かくも素晴らしき運命

湖月もか

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それは偶然か必然か

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『運命の人はいるのよ。出逢えば貴女も分かるわ。まるで目の前に星が瞬いたように世界が輝いて見えるから』

 お母様は頬を染めてうっとりと語った。
 ……父との出逢いから馴れ初めまでそのまま二時間ほど、情熱的に脚色しながら。

 だからこそ私は幼いながらにも、世界が輝いて見えるような愛で溢れる素敵な出逢いがあるものだと心躍らせていた。

 それだけたった一人の人物に夢中になり、熱を注ぎ込めるほどに愛することの出来る運命に出逢えたという両親を心底羨ましく思った。

 それは十六歳になった今でも“運命の出逢い”に憧れを抱いている程に。


 しかし、誰が想像できようか。

 憧れ恋い慕うように甘い想像を走らせるほどに強く望んだ出逢い。
 その運命の出逢いをはたした相手が

 ──まさかだなんて。






 鈍い痛みを訴える後頭部に、思わず見開いた視界は光が飛んで見える。

 ……もしやお母様が語った“星が瞬いたよう”とはこのチラつく視界のことなのでは。

 思わず過ぎったロマンチックの欠片もない思考を振りほどくように、強く瞳を閉じる。しかし周囲の音をかき消す程に頭の中で響く音は暗闇であるはずの視界すら輝くよう。

 奥歯をかみ締めながら深呼吸を繰り返し幾分かは頭痛が楽になり瞳をゆっくりと開く。

 だがここは夜会会場。
 当然照明をふんだんに使い、着飾った令嬢達の宝石に反射している。通常ならうっとりするほど美しいその輝きは、今の私にとってはまるで凶器のように感じた。

 そんな未だにチラついている視界の中、こちらを心配そうに伺う空色の瞳。そしてふわりと揺れた白銀の柔らかく緩やかなウェーブがかかった髪。
 はっきりと見えるその髪と瞳の持ち主は必死に何かを叫び、上から私を覗き込んでいる。
 あたりの照明も相まってさらに輝く視界で後ろの野次馬などは目に入らないほどに、見惚れてしまう。

 多分これが運命なのだ。
 何故か直感……いや、どこか本能的にそう感じた。

 しかしそれが男性だったら素敵な出逢いだと喜べるが……残念ながら相手はどう見てもである。

 かく言う私も兄を装っているので人のことは言えまい。

 しかしその落胆を悟られぬように、痛みの落ち着いてきた身体を起こす。結局息の詰まるような痛みに立ち上がることは出来ずに上半身を起こしただけで終わってしまう。

「大丈夫ですか!?」

 彼女から声をかけられるが、出そうとした声は呻きへと変わる。

 ズキズキと痛む頭で考えすぎたのか、はたまた打ちどころが良くなかったのか。それとも無理して起き上がろうとしたからなのかは定かではない。

 起こしたはずの身体を自身の力で支え切る事が出来ず、またそのまま後ろへと倒れる。

 ──そして、頭の中まで響くような二度目の衝撃と共に意識がとんだ。
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