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七つの天国
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天空城のマスター権限がルシフェルに移譲されたのと同時に変化が訪れた。
なにも存在しない無機質な亜空間に過ぎなかった城の内部が変容していく。
風景が目まぐるしく移り変わっていく。
移り変わる景色こそは、
第一天、ヴィロン。
第二天、ラキア。
第三天、シャハクィム。
第四天、ゼブル。
第五天、マオン。
第六天、マコン。
それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。
各々の天国には守護天使がおかれており、各守護天使たちはルシフェルの支配の下で、天空城に住まう計49万6000から成る天使の大軍団を差配するのである。
◇
アイラリンド天空城の内部で、天国が解放されていく。
光輝溢れる美しい庭園。
天使の聖歌隊が讃美歌を歌い上げる花の園。
かと思えば灼熱の溶岩が煮えたぎる赤い世界へと。
映写機を早回しするかのごとく切り替わり続けていた風景が、ようやく収まる。
「――ふぁ⁉︎ 何処ここ⁉︎」
ルシフェルが辺りを見回す。
「え、えええ……なんじゃこりゃあ……」
気付けばルシフェルは、城内にあるにも関わらず果てなく高い天から陽光がさす、明るい大草原にいた。
地には草の絨毯が敷かれている。
ルシフェルはその世界の中心で、煌びやかな装飾が随所に施された華美な玉座に座っていた。
そこは第七天、アラボト。
かつての第七守護天使であった熾天使ミカエルに代わり、いまは熾天使長ルシフェル自らが支配を担当する天の最高位である。
ルシフェルの脇にはアイラリンドが静かに控えていた。
またルシフェルが座した玉座の前では、守護天使たちが計六名。
膝をつき頭を垂れてじっとしている。
守護天使たちの後方には天上位階論により中位階に分類される天使たる『主天使』『力天使』『能天使』や、下位階に分類される天使たる『権天使』『大天使』『天使』からなる大軍団が整然と列をなしていた。
更にその後ろには天空城の守護獣である、空獣ジズの姿も見える。
◇
アイラリンドがルシフェルにアイコンタクトを送った。
ルシフェルは訳も分からぬまま、取り敢えず頷き返す。
それを了承と受け取ったアイラリンドは、玉座の脇から一歩前に歩み出る。
「守護天使の各々様。どうぞ顔をおあげ下さいませ」
六名の守護天使たちが、一斉に顔を上げた。
その表情は様々だ。
守護天使の中にはどうみても天使に見えない者もいるが、みな一様に喜びを溢れさせていた。
素直に微笑んでいる者もいれば、溢れ出る歓喜を何とか抑えようと厳しい顔で己を律している者もいる。
他にもルシフェルへの謁見がそれ程までに嬉しいのか、滂沱のごとく涙している者までいる有り様だ。
ルシフェルはそんな守護天使たちの様子に気圧される。
なんでこんなことになっているのか。
目まぐるしい状況変化に、頭がついていかない。
ルシフェルがしばらく呆けたままでいると、
「各々に七元徳を司りし、天の護り手。守護天使の皆様方。さぁルシフェル様の御前です。ご挨拶を」
アイラリンドが守護天使たちを促した。
なにも存在しない無機質な亜空間に過ぎなかった城の内部が変容していく。
風景が目まぐるしく移り変わっていく。
移り変わる景色こそは、
第一天、ヴィロン。
第二天、ラキア。
第三天、シャハクィム。
第四天、ゼブル。
第五天、マオン。
第六天、マコン。
それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。
各々の天国には守護天使がおかれており、各守護天使たちはルシフェルの支配の下で、天空城に住まう計49万6000から成る天使の大軍団を差配するのである。
◇
アイラリンド天空城の内部で、天国が解放されていく。
光輝溢れる美しい庭園。
天使の聖歌隊が讃美歌を歌い上げる花の園。
かと思えば灼熱の溶岩が煮えたぎる赤い世界へと。
映写機を早回しするかのごとく切り替わり続けていた風景が、ようやく収まる。
「――ふぁ⁉︎ 何処ここ⁉︎」
ルシフェルが辺りを見回す。
「え、えええ……なんじゃこりゃあ……」
気付けばルシフェルは、城内にあるにも関わらず果てなく高い天から陽光がさす、明るい大草原にいた。
地には草の絨毯が敷かれている。
ルシフェルはその世界の中心で、煌びやかな装飾が随所に施された華美な玉座に座っていた。
そこは第七天、アラボト。
かつての第七守護天使であった熾天使ミカエルに代わり、いまは熾天使長ルシフェル自らが支配を担当する天の最高位である。
ルシフェルの脇にはアイラリンドが静かに控えていた。
またルシフェルが座した玉座の前では、守護天使たちが計六名。
膝をつき頭を垂れてじっとしている。
守護天使たちの後方には天上位階論により中位階に分類される天使たる『主天使』『力天使』『能天使』や、下位階に分類される天使たる『権天使』『大天使』『天使』からなる大軍団が整然と列をなしていた。
更にその後ろには天空城の守護獣である、空獣ジズの姿も見える。
◇
アイラリンドがルシフェルにアイコンタクトを送った。
ルシフェルは訳も分からぬまま、取り敢えず頷き返す。
それを了承と受け取ったアイラリンドは、玉座の脇から一歩前に歩み出る。
「守護天使の各々様。どうぞ顔をおあげ下さいませ」
六名の守護天使たちが、一斉に顔を上げた。
その表情は様々だ。
守護天使の中にはどうみても天使に見えない者もいるが、みな一様に喜びを溢れさせていた。
素直に微笑んでいる者もいれば、溢れ出る歓喜を何とか抑えようと厳しい顔で己を律している者もいる。
他にもルシフェルへの謁見がそれ程までに嬉しいのか、滂沱のごとく涙している者までいる有り様だ。
ルシフェルはそんな守護天使たちの様子に気圧される。
なんでこんなことになっているのか。
目まぐるしい状況変化に、頭がついていかない。
ルシフェルがしばらく呆けたままでいると、
「各々に七元徳を司りし、天の護り手。守護天使の皆様方。さぁルシフェル様の御前です。ご挨拶を」
アイラリンドが守護天使たちを促した。
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