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第3章 勇者たちの行方
11.
しおりを挟む健二郎達が特訓をしている間、
持田洋子を始め、治癒グループのメンバーは
姫様から洗脳を受けている状況だった。
「皆さまは勇者達を守るために選ばれた女神達なのです。この国から出ようとする者がいれば止める事。それが皆様の使命なのです」
「「「「「我々は女神」」」」」
「そうです、選ばれし女神達なのです」
「「「「「選ばれた女神」」」」」
正直宗教じみている。
もちろん治癒魔法の訓練など行ってないに等しい。
「近々我が国から抜けようと考えている者達がいるようです。女神様であるあなた達の加護など要らないというのです、、うぅ。。。」
「あぁ、姫様がそんなに悲しむことはございません。女神である我々が必ずや勇者達を守るとお誓いいたします」
「あぁ、女神様方、、、私共が不甲斐ないだけなのに、心を痛めてくださるなんてなんて心がお優しい方なのでしょう。。。」
「とんでもございませんわ、姫様が我々が女神であると教えていただかなければ、この力を使わずに人生を終えていたかもしれませんし。」
「皆様の美しく清らかな心は私めには眩しすぎるくらいですわ。私は少し休みますので、いつものようにお清めの儀式をお願いいたしますね。皆様だけが頼りなのですから。」
「「「「「はい、姫様」」」」」
そういうと姫様は彼女らを匿っている部屋から出て行く。
女神と称えられていた彼女達は
自身は神聖なる身であるためこの姫様の居住区から外に出る時には姫様の許可が必要であり、適宜お清めの儀式を行うように洗脳されていた。
お清めの儀式とは、姫様より与えられている聖水を体から浴びて、かつ飲むことで心身ともに清められる儀式のことだ。
彼女らは姫様が出ていった後、お清めの儀式を行い、かつ個々に用意されている部屋に戻っていった。
姫様から、個々の女神の力が強いため普段は
複数人で固まることは避けるべきであると洗脳されているからだ。
持田洋子はじめ、治癒グループの5人は自分自身のみが特別であると思っている。
それは夜の時間に姫様が各部屋に個々に訪問し、女神の中でもあなたが最高峰だと洗脳しているためである。ただ、狙われる可能性もあるため他の女神と会う時には合わせるようにとしている。
自身は特別でありたいと思う彼女らの気持ちを逆手に取った、なんとも下劣な洗脳だった。
---------------
チョロいもんだ。
対して魅力がない女だからこそ、
安い言葉で容易く墜ちてくれた。
(どこから見ても女神からは程遠いけどねー)
姫様の皮を被ったカルチャは姫様の居住区に作った地下室へと入る。
もともと地下室などは無い。
カルチャが低俗魔人に作らせたものだ。
幸いこの姫様の居住区域は、姫様の許可がないと国王でさえ中に入れない仕組みとなっている。
ましてこの地下室はタハールによって防御呪文が施されており、カルチャのみ入ることが許されている。
(姫様に甘ちんな国王で良かったわー)
正直魔人族は家族というものはあれど、人間ほどの家族愛などは無い。戦いが始まれば弱き者は強き者の犠牲となる。それが全てだった。
あの日に姫様に成り代わったカルチャは、初めにここで勤めているものを魔人に喰わせ、自身周辺を魔人のみとした。
お陰であの日から約7年ほどとなるが今だにバレてはいない。
(まぁ、1人気づいているものがいるが、殺すには惜しい。。)
カルチャとしてはタハールであれば人間を魔人族として改造する事も可能であると考えているため、その時には是非にともと思っていた。
カルチャは地下室に入る前に
本来の魔人の姿に戻る。
漆黒の輝きを持つしなやかな羽を背中からだす。
その羽を自身に巻きつけることにより繭の様になるのだ、その中でカルチャは魔人に戻る。
(人間の姫様ってなんであんなに外見にこだわるのか)
魔人の魅力はその魔力の質と量。
外見などはどうでも良い。
その魔力でどれだけ魔王様に使えることができるか、それだけ、それが全てなのだ。
カルチャが仕えるタハール様は、魔王様復活準備のために先陣を切ってご準備されているルーシュフェル様の側近だ。
その魔力は質と量ともに上級であり、元は科学者であったことから、人間に対する薬、媚薬や麻薬を作っておられる方である。
この地下室にはタハール様との連絡を行うための祭壇がある。
必須では無いが、定期的にカルチャはタハールに報告をしているのだ。
「タハール様、カルチャでございます」
カルチャは祭壇前にて跪き、水晶に声をかける。
祭壇には水晶が置かれている。
これもタハールが開発した者だ。
この水晶によってタハールとカルチャはやりとりをしている。
〔カルチャか、ご苦労である〕
「いえ、お時間を取らせてしまい申し訳ございません」
〔さて、何かな〕
「タハール様より頂いた麻薬によっての人間の洗脳は可能であるという報告です」
〔ほう、それは良い報告だ。量や頻度などはどうだ?〕
「現在は5名ほどのものを選抜して麻薬漬けにしておりますが、少量でも効果が認められるため、聖水と称して少量を適宜与えております。また口からだけではなく皮膚からの吸収も可能であると考えられます。追って詳細報告させていただきます」
〔皮膚からの吸収も可能であるか…であれば広範囲一斉での洗脳も可能になるな。新たな気づきだ〕
「良かったでございます」
〔カルチャよ、何か困ったことはないか〕
「はい、タハール様にお伺いしたい事がございます」
〔なんだ、申してみよ〕
「はい。タハール様より頂いたこの言葉の魔力ですが、召喚された者の中には効いてないと見受けられる者がおります。いかがいたしましょうか」
〔それは殺す殺さないの話かな?〕
「いえ、必要であればタハール様へ献上し、実験台としての利用を考えております」
〔なるほどな…たしかに言葉の魔力が効かない者が出てくるとなると今後の魔王侵攻に影響があるかもしれぬ。要注意すると共に必要ならばその判断をお前に任せよう〕
「畏まりました」
〔あと洗脳に関しては第二段階への進行を許可する、追って麻薬を送ろう〕
「許可頂きまして有難き幸せ。引き続き作戦を進めてまいります」
タハールが水晶に映らなくなった。
(水晶越しからでもタハール様の魔力は素晴らしい)
タハール様を越すルーシュフェル様の魔力どれほどになるのでしょう。
考えただけで全身がゾクゾクする。
(あぁ、タハール様、ルーシュフェル様にこの体を捧げられるのであれば、私は本望です)
元々カルチャは魔人として持つ魔力の素質は無いに等しく、奴隷として売り渡されるところをタハールの実験台として買い取られた。
体への実験は周りから恐れらるものではあったが、カルチャとしては自分が必要とされているという感覚が心地よかったのだ。
かつ、言葉の魔力は魔力の質が合わないと使えない力となっており、体内の魔力がゼロに等しかったカルチャの体は言葉の魔力が馴染みやすかったのだ。
《カルチャ、お前は選ばれたのだ---》
この言葉をタハール様より頂いた際にカルチャの心は決まった。
(この人のためなら私は命をさし出そう)
タハールからすれば、私はただの駒。
必要でなれば真っ先に切られてしまう存在。
それでも今は必要としてくれている。
この作戦は私が任されているのだ。
(第2段階の許可がおりた。さて動くとするかな…)
カルチャは元の姫様の姿に戻り顔を触る。
(うん、顔問題なし)
外はすでに夜になっていた。
魔人としては夜の方が負の魔力が強くなるため快適だが、若い姫様の体は正直だ。
だが、カルチャの機嫌はすこぶる良かった。
(今日は良い日だ、自身の部屋で生き血でも啜ろうか)
自身の部屋で休んでいると
低級魔人からの報告をうける。
「カルチャ様、洗脳被験者の1人が逃げ出しました。」
彼女はカルチャがワイングラスで生き血を楽しんでいるタイミングでテーブルの下に跪き報告した。
「逃げ出しただと!?
どういうことだ!麻薬はどうした!!」
カルチャは思わずワイングラスを握り壊す。
「そ、それが…」
低級魔人が答えにどもる。
「もう良い」
カルチャが左腕を横に振った。
低級魔人の首から上がいつのまにか床に落ちている。
彼女はもう答えることができない。
首と体が離れており答えられないのだ。
「本来ならお前らに行かせるところだが、今の私はすこぶる機嫌がいい。直々に迎えに行くとしようか…」
カルチャは急いで城へ向かった。
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