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第2章 俺と幼馴染と異世界
20.
しおりを挟む2階からおりてくる俺を見て
悠理が安堵した表情になった。
(そんな魔物の巣窟に行ったわけじゃないんだから…)
時々悠理の心配具合が恐ろしく感じる。
「何かされた?」
「何もされてないよ、それに話するだけって言ってただろ」
「そうだけだとしても、何があるかわからないじゃない。
それにーーーー」
「シンジさん、報酬と従属登録の件ですが…」
俺と悠理の会話にエルミンさんが入ってくる。
正直助かった。
俺は受付で報酬をもらう。
うさぎの討伐で銀貨15枚ほどだ。
うーん、安いのかどうかわからん。
まぁ、フォースが綺麗に解体してくれたおかげで
素材としても買い取ってもらえる事になり、追加で銀貨5枚になった。
(アルバイトはしていたけど、命がけの仕事だもんなー)
俺は報酬でもらったお金を3人分に分ける。
もちろん、シルミンさんとフォースの分だ。
2人がいなきゃ、倒すことも、美味しい料理や
解体の報酬をもらうことは出来なかったからな。
(フォースはさっき帰っていったから明日渡すとして
シルミンさんはーーーーー)
俺は周りをキョロキョロする。
「シルミンなら、ファミリーで狩りに行きましたよ」
エルミンさんが答える。
「この時間からですか?」
「えぇ、夜行性の魔物の討伐なので、あしたの昼には帰ってくるかと」
「そしたら、今日の分の報酬、シルミンさん分を渡していただけますか?」
「彼女の蒔いた種なので要らないかと…」
「それでも、シルミンさんが倒し方教えてくれなかったら
狩れませんでしたらか。勉強代ってことで…」
「分かりました。彼女にもそう伝えておきます」
その後、俺はベスラムとルルラを従属としてギルドに登録した。
2匹には、普段目には見えない紋が体についた。
緊急事態とかに見えるようになるものらしいが、
エルミンさんも実際に浮き上がったところを見たことはないとのこと。
「真司、終わった?」
一通りの作業を終えたところで、悠里が声をかけてきた。
自分が声をかけたら手間取ってしまうと思ったのか
カウンターの端っこで様子を見つつ待っててくれたのだ。
「終わったよ、カンパレリに戻ろうか」
「うーん、、、」
まごまごしている悠里。
「?? どうした?」
「今日カンパレリから出てくるときに、迷惑かけたからなんか帰りづらい…」
「えぇ?そうなの?」
「帰るよ、帰るんだけどさ。気まずい…」
「はぁ………」
1人にさせるとこうなるんだよなー。言葉足らずって。
悪気はないのだろう、だが気まずいと…
これでも察することが出来るようになっただけ成長しているのだ。
(ただ、俺らはカンパレリの宿泊者で、お世話になっている身だからなぁ。)
「俺も一緒に謝るよ…」
悠理を説得して俺らはカンパレリに帰る。
カラン、カラン
俺はカンパレリのドアを開ける。
「ただいま戻りました」
「ました」
悠里が完全に俺を盾にしている。
「2人とも、おかえりなさい!」
シュリアさんが俺たちを抱きしめる。
泣きそうになりながらのシュリアさんに俺は驚く。
思わず悠理に(お前泣かせるほどに何かしたのか?)と表情で聞いてみたが
首を横に振る。本人としてはそこまでではなかったようだ。
「シュリアさん、すみません。そんな泣くほどに…」
「ごめん、感極まってね、、、。2人も無事でよかった。」
「何も伝えずにすぐ出ちゃってすみませんでした」
悠理にお前も!ほら!と合図する。
「す、すみませんでした」
悠理も頭を下げる。
「今日の夕飯はチキンソテーよ。部屋に荷物を置いてきなさい」
笑顔になったシュリアさんが目をこすりながら私たちに伝える。
許してもらえたのだろうか…
俺たちは部屋に戻る。
ベスラムとルルラを部屋に残して(2匹には文句言われたが)
俺たちは夕飯を食べに食堂へ向かう。
「チキンソテーのソースは好きなの選んでね」
アルラがお手伝いで俺たちのところにソースを運んできた。
「俺は照り焼きかな、悠理は?」
「あたしは、マスタード」
呑気にソースを選ぶ俺たちにアルラが言った。
「おかあが泣いてたのはね。2人のことが心配だったけど
無事戻ってきてくれて嬉しかったからだよ。
何にも話してくれないし、勝手に行動するし、、、って。
たしかに2人の仲はすごーく良いのかもしれないけど、ここに泊まってる限りは、俺たちだって家族みたいなものなんだからね!わかった?」
アルラが俺たちにソースを掛けながら説いてくれた。
「家族、か……」
悠里が呟く。また変な思考に行く前に遮らないと。
「心配かけてごめんな、あとでみんなに改めて謝るよ」
俺は改めてアルラにありがとうと伝えると
「それでよし!」と満足してアルラは他のテーブルへ向かった。
「もう、和田家は関係ない、そうだろう?」
俺はチキンソテーを切りながら悠理に聞く。
「うん。そうだね…」
フォークの進みが悪くなる悠理。
(やっぱり家族の話題はまだNGのようだな。)
食べ終わり、俺たちは改めてダルタさんとシュリアに謝罪した。
2人も穏やかな笑みで答えてくれた。
「あなた達の中でまだまだ私たちに言えないこともあるのかもしれない。
けど、ここにいる限りはあなた達は私たちの家族なのだから、もっと頼って良いのだからね……」
「「……はい」」
これにて一件落着、、、かな。
いや、まだあるぞ!悠理!
「俺らローリエさんにも謝りたくて。
直接謝る機会が欲しいのですが、、どうすれば良いのか」
手段はあるにはあるが、その手段をとっても良いのか分からない俺は
シュリアさんに聞くことにした。
悠理が驚いた顔をする。
悠理からしたら悪いことをしたという感覚は薄いのだろうが
あれは悠里が悪い。
そう思うからこそ、ちゃんと謝りたかった。
「あれは向こうが勝手にーーーー」
「勝手じゃない!ローリエさんは一度断ったはずだ。
それなのにしつこくした悠理、お前が悪いんだ」
「でも、、、」
「でもじゃない。自分の都合だけでみんな動くと思うな。
それが正当な理由だとしてもちゃんと伝えないと相手は誤解するんだ。
俺がいればフォロー出来るかもしれないが、
俺もずっと一緒にいれるとは限らないんだから…」
「そんなの、ずっと一緒ってーーー!」
「はいはい、ケンカはそこまでね!」
ヒートアップしている俺たちを遮る声を出したのは
紛れもなくローリエさんだった。
テーブル席に座り足を組みながらチキンソテーを食べている。
「そこのお嬢ちゃんに強めに魔法かけちゃったからね~
具合いかがかなー?と思ってさ。見た感じ思ったよりも元気ね。回復が早いのは冒険者にとっては良いことよ?」
(え?いつからそこにいたんだ?)
声をかけられるまで俺たちはローリエさんがそこにいることを
認識することが出来なかったのだ。
「実は、2人が部屋に行った間に帰ってきててね。
2人に会う?って聞いたら、ここで様子見てたいって…」
シュリアさんが申し訳なさそうに言う。
「そのあと私は魔法を使って自身の姿を変えてたから
気づかなくて当然よ。気にしないで?」
「あ、あの俺たち…」
俺が声をかけようとすると
ローリエさんが分かっていたかのように手をあげる。
「夜8時頃、2人も私の部屋にいらっしゃい。そこで話をしましょうか。
私の部屋は303よ。後でね」
俺と悠理は顔を見合わせて「分かりました」と答えた。
あと俺は、今日魔獣と契約したから
2匹の分のご飯が追加になるとシュリアさんとダルタさんに伝えた。
追加費用に関しては、ご飯分だけでいいとのことで
改めて優しさに感謝することになった。
アルラが見せて!とせがんできたが、今日はこれからの時間もあるし
またあとでという話にした。
俺たちは部屋に戻り、悠理は風呂に入り
俺は2匹への遅めの夕飯を出した。
ダルタさんが早速チキンソテーをくれたのだ。
ソースは俺の好きな照り焼きにした。文句は言わせない。
《主人は女風呂は見ないのー?》
俺はルルラの発言に飲もうとしていたお茶を吹き出しそうになった。
《こやつがそんな行動など、出来るわけなかろうに》
ベスラムが答える。
「なんでそんなこと…」
《私の前の主人なんか、よくのぞいてたよー。タダだからーって》
「それは普通じゃないからな!俺はそんな変態なことしない!」
《よく言うわ、度胸がないだけじゃろ?》
「なんだとーーーー」
「真司、何してるの?」
振り上がりの悠里が不思議そうに見ている。
俺は2匹と会話出来るが
悠理からすれば蛇とリスと戯れている青年だもんな。
俺は悠理の風呂上がりの部屋着+濡れた髪の色っぽい姿にドキッとし
「な、なんでもない…。俺も入る!」
とだけ言って、俺も風呂に入った。
後ろの方から聞こえる、確かに2匹は笑っていた。
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