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第1章 プロローグ
②
しおりを挟む【俺の幼馴染】
今までの17年間の人生を一言で表すなら
俺の人生は平凡って言葉で片付くだろう。
それくらい俺の毎日は平凡だった。
別に平凡が嫌いではない、むしろ好きだ。
争い事は嫌いだし、世の中の流れに関心が持てるほどの好奇心も持ち合わせていない。
毎日ほぼ同じ日常を繰り返すなかで、ちょっとした変化を楽しむ程度が俺にはちょうどいい。
そんな俺の平凡な日常にもたまに波風は立つもので、それは昼休みに起こった。
「おい、和田。お前今回のテスト手を抜いただろ」
クラスメイトの健二郎が、俺の幼馴染の悠理の席の前に仁王立ちし怒りと悔しさを露わにした顔で悠理に言う。
「手は抜いていない。本を読んでて勉強してなかっただけ」
俺の幼馴染は、そんなクラスメイトを気にせず本を読んで顔を上げないまま返事をした。淡々とページをめくる音がする。
この前行われたテストの総合結果に関しての話だった。健二郎の言い分としては、悠理ならどの科目ももっと点数が取れるはずだと考えていたのだ。
それもそうだ。今までのテストで総合結果5位以内をキープしていた悠理が今回は大幅に順位を落として45位と言う結果だった。
「俺をバカにしているのか!」
机をバンと拳で叩くも悠理はビクともしない。
健二郎はいつも悠理のテスト結果を気にしていただけに、あからさまに手を抜かれたのが悔しかったのだ。それも理由が読書って。
俺のポジションは板挟み。
「まぁまぁ、健二郎落ち着けよ。いいじゃねーか。総合6位なんて俺なんて中の中だぜ」
健二郎の肩に手を置いて俺は健二郎を励ます。
「ふん。真司もこんな不安定な幼馴染を持って大変だな」
多少は気が収まったのか、健二郎は肩に置かれていた俺の手を払い、席に戻ってゆく。
相変わらず悠理は本に目を向けている。幼馴染が庇ったとゆーのに、御構い無しかよ。
まぁそこが悠理らしい。
けど、正直ここまで点数を落とすのは珍しい話だった。
悠理はこの高校にいては宝の持ち腐れと思えるくらいに勉強も運動もできる。本人もまぁそれなりに自覚している。
それでもこの高校を選んだのは俺がこのレベルの高校しか受けれる頭を持っていなかったからだ。
それでも俺と高校時代を過ごしたいと言う希望を悠理は押し通した。
悠理のお母さんは弁護士、お父さんは医師、お兄さんである晶馬さんは現役T大生。
もちろんこのレベルの高校じゃ許されるはずはない、しかしテストで総合5位以内をキープ、大学は旧帝大に行くことを条件にこの高校に通うことになった。
俺がもっと頭良ければなー…なんて。
こんな条件であっても真司と通えるならと条件を受け入れた悠理は凄いと思っている。
それだけ俺のことを想ってくれていると受け取って良いのだろうか。
何度もこの気持ちに気付いて蓋をしてきたか。俺にはまだまだ彼女を守れる力がないと感じるばかりだ。
それにしても……
「おい、悠理。お前お父さんお母さんとの約束破ったことになるけど、いいのかよ」
「よくない。よくないけど、もっとよくない未来が待ってるから、私はそっちに対応する」
「よくない未来ってなんだよ、俺からしたらお前のお母さんとお父さんを怒らす未来しか見えねーけど? それよりもやばいのか?」
「これはそんな低レベルの話じゃないの」
いや、俺からしたら高レベルだけどね??
「まぁ、お前がそう言うんだからそういうもんなんだろうな」
悠理の第六感というか、予知夢的なものは当たるのだ。
俺はこの10年間で嫌というほど感じてきた。
それは悠理も同じだろう。
そんなにも嫌な夢を見たのか。
「んで、その予知夢にどう対処するんだ?」
「わからない。だから、本を読んで探している」
珍しい回答だった。たしかに本を読んで対処法を見つけることはよくあるだろう。それは手段としてだ。おおよその見当をつけた上で本を読むことのが多い。
だが、悠理は対処方法がわからずに、とりあえず本を読んでいるのだ。
いったいどんな本を読んでいるんだ?
ハードカバーではない。
小説のような厚みの本だ。
「異世界転移モノの本を読んでるの」
俺が聞く前に答えてくれた。
って、異世界モノ??今流行りのやつか??
え、なにお前の予知夢って異世界の話なの??
それは流石に違うんじゃないか??
「悠理、流石にそれは…」
「おーい、午後の授業始めるぞー!」
生物の授業の先生が来てしまった。
そっかチャイムが鳴ってたのか。気づかなかった。
俺は席に戻るが相変わらず悠理は生物の教科書やノートを出さずに本を読んでいた。
生物の先生に授業を当てられていたが
もちろん悠理はその場で100点の回答をしていた。
そしてまた本を読む。
それでこそ俺の幼馴染よ。
それにしても異世界転移の本読んで何が分かるんだ??
平々凡々の俺にはさっぱりだった。
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