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第4章 魔物討伐と国王のパレード
2.
しおりを挟む「シンジ君は、クエストに申し込んだのね」
「はい、自分の実力も試したいですし、
俺は俺で悠理の隣に並べられるように経験を積みたいんです」
「正直南西の方は足元が悪い場所が多いから心配だけど、
シンジくんの冒険者としての晴れ舞台だものね」
シュリアさんがクエスト期間中の昼ごはんを考えなきゃ!と張り切ってキッチンへ向かった。
ダルタさんと相談するらしい。
「なーなー。解体屋にいる間何かあった?」
俺が座っている長椅子にもたれ掛かりながらアルラが聞いてきた。
「うん。色々考えられたよ。自分がどう強くなりたいのかも考えることができたし」
「なんか、顔がすっきりしているなーって」
「そうかな?毎日自分の顔を見てて気づかなかったよ」
(そんな顔つきって変わるものなのかな?)
《決してイケメンになったって事じゃないからね、ご主人》
ふふふって笑うルルラのほっぺ引っ張る。
「一言余計だぞ、ルルラ」
「俺にも紹介して!シンジのそれ」
アルラは、ベスラム達を指差す。
《それ扱いとは何事か!》
シャーと舌を出してアルラに威嚇するベスラム。
「舌出したー、すげぇ」
喜ぶアルラ。
《こやつめ、自身の立場がわからぬやつか!小僧、鍛え直してーー》
俺は慌ててベスラムの口をふさぐ。
「そこまでだ、ベスラム落ち着け」
「アルラ、こっちの白蛇がベスラムでリスがルルラだ」
《ふん、ワシはこやつに頭など下げぬからな!》
《ほっぺ痛い…》
「2匹とも宜しくだってさ」
前にも同じようなことがあったな。
「ふーーーん」
お前が聞いたから答えたのに………!!!!
時として子供の無邪気な好奇心の移り変わりは激しい。
ーーーーーーーーーーーー
数日、カンパレリでのんびり過ごした俺。
緊急クエスト前でも通常のクエストに行こうかと思ったが、
そもそもクエスト自体が貼られていなかった。
それだけこの緊急クエストに向けて準備しろって事なのかと思い、
久しぶりにのんびりした日々を過ごした。
あとは魔物のことなどを知りたくて
図書館などでいろいろ調べたが、要は対峙してみないと分からないって事が分かった。
(図書館なんてテスト前にしか行かないものだと思ったが、
異世界に行ってから行くことになるなんて…)
そんな日々を過ごし、いよいよクエスト出発前日になった。
俺は4次元ポーチに色々入れていく。
整理整頓して入れているつもりだが、どうなんだろう、整理されているのか??
「シンジ、ちょっと部屋に入るが構わないか?」
部屋の外からダルタさんが声をかける。
「はい、大丈夫です」
ダルタさんはコーヒーを持って部屋に入ってきた。
「クエスト前にちょっと話をしたくてな」
「いよいよ明日ですもんね」
「緊張しているか?」
「はい、正直今までのクエストも誰かと一緒だったから
今回のように知り合いがいない中でのクエストはちょっと、、
うまく他の冒険者と連携が取れると良いのですが。。。」
「俺も昔はそうだった。誰でも初めてはある。
気負いせず自分に何ができるか、どうすれば生き残れるか、それだけを考えろ」
元冒険者のダルタさんに言われると説得力がる。
生き残るか。か。
下っ端でも、死ぬことがあるのだ。相手は魔物。
それが戦いだ。気を引き締めていかないと。
「ご心配いただいてありがとうございます。必ずここに戻ってきます」
「帰ってきたらお前の好きなものを作ろう、約束する」
「それならハンバーグが食べたいですね。いろんなソースで沢山食べたいです」
「わかった、用意しておこう」
正直俺はダルタさんと向き合って緊張していた。
(ーーーてっきり悠理のことも触れてくるのかと思ったが、、、)
「ローリエのことだが許してやってほしい」
ダルタさんが頭を下げる。
(まさかの…そっち!?)
「許して欲しいだなんて、そんな。
むしろ俺や悠理の方が謝らないといけないんです」
「ユーリの無事はローリエを通して無事だと聞いている。心配するな。
クエストが終わるころには会えるかもしれないな…」
ダルタさんも詳細がわからない中で、
俺に心配をかけまいとフォローしてくれているのだろう。
「俺は正直悠理の考えに流されて冒険者になりました。
他の人からしたら安易な話です。
けど、今の俺は悠理の隣に並んでいたいと思うのです。
どんな時でも。
そのための強さを俺は求めます。」
ダルタさんにあの時聞かれた答えを俺なりに出す事ができただろうか…
「自分なりの答えが出たのだな」
ダルタさんは安心したような顔をしていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
クエスト出発当日--。
「オウマガヤ国 冒険者ギルド〔アルジューム〕の諸君!」
ギルド長であるシンシアが拡声器で話す。
「此度は緊急クエストに希望した君らを讃えよう。
今回は南西の〔嘆きの森 アギブージュ〕でのクエストとなる。
足元が悪く、影が多い場所であるため不利な状況であるが
我々の結束でこのクエストを必ずや成功を納めて欲しい!!」
「「「「「うぉーーーーーー!!!!」」」」」
「それでは、出発!」
オウマガヤ国から50名、ユーグラフェルから30名
結構な大所帯でのクエストとなった。
途中の谷にて、ユーグラフェルの冒険者達と合流。
あくまで舵を取るのはオウマガヤ国となった…
血の気の多い奴らでもどちらを立てるかは分かってくれていたようだ。
(やはり悠理は来ませんか、、、)
下唇を噛むシンシア。
およそ今回のクエストは7日~10日間ほどになると想定している。
(途中からでも参加させたいですね~)
「シンジくん、気をつけてね」
シュリアさん、アルラ、フォースが見送りに来てくれた。
「僕は下っ端なので後方でのんびり出発です」
「城を出たら何があるかわからないわ。無事でね。」
シュリアさんは神に祈るような声で囁く。
こうやって何度も見送ってきたんだろうなぁ。
「お前が狩ってきた魔物の解体したかったなぁ。自慢話を期待しているぞ。」
フォースらしい。
「あぁ、期待して待っとけ」
進もうとする俺の服掴むアルラ。
「服掴んでたら進めねーんだけど、アルラ」
「別に心配なんかしてねーし」
アルラは涙を我慢している姿だ。
俺は頭を撫でて、
「すぐ帰ってくるからさ。待っとけよ。」
手を離してくれた。
「………………うん、必ずだぞ」
「悠理のこと、お願いしますね…」
(何があるかわからない、だからこそ、、、)
「分かったわ」
シュリアさんには伝わったのか答えてくれた。
《そろそろみたいだね》
《我らの力を見せる時ぞ!いざ!》
「行ってきます!!!」
ーーーーーーーーーーーーーーー
南口の門から俺たちは国外に出る。
初めは草原の平坦な道が続く。
数週間前見ず知らずの森に召喚されたことを思い出す。
少しは冒険者っぽく見えているのだろうか。
周りはワイワイとまるで遠足のようだ。ちょっと気抜けしてしまう。
俺はルルラやベスラムと話しながら進んでいるため
ただの独り言のようになってしまい周りから距離を置かれているようだ。
正直ベスラムもルルラも戦いに備えて神経が尖っている分
変に近づいたら攻撃してもおかしくない感じだ。
(仕方ないけど、このままでいよう。新しい人脈を作りたかったけど、仕方ない)
1日目は予想通りに進むことができた。
明日にはユーグラフェルの冒険者たちと合流ができるらしい。
一旦野宿し明日に備える。
(まさか以前に女神様からの贈り物で使っている4次元ポーチが、こんなにも役に立つとは…)
野宿の可能性があるからと
悠理が召喚時に持ってきていたテントや寝袋を持ってきた。
周りの冒険者からしたら見たこともない製品だ。
野営の準備をしている間に他の冒険者たちが観察しにくる。
「これは、、、自国にあった物を持ってきただけです。」
適当に誤魔化す。嘘はついてない。たぶん。
誤魔化してはみるものの
疑いの目を持たれているようだ。
だが嘘偽りなく俺はこれしか持ってない。
(これが1週間続くのか、、、精神的に辛いな)
《野宿だけど快適だね!》
ルルラは嬉しそうだ。
《我は周辺を一回りしてから寝るとする、先に寝てて良いぞ》
「交代で夜も警備するよ?」
《人間の夜目など信用できるか、夜こそ魔物が一番強くなるのだ》
(心配性だなー、もう)
「俺らは先に寝てるからな」
俺とルルラ先に寝ることにした。
ベスラムはシンジの作ったテントを中心に警戒を強めていく。
もともと蛇は夜行性であるため、魔獣としての仕事も夜の警戒が多かった。
(流石に他の冒険者は見捨てられるが、主人だけは死なせるわけにはいかないからな)
魔王復活が近づいている中で魔物たちも活発になってきている。
普段では簡単と思えるクエストも気を抜けない状況である。
(明日他の国の冒険者も加勢すると言っていたな…。
だとしても、、、、)
ベスラムは風の魔力を使って
自分に向いてくる風から魔物たちの数を把握しようとしていた。
(五分五分か、もしかすれば劣勢かもしれぬ…)
ベスラムはどうやってシンジを生かすか
考えることとした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
シンジがクエストに出発する3日前のこと。
この訓練を受けてからどれくらい経ったのだろう。
ご飯、睡眠、トイレに行く以外は容赦ない人形たちからの攻撃に反撃する日々。
また魔力を常に自身の体に纏わせるという訓練があるため寝たくとも寝れていない。
少しでも気を抜けば自我がなくなり暴れてしまいそうになる。
(正直自我を保つことがこんなにも難しいなんて、、、)
悠理は、攻撃を受け血を吐いたとしても少し経てば
回復している自分の体に違和感しか感じなかった。
(これが魔女の力だというの、、、)
正直これであったなら魔王など魔女が倒せばいよいのでは?
とも思うが、魔女の契約は大魔神と行なっている。
大魔神と等しい位にいる魔王に対して魔女は抵抗はできとも本能として倒せないのだ。
(なんとも皮肉ね…)
こんなことを考えている間もどこからともなく人形が現れる。
武器は自身の体のみ、無理やり体術を覚えさせられている状況だ。
パチン
指が鳴る。
「そろそろこの生活にも慣れてきたかしら?」
ローリエが現れる。
「おかげさまで、、、喋れるくらいには、、、保てるようになったわ」
肩を上下させる形での呼吸で精一杯だ。
「いい傾向だわ。やっぱりあなたには才能があるようね」
「才能?」
(そんなもの、私には微塵も……)
思わず拳を握りしめ、昔の日々を思い出す。
「ある程度、自我が保つことが出来るようになった今。
仕方ないけど、訓練をもう一段階上げることにするわ」
「分かった」
(シンシアがどう彼女に吹っかけてくるか分からないものね…)
ローリエはシンシアがどんな人間か嫌でも知っている。
今まで弟子として育ててきた中で一番思考が読めない奴だった。
一度断ったとは言え、安易に諦めるやつではない。
彼に関してはユーリの力の起爆剤になる。
だからこそ使うタイミングを誤ってはいけない。
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