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プロローグ
再会 1
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冬の寒さが落ち着き、虫たちも活発に活動を始めた今日この頃。
昼餉の前の持久訓練を1番乗りで終えた私は、少し奥まったところにある母屋の屋根の上で、微風に涼みながらぼうっと考えに耽っていた。
今は同じ訓練生の仲間たちと離れてひとりになりたかったのだ。
皆が「でんか」と呼ぶあの少年から、夫婦になろうという申し出があったのが2ヶ月も前のこと。
また会えるのを今か今かと待ち望んでいたのに、どの大人に聞いても気まずそうに話を逸らされるだけ。
忙しい方なんだと皆は言うけれど、私だって日々の訓練で忙しいけれど、たまの遠方任務について行った時は親戚に会いに行けたりもするのに。
不満な気持ちで、そんなことを考えてはため息をつく。
「つまんないの。」とひとりごつ。
「おい、昼餉できたみたいだぞ」
「!?」
唐突に下方から声がかかり、驚いて覗き込む。
3つ年上の従兄弟が少し呆れたような顔で屋根の下に突っ立っている。
彼の名は、邑紳(ゆうしん)。
父の弟の子供で、嫡男ではないが順列で言えば次期当主と目されている男の子。
兄弟がいない私にとってはほとんど兄のような存在で何かと世話を焼いてくれる。
「はーい、今行くから!」
すたっと慣れた動作で下方へ飛び降りる。
司馬家は物心ついた時からほぼ全員の男子が厳しい身体訓練を受けて育つ。
さらに、次期当主の継承権が高い女子も同じく日々鍛錬をさせられるのである。
それと同時に、城下を歩く時の「普通の」子女の立ち居振る舞いも身につける。
「昼間にあんまり高いところに登るなって言われてるだろ。道行く人に見られるかも知れないんだから。」
「はーい」
いつものお小言が始まったと思ったら、唐突に静かな声色で尋ねられる。
「何か悩みでもあるのか?つまらないって聞こえちゃったんだけどさ、、この間の顔合わせ、上手くいかなかったのか?」
真実ではないが、なかなか嫌なところを突かれた。
少し拗ねた気持ちになりかけたが、考えてみれば3つも上の邑紳なら疑問に答えてくれるかも知れない。
「"でんか"は私と結婚しても良いって言っていたみたい。でも、しばらくお呼ばれしてないんだよね。かあさま達に聞いても忙しいってことしか教えてくれないし。」
「…そうか。麗は殿下を気に入ったの?結婚が嫌で悩んでる訳ではないの?」
「私はあの子とってもきれいだと思った!でも、なんだか皆と話す時のとうさまみたいに少し怖い感じもあって。でももっとお話して仲良くなれたらいいなーって」
「珠臾様にもお考えがあるのかもな。お前もまだ10歳だし、もう少し大きくなってからあってもいいんじゃないか。結婚するのはしばらく先だぞ。」
「そうかも知れないけど、会うの楽しみだったのになー」
話をしている内に居間にたどり着いた。
なんだかいつもより騒がしい空気を感じる。
もしかしたら、屋根に登っていたことや訓練を抜け出したことがばれてとうさまが叱りに来ているのかも。
そんな想像をしてびくびくと部屋に入ると、見慣れぬ人物に驚いた。
あの「でんか」が卓についていたのだ。
昼餉の前の持久訓練を1番乗りで終えた私は、少し奥まったところにある母屋の屋根の上で、微風に涼みながらぼうっと考えに耽っていた。
今は同じ訓練生の仲間たちと離れてひとりになりたかったのだ。
皆が「でんか」と呼ぶあの少年から、夫婦になろうという申し出があったのが2ヶ月も前のこと。
また会えるのを今か今かと待ち望んでいたのに、どの大人に聞いても気まずそうに話を逸らされるだけ。
忙しい方なんだと皆は言うけれど、私だって日々の訓練で忙しいけれど、たまの遠方任務について行った時は親戚に会いに行けたりもするのに。
不満な気持ちで、そんなことを考えてはため息をつく。
「つまんないの。」とひとりごつ。
「おい、昼餉できたみたいだぞ」
「!?」
唐突に下方から声がかかり、驚いて覗き込む。
3つ年上の従兄弟が少し呆れたような顔で屋根の下に突っ立っている。
彼の名は、邑紳(ゆうしん)。
父の弟の子供で、嫡男ではないが順列で言えば次期当主と目されている男の子。
兄弟がいない私にとってはほとんど兄のような存在で何かと世話を焼いてくれる。
「はーい、今行くから!」
すたっと慣れた動作で下方へ飛び降りる。
司馬家は物心ついた時からほぼ全員の男子が厳しい身体訓練を受けて育つ。
さらに、次期当主の継承権が高い女子も同じく日々鍛錬をさせられるのである。
それと同時に、城下を歩く時の「普通の」子女の立ち居振る舞いも身につける。
「昼間にあんまり高いところに登るなって言われてるだろ。道行く人に見られるかも知れないんだから。」
「はーい」
いつものお小言が始まったと思ったら、唐突に静かな声色で尋ねられる。
「何か悩みでもあるのか?つまらないって聞こえちゃったんだけどさ、、この間の顔合わせ、上手くいかなかったのか?」
真実ではないが、なかなか嫌なところを突かれた。
少し拗ねた気持ちになりかけたが、考えてみれば3つも上の邑紳なら疑問に答えてくれるかも知れない。
「"でんか"は私と結婚しても良いって言っていたみたい。でも、しばらくお呼ばれしてないんだよね。かあさま達に聞いても忙しいってことしか教えてくれないし。」
「…そうか。麗は殿下を気に入ったの?結婚が嫌で悩んでる訳ではないの?」
「私はあの子とってもきれいだと思った!でも、なんだか皆と話す時のとうさまみたいに少し怖い感じもあって。でももっとお話して仲良くなれたらいいなーって」
「珠臾様にもお考えがあるのかもな。お前もまだ10歳だし、もう少し大きくなってからあってもいいんじゃないか。結婚するのはしばらく先だぞ。」
「そうかも知れないけど、会うの楽しみだったのになー」
話をしている内に居間にたどり着いた。
なんだかいつもより騒がしい空気を感じる。
もしかしたら、屋根に登っていたことや訓練を抜け出したことがばれてとうさまが叱りに来ているのかも。
そんな想像をしてびくびくと部屋に入ると、見慣れぬ人物に驚いた。
あの「でんか」が卓についていたのだ。
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