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第3章 勇者たちの行方
10.
しおりを挟むその日を境にガルデリオ先生による、俺たちの特訓が始まった。
正直各グループで鍛えるよりもはるかに実践的であった。
俺と三橋はひたすら土人形相手に剣を振るう。
時には人数も複数だったり、人形の武器が変わるのだ。
案に倒すだけでは彼らは復活する。
その都度変わる急所を狙って倒すことを余儀なくされるのだ。
三橋の場合は効率的な魔力の付与もガルデリオ先生から学んでいた。
佐々木と遠藤は、まずは座学の詰め込み。そして、ひたすら魔力の発散を行なっていた。
発散して魔力を空っぽにしないと新しい魔力は入らない。
魔力の量を増やすには空っぽにした上で、容量を増やさないといけない。そのループ作業だ。
また薬草の知識なども彼らは学んでいた。
治癒グループのメンバーがいないため彼らが代わるしかないからだ。
そして、安藤は1番キツイ特訓をしている。
ガルデリオ先生とひたすらタイマン勝負をしているのだ。
正直テニス部で体力に自信はあったようだが、体の動かし方はまだまだのようで、
10分に一度は「いたーい」という彼女の言葉を聞いていた。
その都度ガルデリオ先生が治癒魔法で治す。それが永遠と続くのだ。
それが毎日深夜まで続く。
部屋に帰るときにはガルデリオ先生から
安眠剤を受け取り短時間の睡眠でも効率よく休めるようにする。
なんとも言えないスパルタだった。
「今頃、和田さんと深見くんはどうしてるのかな?」
三橋が聞いてくる。
俺は正直考えたくなかった。
俺らはこんなにも辛い思いをしているのに、
あの2人は仲良しこよしをしているなんて考えたくなかったのだ。
無意識に眉間にしわを寄せてしまっていたのか
三橋は「変なこと聞いたね、ごめん」と謝って、訓練に戻っていった。
(こんな個人的な感情、忘れたいものだ。。)
俺は土人形に自身のイラつきをぶつけていた。
1週間ほど経った頃、特訓の合間に
安藤が忘れていた問題を投げかけてきた。
「そういえば、洋子に追いかけ回されてないよね?どうやって断ったの??」
「え、お前持田に言い寄られてんのかー。ひゅー。モテ男は辛いねぇ」
佐々木が煽ってくる。いい加減慣れた。
「断るも何も、向こうから何も来ないんだ。それならそれでいいと思うから何もしていない」
「モテる男はモテるまで待つか…」
遠藤お前まで俺を馬鹿にするのか…。
「それで気になることがあって。。あたし6人部屋で持田さんとかと一緒なんだけど。
最近持田さんも、飯田さんも笹井さんも最近部屋に戻ってきてないみたいなんだ。」
「戻ってきてないってどういうことだ?」
「あたしもわからなくて…ただ一緒の部屋の町田さん、柴田さんがいつも3人居ないって言ってて、最初は私のことも入ってるかと思ったんだけど、どうやらその3人がって事みたいで…考えてみたら私は先生の人形が身代わりしてくれてるし」
「あ!そういえば、あたしの部屋も横川さんと荒川さんが居ないかも…。いつも部屋戻るの深夜だから気にしてなかった!マンツーマンの特訓受けてたら安眠剤なくてもぐっすりだよー」
「その5人って仲よかったか?」
俺は疑問に思った。
「たしかに持田さん飯田さん、横川さんは仲よかったけど、
正直笹井さんと荒川さんがその仲に入れるとは思えないなぁ。キャラが違う感じ?」
「むしろ持田さんたちは荒川さんのこと
馬鹿にするような感じだったから、仲良くしてる姿なんて想像できない」
「もしかして、その5人って治癒グループじゃ…?」
「「「「!?」」」」
あの姫様の管轄のグループ。
たしかにあの日以来姫様の姿を見かけないし
それにここ最近居なくなったクラスメイト達。
嫌な予感しかしない。
「僕が会議でいない間に、みんな揃って休憩ですか?」
ガルデリオ先生が闘技場へ入ってくる。
ガルデリオ先生に聞けば分かるかもしれない。
けど、分かるかもしれないがそれを聞いてどうするのか、俺たちは戸惑っていた。
「先生。治癒グループに配属になったメンバーは今どうしてるのでしょうか?」
三橋が勇気を出して聞いた。
「なぜそんなことを?」
ガルデリオ先生が目が笑ってない笑顔で聞いてきた。
「ほら、他のグループはあたしらを通して
どんな訓練してるのか分かるけど、治癒だけいないからさ。ね?」
安藤がフォローをする。
三橋がそう、そうと言った形でうなづく。
「正直僕にもわからないんですよ。
今日も王政会議には姫様は不参加でしたし、
お陰で国王は多少まともな考えしておりましたが…」
それに関してはガルデリオも頭を抱えていた。
姫様は基本城の奥に居住を構えており、
姫様の許可した人間でないと出入りができず、異性の出入りは厳禁なのだ。
そのため姫様の側近も全て女性で担っている。
それに姫様の安全確保のため、姫様の住居には何重にも結界が張られており、
破られた瞬間に王宮中にアラームがなる。
優れたガルデリオでも安易には入れない場所なのだ。
(それに今あの場所は、魔人の巣窟になっている可能性の方が高い。
考えなしに入れば地位をなくすだけではなく、簡単に命も落とす事になるだろう)
「正直あの場所に入れる術があったら僕が教えてほしいものです。
図書館で姫様の住居に施されている結界の魔術に関して調べておりますが、
何もわかってないのが現状です」
「ってことはそこで姫さんは好き放題、なんでもありってことだよな???」
「残念ながらそうなります。
正直魔人に乗っ取られていると気づいているものは我々だけ。
それ以外の者からすれば、姫様はこの国の由緒正しき後継者という認識ですので、、、」
「その後継者が魔人に乗っ取られてますーなんて知ったら
この国の貴族達が大変じゃないか?」
「まぁ。そうですね。。。この国は根底からひっくり返るでしょうね」
はぁ。と、溜息が漏れるガルデリオ先生。
なんていうか。お疲れ様です。と思った、健二郎達だった。
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