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第1章 悲劇の始まり
12話
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僕たちは森の入り口近くまで来た。
後悔が頭をよぎる。父さんと母さんを残したまま逃げてよかったのか。
だが、戻ったところでおそらく何もできない。それほどのまがまがしいなにかをあの男から感じた。
あいつの狙いはきっと僕だ。戻れば兄様は許してくれるかもしれない。でも怖い。恐怖、それが僕の意思を覆い隠す。
突然兄様が倒れる。
「どうしたの兄様」
声をかけても返事がない。様子がおかしい。でも早くしないと追いつかれてしまう。一刻の猶予もない。
そのとき後方で何かのうめき声が聞こえた。
なんだあれ。
そこには目の結膜が黒く染まり肌が黒色の何かがたっていた。
「うぅぅ」
獣のような目がこちらを睨みつける。
僕たちを見つけると猛スピードでこちらにかけてくる。
僕は鞘から剣を抜く。
アイツの追ってか。
動きが直線的だから落ち着いて対処すれば大丈夫。落ち着け、落ち着け......
兄様が動けない今僕がしっかりしないと。自分に活を入れる。
何度も兄様と練習した動作を再現する。
相手の動きをよく見て躱す。背中に回り込み足で押し蹴る。
倒れた背中から剣を突き刺す。
「はあっ」
「グガアアア」
動きが止まり安堵する。
力がなくなったそれを見ると見覚えのある顔だと気づく。
そこであいつの言っていた言葉を思い出す。
ーー「そろそろ人じゃなくなるころですかね?」
「ッ! うっ……ごめんなさい」
吐きそうになる口元を抑え今もなお倒れている兄様のほうへ向かう。
「どうしたの兄様」
「なんでかしらねーけど指が動かないんだ」
兄様の結膜が黒色に染まっている。
足と手の爪先が徐々に黒く変色していってる。
さっきの人と同じ。首筋になにかに刺された跡がある。
「刺せルイ」
先ほどの戦いを見ていたのだろう。兄様は悟ったのだ。あの黒いのと同じになる未来を。
「いやだ」
「俺が俺じゃなくなる前に早く」
「そんな……」
うまく力が入らず握りていない弱々しい兄様の握り拳が僕の胸に軽く当てられる。
「俺の分まで生きてくれルイ。お前は俺より優秀だからな。最後まで情けない兄様でゴメンな。」
そう言って笑う。
「なんで諦めるんだよ、、いつもの負けず嫌いはどこいったんだよおおお! ちけくしょおお! なおれ! なおれ! なおれ!」
母様の目も不死の病も治させた力がまるで効かなかった。
「なんで……なんで治らないんだよ!」
自惚れていたのだ、自分が特別であると。だからなんの躊躇いもなしに治してしまった。後悔してももう戻ることは出来ない。
「ルイ」
「……いやだ」
「お願いだ」
「....ぐっうああああああ」
「ありがとう……ルイ」
(兄様の分まで僕が生きる。兄様の目指していた最強の剣士に僕がなる。誰かを守れるように。って家族を守れない僕が何言ってるんだよ。
絶対に許さない。あの男だけは絶対に。)
「取り込み中悪いな」
姿を現したのは赤色に染まった髪を後ろで結び着物を着ている女性。腰には刀を携えている。
「私の名は神童 紅。状況を教えてもらおうか」
後悔が頭をよぎる。父さんと母さんを残したまま逃げてよかったのか。
だが、戻ったところでおそらく何もできない。それほどのまがまがしいなにかをあの男から感じた。
あいつの狙いはきっと僕だ。戻れば兄様は許してくれるかもしれない。でも怖い。恐怖、それが僕の意思を覆い隠す。
突然兄様が倒れる。
「どうしたの兄様」
声をかけても返事がない。様子がおかしい。でも早くしないと追いつかれてしまう。一刻の猶予もない。
そのとき後方で何かのうめき声が聞こえた。
なんだあれ。
そこには目の結膜が黒く染まり肌が黒色の何かがたっていた。
「うぅぅ」
獣のような目がこちらを睨みつける。
僕たちを見つけると猛スピードでこちらにかけてくる。
僕は鞘から剣を抜く。
アイツの追ってか。
動きが直線的だから落ち着いて対処すれば大丈夫。落ち着け、落ち着け......
兄様が動けない今僕がしっかりしないと。自分に活を入れる。
何度も兄様と練習した動作を再現する。
相手の動きをよく見て躱す。背中に回り込み足で押し蹴る。
倒れた背中から剣を突き刺す。
「はあっ」
「グガアアア」
動きが止まり安堵する。
力がなくなったそれを見ると見覚えのある顔だと気づく。
そこであいつの言っていた言葉を思い出す。
ーー「そろそろ人じゃなくなるころですかね?」
「ッ! うっ……ごめんなさい」
吐きそうになる口元を抑え今もなお倒れている兄様のほうへ向かう。
「どうしたの兄様」
「なんでかしらねーけど指が動かないんだ」
兄様の結膜が黒色に染まっている。
足と手の爪先が徐々に黒く変色していってる。
さっきの人と同じ。首筋になにかに刺された跡がある。
「刺せルイ」
先ほどの戦いを見ていたのだろう。兄様は悟ったのだ。あの黒いのと同じになる未来を。
「いやだ」
「俺が俺じゃなくなる前に早く」
「そんな……」
うまく力が入らず握りていない弱々しい兄様の握り拳が僕の胸に軽く当てられる。
「俺の分まで生きてくれルイ。お前は俺より優秀だからな。最後まで情けない兄様でゴメンな。」
そう言って笑う。
「なんで諦めるんだよ、、いつもの負けず嫌いはどこいったんだよおおお! ちけくしょおお! なおれ! なおれ! なおれ!」
母様の目も不死の病も治させた力がまるで効かなかった。
「なんで……なんで治らないんだよ!」
自惚れていたのだ、自分が特別であると。だからなんの躊躇いもなしに治してしまった。後悔してももう戻ることは出来ない。
「ルイ」
「……いやだ」
「お願いだ」
「....ぐっうああああああ」
「ありがとう……ルイ」
(兄様の分まで僕が生きる。兄様の目指していた最強の剣士に僕がなる。誰かを守れるように。って家族を守れない僕が何言ってるんだよ。
絶対に許さない。あの男だけは絶対に。)
「取り込み中悪いな」
姿を現したのは赤色に染まった髪を後ろで結び着物を着ている女性。腰には刀を携えている。
「私の名は神童 紅。状況を教えてもらおうか」
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2024年10月追記
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