51 / 52
第4章 魔物討伐と国王のパレード
3.
しおりを挟む 両腕をなくし、首をなくした魄皇鬼の身体が崩れ落ちる。
終わった。
最後まで、兄様に助けられた。
あの様子では、兄様も生きてはいないだろう。
止めどなく溢れる涙が視界を塞ぐ。
ふと、〈紅桜〉が私の手を引いた気がした。
涙で歪む視界に、白い闇が躍り出る!
「はっ」
身をひねる私の左眼に、魄皇鬼の首が牙を剥く。
「あぐぅっ!」
瞳を襲う、灼けるような痛みに視界が揺らいだ。
まだ動くのか?
駆け降りてくる首は禍々しく殺気を放つ。
視界が霞む。
構える〈紅桜〉に、何かが手を添えた気がした。
行け!
「忌まわし鬼よ。去れ!」
刀にある限りの霊力を乗せ、迫り来る魄皇鬼の首を一刀の元に斬り伏せる。
霞む視界に、紅い五芒星が確かに写って見えた。
今度こそ、魄皇鬼の首がチリとなり風に消えて逝く。
『紅、桜……』
魄皇鬼の声が夜の闇に消えた。
東の空に輝く太陽が、一日の始まりを告げる。
鮮やかな朱色の柱が立つ境内で、座り込んだまま夜が明けてしまった。
左眼の灼けるような痛みは引いたが、もはやこの瞳が物を映すことはないだろう。
手を離した〈紅桜〉は、鞘に収まったのだろう。
左手の中には、確かに熱く力の源を感じる。
魄皇鬼は滅んだのだろうか。
兄様。
あの時刀に添えられた手は……。
思考のまとまらない頭には、疑問ばかりが増えていく。
そして鬼の戯言と捨てていいのか。
魄皇鬼の残した言葉。
〈紅桜〉。お前はなぜ人に宿る。
終わった。
最後まで、兄様に助けられた。
あの様子では、兄様も生きてはいないだろう。
止めどなく溢れる涙が視界を塞ぐ。
ふと、〈紅桜〉が私の手を引いた気がした。
涙で歪む視界に、白い闇が躍り出る!
「はっ」
身をひねる私の左眼に、魄皇鬼の首が牙を剥く。
「あぐぅっ!」
瞳を襲う、灼けるような痛みに視界が揺らいだ。
まだ動くのか?
駆け降りてくる首は禍々しく殺気を放つ。
視界が霞む。
構える〈紅桜〉に、何かが手を添えた気がした。
行け!
「忌まわし鬼よ。去れ!」
刀にある限りの霊力を乗せ、迫り来る魄皇鬼の首を一刀の元に斬り伏せる。
霞む視界に、紅い五芒星が確かに写って見えた。
今度こそ、魄皇鬼の首がチリとなり風に消えて逝く。
『紅、桜……』
魄皇鬼の声が夜の闇に消えた。
東の空に輝く太陽が、一日の始まりを告げる。
鮮やかな朱色の柱が立つ境内で、座り込んだまま夜が明けてしまった。
左眼の灼けるような痛みは引いたが、もはやこの瞳が物を映すことはないだろう。
手を離した〈紅桜〉は、鞘に収まったのだろう。
左手の中には、確かに熱く力の源を感じる。
魄皇鬼は滅んだのだろうか。
兄様。
あの時刀に添えられた手は……。
思考のまとまらない頭には、疑問ばかりが増えていく。
そして鬼の戯言と捨てていいのか。
魄皇鬼の残した言葉。
〈紅桜〉。お前はなぜ人に宿る。
0
お気に入りに追加
316
あなたにおすすめの小説

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる