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巨大クジラ vs 巨大怪鳥
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高高度から超スピードで飛来した空獣ジズは、一瞬たりとも迷うことなく二頭目のクジラに突撃した。
両者の巨体がぶつかり合うと、すさまじい音が鳴り響く。
大気が激しく鳴動し衝撃の余波が付近一帯に嵐を巻き起こす。
クジラが苦悶の声をあげた。
クジラは真っ直ぐにすっ飛ぶと、墜落中のルシフェルを追い越して地表に激突する。
もうもうと土煙が舞い上がり、大地震のように地面が揺れる。
衝突した大地にクレーターができあがった。
ジズの全力の体当たり。
その直撃を受けたクジラは脊椎が大きくひしゃげていた。
脇腹が陥没し、口から血反吐と一緒にピンク色した臓物を吐き出している。
わずか一撃で、もはや瀕死のあり様である。
勝負ありだ。
しかしジズの怒りは収まらない。
天の至宝たるルシフェルに、愚かにもジャンピングプレスを喰らわせた痴れ者に対する憤りを抑えることが出来ない。
ジズは「クケェー!」とけたたましく咆哮すると、怒りに身を任せ、ボロ雑巾になって死にかけているクジラに向けて急降下する。
両脚の先端に備えた鋭い鉤爪で、ピクピクと痙攣しているクジラに襲い掛かった。
クジラが悲鳴をあげる。
その悲痛な声は、さながら助命を嘆願するかのようだ。
殺さないで。
殺さないで。
けれども鉤爪は無慈悲に振り下ろされる。
クジラが巨大な肉塊へと変わり、完全に沈黙するまでジズの攻撃は執拗に続いた。
◆
ようやく幾ばくか気の晴れたジズが辺りを見渡すと、一帯には暴風が吹き荒れていた。
所々で竜巻なんかも発生している。
これらは全部ジズが戦った余波である。
ちょっと本気で暴れすぎたかもしれない。
そんなことをジズが考えていると、荒れ狂う嵐の空で、墜落中だったルシフェルが風に翻弄されていた。
その様は舞い散る木の葉のごとし。
「――クェェ⁉︎」
ジズは焦った。
慌ててルシフェルを助けに飛び出す。
途中、進路を妨害してきた一頭目のクジラを思い切り蹴り付けてあっという間に絶命させると、ルシフェルの元へと辿り着く。
おでこ周辺に生えた産毛を毛羽立たせて、嵐の中を舞い踊るルシフェルをふんわりと受け止めた。
◇
朦朧としていたルシフェルの意識が戻る。
まず最初に伝わってきたものは歓喜だった。
ジズから喜びの声が伝わってくる。
嬉しい、嬉しい、嬉しい!
おかえりなさい。
ルシフェル様、おかえりなさい!
言葉にならないジズの感情。
それがダイレクトにルシフェルへと伝わる。
この怪鳥は味方だ。
そうルシフェルに理解させるのに十分な歓喜。
空獣ジズは空飛ぶクジラを更に二回りも大きくしたほどの巨体である。
しかし突如として飛来したこの見知らぬ大怪獣に対して、ルシフェルはこれっぽっちの恐怖も感じなかった。
むしろ懐かしくすら思う。
ルシフェルは何となく嬉しくなって、座ったままジズのおでこを撫でた。
それだけでまた歓喜の感情が爆発する。
周囲が幸福に染まる。
しかし幸せな時間を邪魔するものが現れた。
空の至る場所が歪曲していく。
それは海面を泡立たせる無数の波のように見る間に広がっていき、そこから大量のクジラが姿を現した。
「……な、なにこれ?」
ルシフェルがごくりと生唾を飲む。
一方のジズはルシフェルとの睦み合いを邪魔されて、苛立たしげにクジラを睨む。
そうしている間にも空飛ぶクジラは増え続ける。
百頭、二百頭どころではない。
隙間なく天を埋め尽くすほどのクジラの大群が現れたのであった。
両者の巨体がぶつかり合うと、すさまじい音が鳴り響く。
大気が激しく鳴動し衝撃の余波が付近一帯に嵐を巻き起こす。
クジラが苦悶の声をあげた。
クジラは真っ直ぐにすっ飛ぶと、墜落中のルシフェルを追い越して地表に激突する。
もうもうと土煙が舞い上がり、大地震のように地面が揺れる。
衝突した大地にクレーターができあがった。
ジズの全力の体当たり。
その直撃を受けたクジラは脊椎が大きくひしゃげていた。
脇腹が陥没し、口から血反吐と一緒にピンク色した臓物を吐き出している。
わずか一撃で、もはや瀕死のあり様である。
勝負ありだ。
しかしジズの怒りは収まらない。
天の至宝たるルシフェルに、愚かにもジャンピングプレスを喰らわせた痴れ者に対する憤りを抑えることが出来ない。
ジズは「クケェー!」とけたたましく咆哮すると、怒りに身を任せ、ボロ雑巾になって死にかけているクジラに向けて急降下する。
両脚の先端に備えた鋭い鉤爪で、ピクピクと痙攣しているクジラに襲い掛かった。
クジラが悲鳴をあげる。
その悲痛な声は、さながら助命を嘆願するかのようだ。
殺さないで。
殺さないで。
けれども鉤爪は無慈悲に振り下ろされる。
クジラが巨大な肉塊へと変わり、完全に沈黙するまでジズの攻撃は執拗に続いた。
◆
ようやく幾ばくか気の晴れたジズが辺りを見渡すと、一帯には暴風が吹き荒れていた。
所々で竜巻なんかも発生している。
これらは全部ジズが戦った余波である。
ちょっと本気で暴れすぎたかもしれない。
そんなことをジズが考えていると、荒れ狂う嵐の空で、墜落中だったルシフェルが風に翻弄されていた。
その様は舞い散る木の葉のごとし。
「――クェェ⁉︎」
ジズは焦った。
慌ててルシフェルを助けに飛び出す。
途中、進路を妨害してきた一頭目のクジラを思い切り蹴り付けてあっという間に絶命させると、ルシフェルの元へと辿り着く。
おでこ周辺に生えた産毛を毛羽立たせて、嵐の中を舞い踊るルシフェルをふんわりと受け止めた。
◇
朦朧としていたルシフェルの意識が戻る。
まず最初に伝わってきたものは歓喜だった。
ジズから喜びの声が伝わってくる。
嬉しい、嬉しい、嬉しい!
おかえりなさい。
ルシフェル様、おかえりなさい!
言葉にならないジズの感情。
それがダイレクトにルシフェルへと伝わる。
この怪鳥は味方だ。
そうルシフェルに理解させるのに十分な歓喜。
空獣ジズは空飛ぶクジラを更に二回りも大きくしたほどの巨体である。
しかし突如として飛来したこの見知らぬ大怪獣に対して、ルシフェルはこれっぽっちの恐怖も感じなかった。
むしろ懐かしくすら思う。
ルシフェルは何となく嬉しくなって、座ったままジズのおでこを撫でた。
それだけでまた歓喜の感情が爆発する。
周囲が幸福に染まる。
しかし幸せな時間を邪魔するものが現れた。
空の至る場所が歪曲していく。
それは海面を泡立たせる無数の波のように見る間に広がっていき、そこから大量のクジラが姿を現した。
「……な、なにこれ?」
ルシフェルがごくりと生唾を飲む。
一方のジズはルシフェルとの睦み合いを邪魔されて、苛立たしげにクジラを睨む。
そうしている間にも空飛ぶクジラは増え続ける。
百頭、二百頭どころではない。
隙間なく天を埋め尽くすほどのクジラの大群が現れたのであった。
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