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地獄の一年
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騎士たちに捕まった僕は、研究所らしきところに連れてこられ、独房のような個室に監禁された。
手術台に乗せられ、手と足は金属でできた鎖で縛り付けられる。
手足に力をこめるがびくともしなかった。
数時間後、
「お待たせしたね、ゼラ君。私の名前はクラーク」
現れたのは白衣を着た頬が痩せこけた気味の悪い男だった。
「僕はどうなるんですか」
「お世辞にも無事とは言えないだろうね」
言いながらクラークという人は台の上にある鋭利なナイフを手にもつ。
「君は勇敢だ。魔人の少女を助ける、まさに正義の味方だ。だが、君は一つ間違いを犯した。魔人は悪、正義ではない。悪の味方には、…罰が下る」
突然、腕に激痛が走る。
「があああああああ!」
見るとクラークの持つナイフが僕の腕に突き刺さっていた。
◇
あれから一ヶ月が経った。
腕と足の筋肉は衰え腕に無数の注射の跡、身体にはたくさんの傷痕がついていた。
「殺して…」
この一ヶ月で味わったのは死んだほうがマシだと思えるくらいの極限の地獄。
ナイフで体を切り刻まれ、致死量ギリギリまで血を抜かれた。そして、大量に輸血される。それの繰り返し。変な薬を無理矢理飲まされたり、得体の知れない液体を注射されたりもした。
明かりのない密室の中でそんなことを繰り返され僕の精神は擦り切れていた。
「ゼラ君。まだ弱音を吐くのは早いよ。まだ試したいことが山ほどあるんだ。気をしっかり持ってくれ、キヒヒッ」
クラークはそんな僕を見ながらいつも楽しそうに不気味に笑う。
◇
半年が経った。
数えてたわけじゃない。クラークから聞かされた。彼はいつもおしゃべりだ。変わり者だからきっと話し相手がいないんだろう。
「魔力を持つものを魔人というのは間違いだ。正確には魔力を体外へ放出できるものを魔人という。人間の血液には皆、魔力が流れている。だが、不思議なことに男性は魔力を体の外に出すことができない。なぜ、誰も知らないかって?隠しているんだよ、奴らは」
クラークがいつものように独り言を話す。僕に相槌をうつ気力はない。もうそんなことどうだっていい。
◇
九ヶ月が経った。
僕はもう植物状態だった。意識はある。けどもう何も考えられない。
「くそ!なんで、なんで魔力が放出されないんだ!魔力の濃度も今までにないほど高いのに!何か膜のようなものがあるんだ!それが魔力の放出を妨害している!」
クラークの怒鳴り声が微かに聞こえる。
「ホワイトクロウの上位層が使っている神力という力もきっと魔力と同じだ!やつらは民を騙して力を独占している!もう少しで私も力を手に入れられるのに!早くしないと!奴らに気づかれる前にっ!」
◇
ここにきてちょうど一年。
「やっと手に入れた。これを飲めば私にも力が」
クラークは赤い血の入った試験管をとても嬉しそうに持っていた。
そして、中に入った血を自分の口へと流し込んだ。
「ゴクゴクッ。分かる!感じるぞ!力が!外に出たがっている」
その瞬間、クラークの胸に一本の剣が突き刺さる。
剣を握っていたのは白鎧の髭を生やした男だった。
「まったく、王城から魔女の血を盗むなんて正気の沙汰じゃねぇぞ。なぁ、クラークさん」
「お前は、七星剣の…ぐふっ」
クラークの口から血が噴き出す。
「残念だがあんたは」
男はクラークから剣を抜き、
「知りすぎた」
なんの躊躇いもなく首を刎ねた。
その動作でクラークの血は僕の顔にまで飛んできた。そして、数滴の血が僕の口の中へと入り込む。
「こいつが被検体か…。念のため殺しておこう」
男がそういった直後、凄まじい衝撃が研究所全体を襲う。
「なんだ?」
密室だった部屋には巨大な穴が空いていた。
穴の奥には巨大な影。
男が目を凝らすとそこには一匹の魔人が佇んでいた。
魔人は僕を見てケモノが唸るような声で
「ムカエニ、キタ」
とそう言った。
手術台に乗せられ、手と足は金属でできた鎖で縛り付けられる。
手足に力をこめるがびくともしなかった。
数時間後、
「お待たせしたね、ゼラ君。私の名前はクラーク」
現れたのは白衣を着た頬が痩せこけた気味の悪い男だった。
「僕はどうなるんですか」
「お世辞にも無事とは言えないだろうね」
言いながらクラークという人は台の上にある鋭利なナイフを手にもつ。
「君は勇敢だ。魔人の少女を助ける、まさに正義の味方だ。だが、君は一つ間違いを犯した。魔人は悪、正義ではない。悪の味方には、…罰が下る」
突然、腕に激痛が走る。
「があああああああ!」
見るとクラークの持つナイフが僕の腕に突き刺さっていた。
◇
あれから一ヶ月が経った。
腕と足の筋肉は衰え腕に無数の注射の跡、身体にはたくさんの傷痕がついていた。
「殺して…」
この一ヶ月で味わったのは死んだほうがマシだと思えるくらいの極限の地獄。
ナイフで体を切り刻まれ、致死量ギリギリまで血を抜かれた。そして、大量に輸血される。それの繰り返し。変な薬を無理矢理飲まされたり、得体の知れない液体を注射されたりもした。
明かりのない密室の中でそんなことを繰り返され僕の精神は擦り切れていた。
「ゼラ君。まだ弱音を吐くのは早いよ。まだ試したいことが山ほどあるんだ。気をしっかり持ってくれ、キヒヒッ」
クラークはそんな僕を見ながらいつも楽しそうに不気味に笑う。
◇
半年が経った。
数えてたわけじゃない。クラークから聞かされた。彼はいつもおしゃべりだ。変わり者だからきっと話し相手がいないんだろう。
「魔力を持つものを魔人というのは間違いだ。正確には魔力を体外へ放出できるものを魔人という。人間の血液には皆、魔力が流れている。だが、不思議なことに男性は魔力を体の外に出すことができない。なぜ、誰も知らないかって?隠しているんだよ、奴らは」
クラークがいつものように独り言を話す。僕に相槌をうつ気力はない。もうそんなことどうだっていい。
◇
九ヶ月が経った。
僕はもう植物状態だった。意識はある。けどもう何も考えられない。
「くそ!なんで、なんで魔力が放出されないんだ!魔力の濃度も今までにないほど高いのに!何か膜のようなものがあるんだ!それが魔力の放出を妨害している!」
クラークの怒鳴り声が微かに聞こえる。
「ホワイトクロウの上位層が使っている神力という力もきっと魔力と同じだ!やつらは民を騙して力を独占している!もう少しで私も力を手に入れられるのに!早くしないと!奴らに気づかれる前にっ!」
◇
ここにきてちょうど一年。
「やっと手に入れた。これを飲めば私にも力が」
クラークは赤い血の入った試験管をとても嬉しそうに持っていた。
そして、中に入った血を自分の口へと流し込んだ。
「ゴクゴクッ。分かる!感じるぞ!力が!外に出たがっている」
その瞬間、クラークの胸に一本の剣が突き刺さる。
剣を握っていたのは白鎧の髭を生やした男だった。
「まったく、王城から魔女の血を盗むなんて正気の沙汰じゃねぇぞ。なぁ、クラークさん」
「お前は、七星剣の…ぐふっ」
クラークの口から血が噴き出す。
「残念だがあんたは」
男はクラークから剣を抜き、
「知りすぎた」
なんの躊躇いもなく首を刎ねた。
その動作でクラークの血は僕の顔にまで飛んできた。そして、数滴の血が僕の口の中へと入り込む。
「こいつが被検体か…。念のため殺しておこう」
男がそういった直後、凄まじい衝撃が研究所全体を襲う。
「なんだ?」
密室だった部屋には巨大な穴が空いていた。
穴の奥には巨大な影。
男が目を凝らすとそこには一匹の魔人が佇んでいた。
魔人は僕を見てケモノが唸るような声で
「ムカエニ、キタ」
とそう言った。
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