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第1章 プロローグ
⑥
しおりを挟む三者面談の夜のこと。
俺の家に訪問者が来たのだ。
母が玄関のドアを開ける。
「あら、晶馬くんじゃないのー。
うちの真司にようかしら??」
「えぇ、いつも悠理がお世話になってますし、借りていた漫画もありますしね」
「いやいや、お世話になってるのはこっちの方よー。悠理ちゃんのおかげで今回の真司の成績が上がったんだもの~」
「おかん、その話はそこまでね。
晶馬さん、どうぞ上がってください。俺の部屋でいいですか?」
俺は時間帯と、母の玄関先での対応から、晶馬さんが来たのだとわかっていた。
「晶馬さん、悠理のことですよね?」
小声で念のための確認。
晶馬さんは小さく頷く。
自分の部屋に通した後、キッチンで麦茶を用意して、俺も自分の部屋に戻る。
「最近、悠理に変なことはないか?」
俺が部屋に戻り、晶馬さんに麦茶を差し出すとすぐに本題にうつった。
(やっぱりお兄さんなんだな…)
俺はテスト前から何となく悠理がおかしいと感じていたことや、読んでいる本の内容、今日の帰りがけでの悠理の発言など、なるべく私感が入らないように晶馬さんに伝えていく。
(俺のこの恋心は、もちろん伏せておく)
「そうか…」
晶馬さんは一言つぶやいて黙ってしまった。
(家での様子も何かあったのだろうか…)
小さい頃はお互いの家の行き来もあったが、思春期となってからはそれも無くなってしまっていた。
「悠理が最近カレンダーとにらめっこしていんだよ。多分月の満ち欠けに関して何かあるんじゃないかと思っている」
「月、ですか…」
「明日は満月にあたる日だ。何かあるのかもしれない…それも真司くん。君に関することがだ…」
(え、俺…??)
「正直、俺にもわからない。悠理も話そうとしてこないってことは俺じゃ解決できないと思っているのだろう」
たしかに。悠理は、兄として晶馬さんを慕ってはいる。なかなか態度には出ないが。
今まで予知夢での出来事は幾度となくあり、兄が持つ知識でどうにか対応出来るのであれば兄でも使う。そんな彼女だ。
(なんか、変に大ごとになってねーか)
「真司くんは、悠理のことをどう思ってるんだい?」
その質問は俺からしたら斜め上の質問だった。
だが、聞いてきた彼の目は本気だった。
腹をくくる。
「俺は悠理のことが好きです。出会ったあの時から一目惚れです。でも、俺にはまだ悠理を和田家の皆さんから剥がせるほどの力は持ってないことも承知してます。
だからこそ悠理のそばでいつも支えていきたいと、あいつがもうあんな顔を見せないように…そばにいたいと思ってます。そして…」
俺は全身が熱くなるのと同時に、いつのまにか晶馬さんの前で正座して、拳を握りしめた状態で話していた。
そしての続きは、、、
「いつの日か、和田家から悠理を救ってみせます」
晶馬さんは真剣に俺を見つめていた。
一高校生の、それも平々凡々の男子高校生である俺。
戯言と思われるかもしれない…
「その気持ちにきっと嘘はないんだろうね」
晶馬さんが優しくつぶやく。
「君の態度から、悠理への気持ちは知っていたよ。わかりやすいからね。
正直、悠理自身も何かあった時に真っ先に頼るのは君だろう。俺も自覚があるよ。」
そんなにわかりやすく出ていただろうか。
何とも恥ずかしい。。
「君に悠理の全てを託すことは今はできない。それは君自身もわかっていることだろう。けれど、もしも悠理が君を頼ってきた場合には、君の全力を見せて欲しいんだ」
晶馬さんの纏う雰囲気は優しくとも
発する言葉には力があった。
「今一番悠理の近くにいるのは君だからね」
その目は何とも悲しい目をしていた。
「明日、正直何があるのか、起こるのか、さっぱりな僕ですが、悠理に何かあった場合には全力で守ることを誓います」
悠理に何が起こるのか、
俺に何が起こるのか、
未来はよくわからない。
けど、俺はその時が来たら
全力で悠理を守ってみせると、そう誓った。
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