上 下
3 / 3

地獄の一年

しおりを挟む
騎士たちに捕まった僕は、研究所らしきところに連れてこられ、独房のような個室に監禁された。
手術台に乗せられ、手と足は金属でできた鎖で縛り付けられる。
手足に力をこめるがびくともしなかった。

数時間後、

「お待たせしたね、ゼラ君。私の名前はクラーク」

現れたのは白衣を着た頬が痩せこけた気味の悪い男だった。

「僕はどうなるんですか」

「お世辞にも無事とは言えないだろうね」

言いながらクラークという人は台の上にある鋭利なナイフを手にもつ。

「君は勇敢だ。魔人の少女を助ける、まさに正義の味方だ。だが、君は一つ間違いを犯した。魔人は悪、正義ではない。悪の味方には、…罰が下る」

突然、腕に激痛が走る。

「があああああああ!」

見るとクラークの持つナイフが僕の腕に突き刺さっていた。





あれから一ヶ月が経った。

腕と足の筋肉は衰え腕に無数の注射の跡、身体にはたくさんの傷痕がついていた。

「殺して…」

この一ヶ月で味わったのは死んだほうがマシだと思えるくらいの極限の地獄。

ナイフで体を切り刻まれ、致死量ギリギリまで血を抜かれた。そして、大量に輸血される。それの繰り返し。変な薬を無理矢理飲まされたり、得体の知れない液体を注射されたりもした。

明かりのない密室の中でそんなことを繰り返され僕の精神は擦り切れていた。

「ゼラ君。まだ弱音を吐くのは早いよ。まだ試したいことが山ほどあるんだ。気をしっかり持ってくれ、キヒヒッ」

クラークはそんな僕を見ながらいつも楽しそうに不気味に笑う。



半年が経った。

数えてたわけじゃない。クラークから聞かされた。彼はいつもおしゃべりだ。変わり者だからきっと話し相手がいないんだろう。

「魔力を持つものを魔人というのは間違いだ。正確には魔力を体外へ放出できるものを魔人という。人間の血液には皆、魔力が流れている。だが、不思議なことに男性は魔力を体の外に出すことができない。なぜ、誰も知らないかって?隠しているんだよ、奴らは」

クラークがいつものように独り言を話す。僕に相槌をうつ気力はない。もうそんなことどうだっていい。



九ヶ月が経った。

僕はもう植物状態だった。意識はある。けどもう何も考えられない。

「くそ!なんで、なんで魔力が放出されないんだ!魔力の濃度も今までにないほど高いのに!何か膜のようなものがあるんだ!それが魔力の放出を妨害している!」

クラークの怒鳴り声が微かに聞こえる。

「ホワイトクロウの上位層が使っている神力という力もきっと魔力と同じだ!やつらは民を騙して力を独占している!もう少しで私も力を手に入れられるのに!早くしないと!奴らに気づかれる前にっ!」



ここにきてちょうど一年。

「やっと手に入れた。これを飲めば私にも力が」

クラークは赤い血の入った試験管をとても嬉しそうに持っていた。
そして、中に入った血を自分の口へと流し込んだ。

「ゴクゴクッ。分かる!感じるぞ!力が!外に出たがっている」

その瞬間、クラークの胸に一本の剣が突き刺さる。
剣を握っていたのは白鎧の髭を生やした男だった。

「まったく、王城から魔女の血を盗むなんて正気の沙汰じゃねぇぞ。なぁ、クラークさん」

「お前は、七星剣の…ぐふっ」

クラークの口から血が噴き出す。

「残念だがあんたは」

男はクラークから剣を抜き、

「知りすぎた」

なんの躊躇いもなく首を刎ねた。
その動作でクラークの血は僕の顔にまで飛んできた。そして、数滴の血が僕の口の中へと入り込む。

「こいつが被検体か…。念のため殺しておこう」

男がそういった直後、凄まじい衝撃が研究所全体を襲う。

「なんだ?」

密室だった部屋には巨大な穴が空いていた。

穴の奥には巨大な影。
男が目を凝らすとそこには一匹の魔人が佇んでいた。

魔人は僕を見てケモノが唸るような声で

「ムカエニ、キタ」

とそう言った。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語

瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。 長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH! 途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!

【R18】聖女のお役目【完結済】

ワシ蔵
恋愛
平凡なOLの加賀美紗香は、ある日入浴中に、突然異世界へ転移してしまう。 その国には、聖女が騎士たちに祝福を与えるという伝説があった。 紗香は、その聖女として召喚されたのだと言う。 祭壇に捧げられた聖女は、今日も騎士達に祝福を与える。 ※性描写有りは★マークです。 ※肉体的に複数と触れ合うため「逆ハーレム」タグをつけていますが、精神的にはほとんど1対1です。

エルフ姫が壁穴でひどいことされる、ありがちなファンタジーエロっぽいやつ

かめのこたろう
ファンタジー
壁穴とか、壁尻とかそんなやつ

【R18】スライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話

白木 白亜
ファンタジー
突如として異世界転移した日本の大学生、タツシ。 世界にとって致命的な抜け穴を見つけ、召喚士としてあっけなく魔王を倒してしまう。 その後、一緒に旅をしたスライムと共に、マッサージ店を開くことにした。卑猥な目的で。 裏があるとも知れず、王都一番の人気になるマッサージ店「スライム・リフレ」。スライムを巧みに操って体のツボを押し、角質を取り、リフレッシュもできる。 だがそこは三度の飯よりも少女が絶頂している瞬間を見るのが大好きなタツシが経営する店。 そんな店では、膣に媚薬100%の粘液を注入され、美少女たちが「気持ちよくなって」いる!!! 感想大歓迎です! ※1グロは一切ありません。登場人物が圧倒的な不幸になることも(たぶん)ありません。今日も王都は平和です。異種姦というよりは、スライムは主人公の補助ツールとして扱われます。そっち方面を期待していた方はすみません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【R18】突然召喚されて、たくさん吸われました。

茉莉
恋愛
【R18】突然召喚されて巫女姫と呼ばれ、たっぷりと体を弄られてしまうお話。

【R18】異世界なら彼女の母親とラブラブでもいいよね!

SoftCareer
ファンタジー
幼なじみの彼女の母親と二人っきりで、期せずして異世界に飛ばされてしまった主人公が、 帰還の方法を模索しながら、その母親や異世界の人達との絆を深めていくというストーリーです。 性的描写のガイドラインに抵触してカクヨムから、R-18のミッドナイトノベルズに引っ越して、 お陰様で好評をいただきましたので、こちらにもお世話になれればとやって参りました。 (こちらとミッドナイトノベルズでの同時掲載です)

【R18】異世界魔剣士のハーレム冒険譚~病弱青年は転生し、極上の冒険と性活を目指す~

泰雅
ファンタジー
病弱ひ弱な青年「青峰レオ」は、その悲惨な人生を女神に同情され、異世界に転生することに。 女神曰く、異世界で人生をしっかり楽しめということらしいが、何か裏がある予感も。 そんなことはお構いなしに才覚溢れる冒険者となり、女の子とお近づきになりまくる状況に。 冒険もエロも楽しみたい人向け、大人の異世界転生冒険活劇始まります。 ・【♡(お相手の名前)】はとりあえずエロイことしています。悪しからず。 ・【☆】は挿絵があります。AI生成なので細部などの再現は甘いですが、キャラクターのイメージをお楽しみください。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・思想・名称などとは一切関係ありません。 ※この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません ※この物語のえちちなシーンがある登場人物は全員18歳以上の設定です。

処理中です...