことも、オレは知らなかった。
たしかにあれなら冷蔵庫に入っていなくても食べられる。
コンビニのプリンやデザートが食べられなくなって、それを食べてたんだろう。
だけど小学校近くのおばあちゃんがやってる駄菓子屋のミニプリンも、もう全部食べ尽くしてしまったらしい。
「だから、アンニンドウフに手を出したってことか?」
「プリンはダメかもしれないけど、アンニンドウフならなんかイケる気がした、って言って」
慌てて落ちてたアンニンドウフの空容器を拾ってみれば、いやいや、ちゃんと冷蔵庫に入れろって書いてあるじゃん!
「いやあ、これはダメだろ。腐ってたんじゃないのか?」
「うん、私たちも、そう思って、晴樹くんに、大丈夫かって、聞いたら、急にお腹を痛がり出して……」
ん……? 待てよ?
もしかして――
「なあ、それまでは晴樹は元気だったのか?」
「うん……。あっ」
穂乃果も気づいたみたいだ。あのチョコ入りのカレーと同じだ、って。
ここは仮想の世界だ。だけど脳と体はつながってる。
きっと、晴樹は実莉衣と穂乃果に言われて、『ヤバイもの食べちゃった!』って思ったんだ。
だから体が反応して、腐ったものを食べたみたいにお腹が痛くなったんだ。
「晴樹! さっきのアンニンドウフ、腐ってなんかないよ。大丈夫だ、晴樹の気のせいだよ」
「何言ってんのよ?! こんなに痛がってるのに、大丈夫なわけないじゃない!」
「いや、ここは仮想世界だ。『腐ってる』って思うから体が反応してるだけなんだよ、きっと」
「あ……、そうか」
実莉衣も気が付いたらしい。
「晴樹くん、腐ってないって! 大丈夫だって!」
慌ててそう声をかけたけど、晴樹はあぶら汗をかいてうーうー言っている。
「オレ……素直だから……。自分を騙すとか、そういうの、ムリなんだよなあ」
オレははっとした。
「バルビットくんが、ケガをしたら痛いし、体にそういう信号が送られるって言ってたよな?」
「そういえば言ってたよね」
実莉衣の顔はだんだんと思い出してきたように、青ざめていった。
「もしかして、お腹痛いって思ったせいで、現実の体も痛がってるかもしれないってこと? やだ、晴樹くん、死なないで! こわいよ!」
「病院に行かなきゃ――……」
言葉の途中で穂乃果の声が消えた。
そうだ。
この世界にも病院はある。
だけど。
医者はいない。
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