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プロローグ

再会 2

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嬉しさでつい駆け出しかけた私を引っ捕まえて邑紳は跪いた。

「殿下、いらっしゃるとは存じ上げず、遅くなり申し訳ございません。」

「いや、私も前触れを出すのが遅かったようだ。」
家中の人間があわてて準備をしている様子から、唐突な訪問だったのであろう。



「ところで、麗が恋しがっていたようですが、この2ヶ月はお忙しかったようで」
急に棘のある言葉を発した邑紳に、その場にいた大人たちは凍りついた。


しかし、私は殿下と見つめあったまま、いつ話しかけられるんだろうかと、待ちきれなかった。
そんな様子を見てか、「でんか」がふっと笑った。なんとも鮮やかな微笑みに、周囲は相手が12歳の少年であることも忘れて見入ってしまった。



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その後は、司馬家の庭を散策しながら、池の鯉の餌やりの話や季節の花々の話を夢中でぶつけ、「でんか」は否定もせずただうんうんと聞いてくれていた。

「でんかは、普段はどんなことをされているのですか?」
ふとした問いに、急に沈黙が訪れた。

何か気に触ることを言ってしまったかと内心焦っていると唐突に、
「遅くなったが、私の名は玉熾(ぎょくし)というんだ。麗とは良い友人になれそうだ。ぜひ名前で呼んでくれ。」

少し驚いたが、
「わかった、私も玉熾と仲良くなれてとても嬉しい。」と思ったのと同時に口から出てしまった。

近くにいた母に、諌められ反省したが、殿下は一層笑みを見せ、歴史書を読むのが好きで、暇があれば愛馬の世話をしていると教えてくれたのだった。


その時から、仲の良い友人のように、2人でいる時は敬称も敬語もなく話すようになった。



その後、初めてかあさまから、皇室がどういう存在であり身分の差があることお仕えする身である心得を習ったのである。

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玉熾を見送り、自身も自室に戻ると、なぜか寝台に蘭が腰掛けていた。
以前から予告もなく勝手に部屋でくつろいでいることはあったが、なんだか今回は物言いたげな様子で待っていたのだ。



「どうだったの?」
蘭が口を開いた。

「殿下のこと?とても素敵でお優しい方よ。私とも仲の良い友人になってくれるって…」

「はははははっ」

急に蘭が笑い出す。
「なるほどね、お友だちになったんだ。今度わたしも一緒に遊びたいわ。お友だちのお友だちは、やっぱりお友だちになれるものね。」

何が面白かったのか。でも、そんなことはまぁ良い。みんなで仲良くした方がきっと楽しいはずだから、邑紳も誘って今度は何をしようか。
「わかった。邑紳も誘って殿下のおうちに遊びに行けないかかあさまに聞いてみる。」

蘭は、少し驚いたような不思議な顔をして、その後にこっと笑って「お願いね」と言って出て行った。

蘭は邑紳の妹、つまり私とも従姉妹の関係ではあるが、どうにも「妹」というには大人びていて気後れしてしまう。

どうやら、叔母様に付いて任務にも出始めたらしいことも聞いたため、一層心の距離が開いていた。

それもあって、仲良くしてくれると言う申し出は素直に嬉しかったのだ。


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