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第一章 夢見る少女、幻滅する
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それは、剣と魔法のとある世界。中央国といわれるグランディールへと向かうため、広大な平原を歩く華奢な少女がいた。
年齢は十四、五ほどだろうか。延々と続く綺羅びやかな海を彷彿とさせる一点の曇りもない碧眼と、透き通るばかりに美しい純白のロングハーフアップ。激しくしぶきを上げる渓流のように冴えた素肌は見るほどきめ細かで、その肉体美は目を見張るほど濃艶。幼い身でありながらも、気高く上品で優雅な佇まい。そして、ただの少女には発揮できない婀娜すらも帯びており、思わずその小さな胴に腕を絡めて奪ってしまいたいほどに尊い。
服装は黒のチューブトップ、上から羽織る白のロングコート。そしてデニムのショートパンツ。全体的に肌の露出が多く、溢れんばかりに輝く雪肌が惜しまなく発揮されているが、寒露の節に入った今では明らかに軽装だった。まるで媚を含んだように扇情的な衣装だが、そんな姿でも清楚には変わりなく、非凡で美しい少女だ。
「ったく……中央国ってのは普通、馬車とかで行くもんだろ。なんで足だけ頼ってかれこれ数ヶ月、サバイバル生活という名の苦行をしながら向かわなきゃいけないんだっ!」
見た目とは裏腹に、少女はがさつで品性の欠けた男のような口調。聞いたところ、少女はその小さな体を頼りにして、数ヶ月間のサバイバル生活を過ごしてきたらしい。
《まあ、マスターは何かと不幸ですし。ふっ……》
「何笑ってんだ、お前」
《我がマスター、ツルカ=ハーランは何も目的がございません。さらには冒険者として過ごすという志もございません。クソみたいにニート生活をしたいとご希望ならば、世界の中心とも言われるグランディール国で過ごした方が色々と都合が良いと思ったので》
「そうだけど……遠すぎるよ────ってか、さらっと悪口吐いたよな」
かたい表情を浮かべる少女──ツルカ=ハーランは姿も見えない何かと会話していた。
「まあまあ、アイナさん。とりあえず、だいたい三ヶ月? ホント辛かったけど今日で旅も終わるわけだし、とっとと忘れて自堕落な生活を送るぞっ!」
《それはどうかと思いますって遠回しに言ってますよね? 耳、遠いんですか?》
ツルカはへらへらと笑って、謎の声──アイナの文句を黙殺する。どうやらツルカの能力らしく、アイナとは脳内で話しているようだ。
アイナは姿こそ見えないが女性の声だった。まるで感情が欠落してしまっている単調な発声で、不思議と冷酷さと恐怖を感じる。
《せめて……女らしい過ごし方をしませんか? やっぱり駄目ですよ、ニート生活は》
アイナはさもツルカに失望しているように、ぼそっと呟く。
見る者を魅了するであろう見目麗しいツルカのような女性が、ベッドに一日張り付いたまま好きなことをして終える自堕落な生活を送るなど、微塵も想像できない。
しかし、それも何かと煩わしい理由があるようだった。
年齢は十四、五ほどだろうか。延々と続く綺羅びやかな海を彷彿とさせる一点の曇りもない碧眼と、透き通るばかりに美しい純白のロングハーフアップ。激しくしぶきを上げる渓流のように冴えた素肌は見るほどきめ細かで、その肉体美は目を見張るほど濃艶。幼い身でありながらも、気高く上品で優雅な佇まい。そして、ただの少女には発揮できない婀娜すらも帯びており、思わずその小さな胴に腕を絡めて奪ってしまいたいほどに尊い。
服装は黒のチューブトップ、上から羽織る白のロングコート。そしてデニムのショートパンツ。全体的に肌の露出が多く、溢れんばかりに輝く雪肌が惜しまなく発揮されているが、寒露の節に入った今では明らかに軽装だった。まるで媚を含んだように扇情的な衣装だが、そんな姿でも清楚には変わりなく、非凡で美しい少女だ。
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見た目とは裏腹に、少女はがさつで品性の欠けた男のような口調。聞いたところ、少女はその小さな体を頼りにして、数ヶ月間のサバイバル生活を過ごしてきたらしい。
《まあ、マスターは何かと不幸ですし。ふっ……》
「何笑ってんだ、お前」
《我がマスター、ツルカ=ハーランは何も目的がございません。さらには冒険者として過ごすという志もございません。クソみたいにニート生活をしたいとご希望ならば、世界の中心とも言われるグランディール国で過ごした方が色々と都合が良いと思ったので》
「そうだけど……遠すぎるよ────ってか、さらっと悪口吐いたよな」
かたい表情を浮かべる少女──ツルカ=ハーランは姿も見えない何かと会話していた。
「まあまあ、アイナさん。とりあえず、だいたい三ヶ月? ホント辛かったけど今日で旅も終わるわけだし、とっとと忘れて自堕落な生活を送るぞっ!」
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