37 / 52
第3章 勇者たちの行方
2.
しおりを挟む ミズーリ王国に属する辺境の領地スイーナ周辺に位置する山林-------------
その山林にて、尋常じゃない数の騎士と馬車が隊列を組むとある一団が、ミズーリ王国の王都へと向かっていた。
この国の王の命により-------------
湊達によって、空の悪魔が討ち倒されたあの町から研究の為、数多くの悪魔の残骸が王都へと運び込んまれていたのだ。
山林を移動するこの一団もその一つだ。
『…………ケイサンドオリ………………』
「ん? 今、何か言ったか?」
「いいや…………? どうしたんだよ、急に…………?」
「…………?
可笑しいな…………?
今、誰かが呟いたような気がしてよ…………」
「気のせいだろう?」
「…………それもそうか…………」
変だなと、首を傾げる御者は、それ以降は全く気にする事なく手綱を握る。
その御者が操舵する馬車の積荷には、悪魔の散乱した破片が木箱の中に詰められていた。
その木箱に開いた小さな穴から、何かが静かに這い出て来る。
そして、ゆっくりと御者の方へと近付いていき、御者の隣で鼻歌を歌っている同僚の服に飛び付き-------------
同僚の服の上を登り始めた。
「ん? おい、そりゃあ、なんだ…………?」
「あぁ…………?」
そいつが同僚の肩の辺りまで、登り終えると御者がその存在に気付いて指を差した。
何の事だと…………?
同僚は自分の肩の方に視線を向けようとして-------------
「え…………?」
大きく開け放たれた口のようなものが視界に現れたのを最後に同僚の意識はそこで途切れた。
『…………オイシイ…………』
「ひ、ひぃいいいい!!!!???」
御者はその光景を目の当たりにして、馬車を止める事すら忘れて、慌てて飛び降りるが…………。
『ニガサナイ…………』
いつの間にか、服にしがみ付いていたそいつに飲み込まれて行った。
「な、何だこいつは!?」
最寄りの馬車の異変に気付いた騎士の一人が、御者が飲み込まれる瞬間を目撃し、自然な動作で剣を引き抜いた。
『マダマダ…………ゴチソウガイッパイ…………』
御者を咀嚼し終えたそいつは、剣を構える騎士を視界に捉え-------------
その口が三日月のように歪んだ。
そう-------------まだ悪夢は始まったばかりだったのだ。
その山林にて、尋常じゃない数の騎士と馬車が隊列を組むとある一団が、ミズーリ王国の王都へと向かっていた。
この国の王の命により-------------
湊達によって、空の悪魔が討ち倒されたあの町から研究の為、数多くの悪魔の残骸が王都へと運び込んまれていたのだ。
山林を移動するこの一団もその一つだ。
『…………ケイサンドオリ………………』
「ん? 今、何か言ったか?」
「いいや…………? どうしたんだよ、急に…………?」
「…………?
可笑しいな…………?
今、誰かが呟いたような気がしてよ…………」
「気のせいだろう?」
「…………それもそうか…………」
変だなと、首を傾げる御者は、それ以降は全く気にする事なく手綱を握る。
その御者が操舵する馬車の積荷には、悪魔の散乱した破片が木箱の中に詰められていた。
その木箱に開いた小さな穴から、何かが静かに這い出て来る。
そして、ゆっくりと御者の方へと近付いていき、御者の隣で鼻歌を歌っている同僚の服に飛び付き-------------
同僚の服の上を登り始めた。
「ん? おい、そりゃあ、なんだ…………?」
「あぁ…………?」
そいつが同僚の肩の辺りまで、登り終えると御者がその存在に気付いて指を差した。
何の事だと…………?
同僚は自分の肩の方に視線を向けようとして-------------
「え…………?」
大きく開け放たれた口のようなものが視界に現れたのを最後に同僚の意識はそこで途切れた。
『…………オイシイ…………』
「ひ、ひぃいいいい!!!!???」
御者はその光景を目の当たりにして、馬車を止める事すら忘れて、慌てて飛び降りるが…………。
『ニガサナイ…………』
いつの間にか、服にしがみ付いていたそいつに飲み込まれて行った。
「な、何だこいつは!?」
最寄りの馬車の異変に気付いた騎士の一人が、御者が飲み込まれる瞬間を目撃し、自然な動作で剣を引き抜いた。
『マダマダ…………ゴチソウガイッパイ…………』
御者を咀嚼し終えたそいつは、剣を構える騎士を視界に捉え-------------
その口が三日月のように歪んだ。
そう-------------まだ悪夢は始まったばかりだったのだ。
0
お気に入りに追加
316
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる